投資家にとって成長株(グロース株)は魅力的です。成長株を見わける方法は最も知りたい情報ではないでしょうか。とはいえ、安定して成長している銘柄の株価は高く、投資効率を考えると躊躇してしまうかもしれません。
一方、「成長株でありながら割安株(バリュー株)」の銘柄を見つけられれば、高い運用率を出すことも可能です。この記事では具体的なイメージの湧きづらい「成長株かつ割安株」の見極め方、成長株の条件などについて解説します。
目次
1.株式投資で狙いたい「成長株(グロース株)」とは
最初に、「成長株」の定義について説明します。
1-1.成長株(グロース株)とは
成長株、あるいはグロース株と呼ばれる銘柄は、一般的には「年々着実に売上高や利益を伸ばしている、なおかつ今後もさらなる成長が期待できる企業の株式」を指します。投資家から高く評価され、株価も当然高値をつけていることが多くなっていますが、中には企業価値に見合わない割安な銘柄もあります。これについては、後ほど詳しく説明します。
1-2.企業が成長するための条件とは?
「成長株」と呼ばれる銘柄は、企業が安定的に成長を続けていることが前提です。企業が成長し続けるための条件に絶対はありませんが、たとえば以下を満たす企業は経営において優位性を発揮しやすい環境にあると考えられます。
・成長市場である
・その企業が市場に占めている割合が高い
・その市場への、他企業による新規参入が難しい
ただし、成長株は単に成長中の企業というわけではありません。
1-3.成長株では「投資家に期待を抱かせる力」も重要
「成長株」と呼ばれる銘柄は、企業の成長に伴って“株価”も成長を続けています。なぜ株価が上がり続けるのかというと、投資家が「今後の成長」に期待をしているからにほかなりません。
つまり、株価は平たくいえば「期待値」とも考えられます。仮に現状赤字であっても、将来的に回収でき黒字化できるという「見込み」があれば投資家は投資します。世の中の投資家から、その企業にどの程度の「期待感」を抱かれているのかが株価を左右するのです。
投資家から今後も成長すると評価されるために重要なのは「成長できるストーリーがあるかどうか」です。たとえば、以下のような条件です。
・ひとつの(儲かっている、主力の)事業だけではなく多角的に事業展開を行い、利益を得る方策を整えているか
・具体性のある経営計画が描けているか
・社会のニーズに応えられ、なおかつ他社にはない強い個性や独自の技術を持っているか
投資家はこうした情報から企業の成長性を判断し、その将来に投資をしているのです。
2. 企業価値と株価にギャップ。「割安株(バリュー株)」とは
冒頭でも示したとおり、成長株は高値であることが少なくありません。そのため安定して実績を出している有名企業の株などは、たとえ成長株であっても手が出しづらいものです。
そこで押さえておきたいのが、成長株投資と並んで株式投資のポピュラーな手法とされる「割安株投資」です。
2-1 割安株(バリュー株)とは
割安株、あるいはバリュー株とは、業績もよく安定していて企業価値も高いにもかかわらず、投資家に十分に評価がされていない株を指します。つまり、有望企業であるのに、株価が低いままの状態で放置されている銘柄です。
割安株は株価が安いため、投資初心者でも買いやすいといえます。また、投資家から注目を集めていないことから、値動きも比較的安定しているという利点もあります。よほど大きな不祥事を起こしたり、社会情勢による不可抗力のダメージを受けたりしない限りは、大きく値崩れするリスクは低いと考えられます。
また、企業自体の業績がよく、安定性が高いということは、きっかけさえあればある日突然株価が大きく上昇する可能性もあるということです。長期保有を視野に配当などの“インカムゲイン”を得ながら、株価が上がったタイミングで売却して“キャピタルゲイン”を狙うといった方法も考えられます。
2-2 割安株と成長株の違い
成長株、割安株の考え方がわかったところで、ここまでの内容を振り返ってみましょう。
成長株は多少割高でも、これからの成長に期待できる銘柄であるのに対し、割安株は企業価値を考えると割安で長期的な視点で成長を待つ銘柄でした。
成長株と割安株のどちらに投資すべきかは投資スタイルによって意見がわかれるところですが、成長性が高く、かつ割安であるような銘柄を探し、見つけるにはどうすればよいのでしょうか。
3.「成長株であり割安株」というお得な銘柄を狙う方法
成長株であり割安株でもある銘柄を購入できる狙い目のタイミングはあるのでしょうか。絶対的な方法はありませんが、2つの考え方を紹介しましょう。
3-1. 成長株の値下がりのタイミングを狙う
ひとつの考え方としては、長年成長を続けていた企業の株が、ある要因で一時的に値下がりし、底値だと思えるタイミングを狙って購入する方法です。
ただし、あくまで値下がりした要因が一過性のものだと判断できるかが重要です。こうした投資判断に正解はありませんが、次のようなポイントをチェックすることで失敗のリスクを抑えることができるでしょう。
・売り上げが毎年順調に伸びているか(成長性があるか)
・自己資本比率が高いか(借金の比率が少ないか)
・自己資本利益率(ROE)が高いか(収益性が高いか ※10~20%程度目安)
値下がりしても、ここから反発して株価上昇していく“成長株”だと期待できる理由、つまり成長できるストーリーがあることが重要です。
一方で、株価が割安であるかを加味する必要もあります。一般に、“割安”という判断するには次のような指標を確認する必要があります。
・PBR(株価純資産倍率)
・PER(株価収益率)
