結果の概要:雇用者数は前月、市場予想を下回った一方、失業率は市場予想を上回る改善

米雇用統計
(画像=PIXTA)

12月3日、米国労働省(BLS)は11月の雇用統計を公表した。非農業部門雇用者数は、前月対比で+21.0万人の増加1(前月改定値:+54.6万人)と、+53.1万人から上方修正された前月を下回ったほか、市場予想の+55.0万人(Bloomberg集計の中央値、以下同様)を大幅に下回った(後掲図表2参照)。

失業率は4.2%(前月:4.6%、市場予想:4.5%)と前月から▲0.4%ポイント低下し、市場予想を上回る改善を示した(後掲図表6参照)。労働参加率2は61.8%(前月:61.6%、市場予想:61.7%)と前月から+0.2%ポイント増加し、市場予想を上回った(後掲図表5参照)。

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1 季節調整済の数値。以下、特に断りがない限り、季節調整済の数値を記載している。 2 労働参加率は、生産年齢人口(16歳以上の人口)に対する労働力人口(就業者数と失業者数を合計したもの)の比率。

結果の評価:雇用回復ペースは大幅に鈍化も家計調査は労働市場の回復を示唆

事業所調査では、11月の非農業部門雇用者数の対前月比増加数が年初来で最低となったなったほか、年初来の月間平均増加数の+55.5万人を大幅に下回るなど、雇用増加ペースが大幅に鈍化したことを示した。とくに、10月に前月比+17.0万人の大幅な増加となっていた娯楽・宿泊業で+2.3万人と雇用の伸びが大幅に鈍化したほか、幅広い業種で雇用の伸びが鈍化した。

一方、家計調査では失業率が大幅に低下したほか、就業者数が前月比+113.6万人増加し、労働力人口も+59.4万人増加した結果、労働参加率が20年3月以来の水準に増加するなど、事業所調査とは対照的に労働市場の回復を示した。

時間当たり賃金(全雇用者ベース)は、前月比が+0.3%(前月:+0.4%、市場予想:+0.4%)と前月、市場予想を下回った。前年同月比は+4.8%(前月改訂値:+4.8%、市場予想:+5.0%)と+4.9%から下方修正された前月に一致した一方、市場予想を下回った(図表1)。このため、賃金上昇率は前月、前年同月比ともに上昇は一服した。

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(画像=ニッセイ基礎研究所)

このようにみると、11月は雇用増加ペースが大幅に鈍化したものの、労働力人口の大幅な増加を伴って労働参加率が増加するなど、事業所調査と家計調査で対照的な結果となった。パウエルFRB議長は先日の議会証言で12月のFOMC会合でテーパリングペースの拡大を議論することを示唆したが、11月の雇用統計の結果によってその方針が変更される可能性は低いだろう。

事業所調査の詳細:民間部門では幅広い業種で雇用伸びが鈍化

事業所調査のうち、民間サービス部門は前月比+17.5万人(前月:+53.4万人)と前月から伸びが大幅に鈍化した(図表2)。

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(画像=ニッセイ基礎研究所)

民間サービス部門の中では、運輸・倉庫が前月比+5.0万人(前月:+6.0万人)と、前月からの伸び鈍化が小幅に留まる一方、娯楽・宿泊業が+2.3万人(前月:+17.0万人)と前月から大幅に伸びが鈍化したほか、人材派遣業が+0.6万人(前月:+4.6万人)に減少した専門・ビジネスサービスが+9.0万人(前月:+12.1万人)、医療・社会扶助サービスも+0.4万人(前月:+5.9万人)と伸びが鈍化した。また、、小売業は▲2.0万人(前月:+3.8万人)と減少に転じた。

財生産部門は前月比+6.0万人(前月:+9.4万人)と前月から伸びが鈍化した。製造業が+3.1万人(前月:+4.8万人)、建設業が3.1万人(前月:+4.3万人)といずれも鈍化した。

政府部門は前月比▲2.5万人(前月:▲8.2万人)とこれは前月に続いて減少も前月からマイナス幅が縮小した。内訳をみると、連邦政府が+0.2万人(前月:▲0.5万人)と小幅ながらプラスに転じたほか、州・地方政府が▲2.7万人(前月:▲7.7万人)とマイナス幅が縮小した。

