最近、「半導体が足りない」という言葉をよく聞くようになった。半導体は今日の生活に必要なありとあらゆるものに使われており、「産業のコメ」とも呼ばれる。
半導体とは何か。なぜ不足していて、それが私たち消費者にどのように影響するのか。今回は、それらについて見ていこう。
産業のコメと言われる「半導体」はなぜ不足しているのか ?
「半導体」とは、電気を良く通す金属などの「導体」と、電気をほとんど通さないゴムなどの「絶縁体」の中間の性質を持つ、シリコンなどの物質や材料のことだ。また、半導体を用いたトランジスタや集積回路も半導体と呼ばれる。
エアコンや炊飯器、パソコン、携帯電話、スマートフォン、デジタルカメラ、テレビ、洗濯機、冷蔵庫、電子レンジ、LED電球、銀行のATM、ICカード、クルマなど、半導体は生活に必要なありとあらゆるものに活用されている。そのため半導体は「産業の中枢を担うもの」という意味で、「産業のコメ」と呼ばれることもある。
なぜ最近、半導体が足りないと言われるようになったのだろうか。最大の理由は、新型コロナウイルスによる巣ごもり需要の拡大で、スマートフォンやパソコンなどのIT製品の需要が急激に高まったことだろう。IT製品には半導体が不可欠だが、急激な需要拡大に供給が追いついていないのだ。
世界の半導体業界における主要プレイヤー
ここからは、世界の半導体業界における主要プレイヤーについて見ていこう。
●TSMC
1987年に設立されたTSMCは、台湾に本拠地を置き、2019年末時点で従業員数5万人を超える半導体製造ファウンドリだ。ファウンドリとは、半導体製造を専門に行うビジネスモデルやその会社のことで、TSMCは自社ブランドでの半導体の設計や製造、販売を一切行わない。
半導体の製造には多額のコストがかかるため、業界では半導体製造に関わる工場を自社で持たないファブレス経営が広がっている。TSMCは半導体製造ファウンドリとして、各メーカーの半導体製造を請け負っているわけだ。
●インテル
1968年の設立以来、その卓越した技術によりテクノロジー産業を牽引している米国のIT企業。世界最大級の半導体メーカーであり、インテルのシリコン・ソフトウェア技術は、AIや5Gなど今後業界の主力となる技術において中核的な役割を担っている。
「シリコンバレー」の名前の由来となったシリコン (半導体) をその地で開花させた企業としても有名だ。
●エヌビディア
エヌビディアは1993年に設立された米国の半導体メーカーだ。1999年、3Dグラフィックスを描画する際に必要な計算処理を行う半導体チップである「GPU (Graphics Processing Unit) 」を開発した。
当初GPUはテレビゲームに応用されていたが、やがてAIの処理に適していることがわかり、近年エヌビディアは半導体業界で急速に存在感を強めている。今後、自動運転をはじめとするさまざまな分野でAI技術がますます広がっていくはずだ。
そのため、株式市場においてエヌビディアの評価は急速に高まっており、株価は過去5年間で約15倍になった。これまではTSMC、インテル、サムスンが「半導体ビッグ3」と呼ばれていたが、2021年6月現在、エヌビディアの時価総額はインテルを抜き、サムスンと同水準になっている。
私たち消費者にはどのような影響がある ?
半導体不足は、私たち消費者にどのような影響を与えるのだろうか。前述のとおり、今日のハイテク製品において半導体はなくてはならないものであり、半導体不足は価格上昇や出荷遅れ (在庫不足) をもたらす。その具体的な例を見ていこう。
「クルマは走る半導体」と呼ばれていが、その言葉どおり、自動車産業は半導体不足の影響をもろに受けやすい。2021年5月18日、トヨタ自動車は半導体不足により2021年6月の国内2工場の生産を一時停止すると発表した。自動車メーカーの生産減少は在庫不足を起こし、自動車価格の上昇につながっている。
また、大手通信キャリアのスマートフォン在庫一覧ページを見ると、「在庫なし」という表記が目立つ。スマートフォンがまったく買えないわけではないが、困る消費者もいるだろう。
ソニーの人気ゲーム機「プレイステーション5」は2020年11月12日に発売を開始したが、2021年6月現在も品薄状態が続き、抽選に当たらないと購入できない状態である。半導体不足で、思うように製造できないためだ。
グレートサイクル (強力な需要拡大期) に入った ?
ここまで半導体とは何か、なぜ不足しているのか、私たち消費者にどのような影響を与えるか、などを見てきた。もともとAIやIoT、5Gの進展から、半導体の需要は高かった。
加えて、コロナが半ば強制的に非接触社会をもたらしたことによって、半導体業界はグレートサイクル (強力な需要拡大期) に入ったという指摘もある。今後も、半導体業界の動向および半導体関連企業の業績に注目したい。
(提供:大和ネクスト銀行)
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