結果の概要:失業率の低下、賃金の上昇が継続

英国雇用関連統計
(画像=PIXTA)

11月16日、英国国家統計局(ONS)は雇用関連統計を公表し、結果は以下の通りとなった。

【10月】
・失業保険申請件数1は前月(207.80万件)から1.49万件減の206.31万件となった(図表1)。
・申請件数の雇用者数に対する割合は5.1%となり、前月(同5.2%)から低下した。

【9月(7-9月の3か月平均)】
・失業率は4.3%で前月(4.5%)から低下、市場予想1(4.4%)を下回った(図表1)。
・就業者は3252.3万人で3か月前の3227.6万人から24.7万人の増加となった。
増減数は前月(23.5万人)から増加、市場予想(+19.0万人)も上回った。
・週平均賃金は、前年同期比5.8%で前月(7.2%)から減速したものの、市場予想(5.6%)は上回った(図表2)。

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(画像=ニッセイ基礎研究所)

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1 求職者手当(JSA:Jobseeker's Allowance)、国民保険給付(National Insurance credits)を受けている者に加えて、主に失業理由でユニバーサルクレジット(UC)を受給している者の推計数の合算。なお、UCはJSAより幅広い求職手当てであり、失業者数を示す統計としては過大評価している可能性がある。このため、ONSは失業保険等申請件数について公式統計とはしておらず実験統計という位置付けで公表している。ただし、公表日の前月のデータを入手できるため、速報性の高さという利点がある。
2 bloomberg集計の中央値。以下の予想値も同様。

結果の詳細:求人数は最高記録の更新が続き、賃金も高い伸び率が継続

まず、失業保険申請件数と同じく10月のデータとして公表されている求人数および給与所得者数を確認すると、求人数は21年8-10月の平均で117.2万件となり4か月連続で調査開始後の最高記録を更新、10月単月では129.8万件に達しており、労働需要は引き続き強い(図表3)。

給与所得者データ3では、10月の給与所得者が2928.4万人となり9月から16.0万人増えた(図表4)。20年12月以来11か月連続の増加(累計119.2万人)となり、コロナ禍直前のピーク(20年2月)を23.5万人上回っている。産業別に見ると、9月は8月に続いて居住・飲食や事務サービス業の増加が顕著だった。月あたり給与額(中央値)については前年同月比4.9%で9月(5.8%)からは減速したが、引き続き高めの伸び率を維持している(図表4・5)。

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(画像=ニッセイ基礎研究所)

次に9月までのデータでは、7-9月期の失業率が4.3%まで低下した(前掲図表1)。前月比で、5か月連続で就業者の増加、および、失業者と非労働力人口の減少が継続している。ただし、労働参加率で見ると63.4%でコロナ禍前のピーク(19年12月-20年2月:64.4%)までは依然として距離がある。労働時間は31.6時間(前年同期差+3.2時間)、フルタイム労働者で36.0時間(同+2.9時間)となり、こちらもコロナ禍前の水準には届かないが、増加傾向が続いている(前掲図表2)。

7-9月の平均賃金は前年同期比5.8%(実質は3.1%)とベース効果の剥落に伴い減速傾向にあるものの、高めの伸び率が続き、コロナ禍前と比較できる2年前比では7.3%(実質は3.8%)と7%を超え、ONSは低所得雇用者の減少による構成効果は減少している指摘しているものの、コロナ禍以降は高めの伸び率が維持されている(図表5)。また、給与所得者データでは伸び率の加速も見られる(図表5)。

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(画像=ニッセイ基礎研究所)

最後に週次データを確認すると(図表6)、9月は休業者および失業者がやや低下した。統計上の休業者数はすでにコロナ禍前の水準(約250万人)だが、他方、政府の雇用維持政策は9月まで実施されており、HRMCは9月末時点で114万人が同制度を申請していた(暫定値)と集計している。そのため、今後、雇用維持政策が終了する10月以降にどのような動きがあるか注目される。

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3 歳入関税庁(HRMC)の源泉徴収情報を利用した統計。直近データは利用可能な情報の85%ほどを集計して算出。


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高山武士(たかやま たけし)
ニッセイ基礎研究所 経済研究部 准主任研究員

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