PBRは、株価を1株当たり純資産(BPS)で割って求められる指標で、1株当たりの純資産に対し株価が何倍になっているかを示しています。理論上は、企業が解散した際に、株主に1株当たりいくらの純資産(解散価値)が分配されるかという意味も持っています。PBRは、1倍が基準と考えられ、1倍を超えると割高、1倍未満であると割安といわれます。
PERは、株価を1株当たり利益(EPS)で割って求められる指標で、1株当たりの利益に対し株価が何倍になっているかを示しています。PERは低いほうが割安とされ、15倍以下が目安といわれています。
3-2. 老舗企業がコロナ禍を機に株価高騰する
もう1つは、狙うことは難しいかもしれませんが、割安株に投資し、何らかのトリガーをきっかけに成長株への転換を期待するケースです。
たとえば、家電製品等の製造・販売を手がけ、長年にわたり生活家電、健康器具や理容・美容器具などを製造、販売する国内でも有数の老舗家電メーカーのケースを紹介しましょう。
手がける製品の質は高く企業の実績もあるものの、株価は比較的買いやすい価格で安定して推移していました。それが高騰したのがコロナ禍の2020年です。
株価は2020年初めまでの10年間は概ね400円前後で底堅く動いていましたが、2020年6月には2,000円を超えるなど「火柱が上がった(=株価が急騰)」状態になりました。
この高騰の要因は、当時は新型コロナウイルス感染拡大による特需と見られています。各国がワクチンの開発を急ピッチで進めているなか、ワクチン保管に有用な先進技術を持っていたのです。
投資家はいち早く、同メーカーの技術の需要が高まるだろうと予測し、買い注文を集めたことが株価高騰の引き金となったと考えられています。2020年夏にはストップ高水準である前日比400円高を付け、上場以来となる高値も更新しました。
仮に数年前に1株400円で購入して保有していた株を、最高値の約2,400円で売却できたとしたら、約6倍です。このように、優良な老舗企業の割安株が、ひとつのトリガーで爆発的な値動きをすることがあります。チャンスを逃さずに売却すれば多大な利益を得ることができます。
新型コロナウイルスがもたらした新しい生活様式により、売り上げを大きく下げた企業もあれば、逆にこのケースのように大きく株価を上げた企業も少なくありません。
ただし、コロナ特需だけが要因の場合は、コロナ禍が落ち着くことで株価が下がることも考えられます。今後の成長ストーリーを注意深く分析する必要があるでしょう。
4.割安成長株に投資するリスク
本稿では割安成長株を狙う方法として、成長株が一時的に値下がりし割安になったタイミングで購入する方法、そして成長株への転換が期待できる割安株へ投資する方法の2つを紹介しました。
ですが、割安成長株への投資を狙うのには相応のリスクがあります。成長株と割安株、それぞれの特性を踏まえて、注意すべきリスクを押さえておきましょう。
4-1.成長株に共通するリスク
成長を続けている銘柄全般にいえることですが、3つのリスクを理解しておく必要があります。
まずは、今後どこで伸びが止まるのか、ある程度の見極めが必要になる点です。
たとえば、コロナ禍では業界によって明暗がわかれました。おうち時間が増加したことが追い風となったのが、ゲーム業界です。一部の関連企業の株が大きく上がり、株価の上昇曲線を見るときれいな右肩上がりを描く企業も見受けられました。
問題は「今後も上がり続けるかどうか」です。現在が天井で高値掴みになってしまう可能性もゼロではありません。好感材料があるかどうか、情報を集めながら今後の成長を予測することが大切です。
2つ目は、株価が上昇しやすい反面、株価が急変動しやすいという点です。投資家からの注目が集まって、株式も多く流通している以上、何らかのニュースなどをきっかけに下落する可能性もあり得ます。日頃から情報収集を欠かさないようにすべきでしょう。
特に、成長株が一時的に値下がりし割安になったタイミングで購入する場合、仮に値下がりが一時的なもので、反発したとしても、その後成長し続ける保証はありません。ずるずると上昇と下落を繰り返すということも考えられます。
3つ目は、配当金が得られないケースがあることです。企業が急成長している局面においては、設備投資に利益を回すという判断も多々あります。自分の考える投資スタイルと照らし合わせて考えましょう。
「成長が見込まれる」と期待して購入する場合は、株価が大きく下落するリスクをあらかじめ納得したうえで投資することが大切です。分散投資を行う、損切りする価格を自分の中でルールとして決めておくなど、リスク軽減のための対策は必須です。
4-2.割安株に共通するリスク
今後成長株への転換を期待して割安株を狙う場合、最大のリスクとして考えられるのは、いつまでも株価が上がらずに「塩漬け」状態になってしまうことです。仮に大きな値下がりがなかったとしても、投資期間を考えると機会損失をしてしまう可能性も考えられます。
また、企業価値が正しく株価に反映されていない、すなわち投資家から十分な評価を受けていないということは、何らかの理由がある場合も考えられます。投資する際には入念なリサーチが必要です。
まとめ
この記事では成長株について、また成長株を割安に購入するための投資方法について解説しました。
・成長株とは一般に「年々着実に売上高や利益を伸ばしている、なおかつ今後もさらなる成長が期待できる企業の株式」を指す
・成長株かつ割安株を購入し長期保有するスタイルは堅実。底値で購入することを目指す。大きく値上がりした際は売却で利益を得ることもできる
・割安株はきっかけがあれば爆発的に高騰するケースがある。ただし大きく下落するリスクもあるため分散投資など対策が必須
・株価の推移だけでなく企業の売り上げや純資産などさまざまなデータから総合的に判断する
この記事を成長株投資による資産運用に役立てていただければ幸いです。
文・福本江里
(提供:SmallCap ONLINE)