前月(10月)と前々月(9月)の雇用増加数(改定値)は前月が+54.6万人(改定前:+53.1万人)と+1.5万人上方修正されたほか、前々月は+37.9万人(改定前:+31.2万人)と+6.7万人上方修正された。この結果、2ヵ月合計の修正幅は+8.2万人の上方修正となった(図表3)。

BLSの公表に先立って12月1日に発表されたADP社の推計は、非農業部門(政府部門除く)の雇用増加数が前月比+53.4万人(前月改定値:+57.0万人、市場予想:+52.5万人)と+57.1万人から小幅下方修正された前月を下回った一方、市場予想を上回った。この結果、ADP社の統計は11月の雇用増加数が50万人超と前月からの雇用鈍化が限定的に留まっており、大幅に鈍化した雇用統計と不整合な動きとなった。

11月の賃金・労働時間(全雇用者ベース)は、民間平均の時間当たり賃金が31.03ドル(前月:30.95ドル)となり、前月から+8セント増加した。一方、週当たり労働時間は34.8時間(前月:34.7時間)と前月から+0.1時間増加した。この結果、週当たり賃金は1,079.84ドル(前月:1,073.97ドル)と前月から増加した(図表4)。

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(画像=ニッセイ基礎研究所)

家計調査の詳細:就業者数の大幅な増加を伴って労働参加率が増加

家計調査のうち、11月の労働力人口は前月対比で+59.4万人(前月:+10.4万人)と前月から大幅に伸びが加速した。内訳を見ると、就業者数が+113.6万人(前月:+35.9万人)となり、失業者数の▲54.2万人(前月:▲25.5万人)を大幅に上回って労働力人口を押し上げた。非労働力人口は▲47.3万人(前月:+3.8万人)と3ヵ月ぶりに減少した。

これらの結果、労働参加率は前月比+0.2%ポイント増加したほか、20年3月以来の水準となり、新型コロナ感染拡大に伴って落ち込んだ後の回復局面で最も高くなった(図表5)。

一方、プライムエイジと呼ばれる働き盛り(25~54歳)のみの労働参加率は11月が81.8%(前月:81.7%)と前月から+0.1%ポイント増加した。男女の内訳は、男性が88.2%(前月:88.1%)と前月から+0.1%ポイント増加したほか、女性が75.6%(前月:75.4%)と+0.2%ポイント増加した。女性の改善は2ヵ月連続となっており、学校再開に伴い子育て世代の労働市場への再参入が増加した可能性が考えられる。

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(画像=ニッセイ基礎研究所)

11月の失業率は4.2%と21年6月の5.9%から5ヵ月連続の低下となり、9月に示されたFOMC参加者が予想する中期の失業率予想(4.0%)に近づいてきた(図表6)。

11月の長期失業者数(27週以上の失業者人数)は219.0万人(前月:232.6万人)と前月から▲13.6万人減少した。一方、長期失業者の失業者全体に占めるシェアは32.1%(前月:31.6%)とこちらは前月から+1.5%ポイント上昇した(図表7)。平均失業期間は28.9週(前月:26.7週)とこちらも前月から+2.2週長期化した。

最後に、周辺労働力人口(162.5万人)3や、経済的理由によるパートタイマー(428.6万人)も考慮した広義の失業率(U-6)4は、11月が7.8%(前月:8.3%)と前月から▲0.5%ポイント低下した(図表8)。また、通常の失業率(U-3)との乖離幅は+3.6%ポイント(前月:+3.7%ポイント)と前月から▲0.1%ポイント低下した。

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(画像=ニッセイ基礎研究所)

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3 周辺労働力とは、職に就いておらず、過去4週間では求職活動もしていないが、過去12カ月の間には求職活動をしたことがあり、働くことが可能で、また、働きたいと考えている者。 4 U-6は、失業者に周辺労働力と経済的理由によりパートタイムで働いている者を加えたものを労働力人口と周辺労働力人口の和で除したもの。つまり、U-6=(失業者+周辺労働力人口+経済的理由によるパートタイマー)/(労働力人口+周辺労働力人口)。


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窪谷 浩 (くぼたに ひろし)
ニッセイ基礎研究所 経済研究部 主任研究員

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