要旨
- 民間企業の2021年冬のボーナス支給額を前年比+0.7%(38.3万円)と予想する(毎月勤労統計ベース)。冬のボーナスとしては3年ぶりの増加となるだろう。
- 背景にあるのが企業業績の改善である。20年度下期の経常利益は前年比+6.8%と、20年度上期の大幅な落ち込みから持ち直したことに加え、21年度上期は前年比+43.5%と、前年の急減からの反動もあって増益幅が大きく拡大する計画となっている(日銀短観ベース)。ボーナスは業績に連動する傾向が強いため、冬のボーナスも増加に転じる可能性が高い。特に、好調な輸出を背景に業績が改善している製造業での伸びが期待される。一方、コロナ禍からの戻りが鈍い非製造業については伸び悩むだろう。
- 昨年冬のボーナスは前年比▲2.6%と減少していた。ただし昨年は、厳しい経済状況を受けてボーナスの支給を見送る企業が大きく増加したことから、ボーナスの支給がない労働者も含めた平均では前年比▲6.1%とさらに落ち込んでいた。一方、今冬のボーナスでは、業績の持ち直しを受けてボーナスの支給を再開する企業が増加することが予想される。前述のとおり、冬のボーナス支給額を前年比+0.7%(ボーナス支給がある労働者平均)と予想するが、ボーナスの支給がない労働者も含めた平均では前年比+1.9%と、伸びがさらに高まる形になるだろう。
- 今冬のボーナスは増加が見込まれるものの、あくまで昨年の大幅な落ち込みからの反動の域を出ず、昨年の落ち込み分を取り戻すには至らない。コロナ前である19年よりも水準は低いままであり、ボーナスの回復は依然道半ばといえる。(提供:第一生命経済研究所)
第一生命経済研究所 調査研究本部 経済調査部長・主席エコノミスト 新家 義貴