前回(「債券運用はこれからもローリスクと言えるのか?(その1)」)に続き、「債券運用はこれからもローリスクと言えるのか?」について論じてみたい。

結論を先に述べると、筆者は「NO!」と考える。さらに付け加えるなら、バランス型投資信託で債券運用部分の比率が半分を超えるようなものは「よほど特別な理由がない限りは保有している意味がなくなる」恐れがある。金融機関や運用会社に寄付をしたいと思うのならば話は別だが、債券運用は少なくともこれまでのようにローリスクとは言えなくなる可能性が高い。

ちなみに、米10年国債の利回りは2021年10月末時点で1.550%である。読者の中には「定期預金に比べれば、よほど利率が高い」と魅力を感じる人もいるかもしれない。だが、当然のことながら米国債は米ドル建てなので、為替リスクを負うことになる。また、米ドル建て資産を購入しようとすれば、通常は為替手数料が発生する。少なくとも、為替リスクと為替手数料(コスト)は意識しておくべきだろう。

この先も金利差が拡大しない保証はどこにもない

債券,投資信託
(画像=metamorworks / pixta, ZUU online)

「為替リスクはフルヘッジしてしまえばなくなるだろう」と思われる人もいるかもしれない。だが、ヘッジする場合も当然コストがかかる。通常は日本円と米ドルの金利差がコストになる。そもそも予約為替の決定方式が金利差で計算されるからだ。つまり、米国債の利回りから日本国債の利回りを差し引いて考える必要がある。

もちろん、上記のヘッジコスト(金利差)を回避する方法もある。たとえば1カ月毎にレートをとって先物予約のロールを繰り返すという方法だ。現時点で期間が1カ月程度の為替先物予約ならば日米の金利差はほとんどないに等しいので、ヘッジコストについて考える必要はなくなる。だが、この先も金利差が拡大しないという保証はどこにもない。

米国債金利「35年間の下降トレンド」が終焉を迎える?

仮に米10年国債の利回りを丸々享受できたとしても、一般にバランス型ファンドやファンドラップなどの信託報酬は高いので、下手をすれば「信託報酬さえも賄いきれなくなる」恐れもある。たとえば、人気の高いバランス型投資信託の1つに、アセットマネジメントOneの「投資のソムリエ」がある。「投資のソムリエ」の純資産は約6,300億円、信託報酬は年率1.540%(税抜1.400%)で、10月末時点の米10年国債の利回り(1.550%)と0.010%しか違わない。100万円に対して計算するとわずか100円。つまり、為替リスクをコストゼロで完全に排除できたとしても、100万円の投資に対して1年後に得られるリターンは100円という計算になる。

最新の同ファンドのマンスリーレポートによれば、直近のアセット・アロケーションは安定資産に54.7%(内訳:国内債券8.0%、為替ヘッジ先進国債券46.7%)、現金等に23.5%の合計78.2%が振り分けられており、残りの21.8%がリスク資産となっている。国内債券の8.0%は国債には限定していないがマザーファンドの運用報告書を見る限り、国債に83%、地方債に6%と、おおよそ9割は公共債に投資をしているので、当然そのアロケーション分のリターンは国債に準ずることになる。為替ヘッジ先進国債券については実は過去5年間の運用成績は2勝3敗だ。安定資産運用としながらも、実はリターンがマイナスになっている年が3回ある。それはなぜかと言えば、ご想像の通り、金利が上昇局面にあったからだ。従って、過去5年間のこのアセットクラスからのリターンを通算すると平均約1%になる。信託報酬の1.540%を差し引くと、リターンはマイナスということだ。

2020年1月に新型コロナウイルスの感染拡大が伝えられるまで、世界景気の状態は今と同じように回復期待から「FRB(米連邦準備制度理事会)が金融緩和姿勢を正常化させて利上げに動くのではないか」と言われていた。正確に言えば、米10年国債の利回りは2016年7月に1.37%までいったん低下した後、2018年11月に3.24%まで上昇している。その後、再度景気の失速懸念等により金利は低下、2020年からは新型コロナウイルスの感染拡大で「異次元緩和」が続いたという流れだ。そして、この先に描ける金利の見通しは、少なくとも低下する絵は描きにくいように見受けられる。

ここでもう一度、前回紹介した米国債金利(黒=1年国債、赤=10年国債)の長期トレンドを確認してみよう。