10月の小売業販売額は3カ月ぶりの前年比増
(経済産業省「商業動態統計」)
三井住友DSアセットマネジメント 理事・チーフエコノミスト / 宅森 昭吉
週刊金融財政事情 2021年12月14日号
商業動態統計は、個人消費を見るときの供給サイドの重要指標である。同統計の小売業販売額(季節調整値)の10月分は、新型コロナウイルス感染拡大の落ち着きや緊急事態宣言の解除による消費の回復を反映し、速報値で前月比1.1%増となった。
これを前年同月比で見ると0.9%増となり、3カ月ぶりのプラスである(図表)。2020年10月分の前年同月比6.4%増に続き、2年連続の増加となったので、新型コロナの感染拡大以前の水準を上回っている。前年同月比が2年連続で増加になったのは、20年2月分以来、1年8カ月ぶりだ。
ただ、10月分の前年同月比を業種別に見ると、明暗が分かれた。燃料小売業は25.9%増と大幅な改善となった。ただし名目値なので、最近の灯油やガソリンなどの値上げの影響が含まれる数字である。飲食料品小売業は3.7%増だが、こちらも食品の値上げの影響が含まれる。そのほか、機械器具小売業が2.2%増、医薬品・化粧品小売業が1.7%増、各種商品小売業(百貨店など)が0.5%増、その他小売業が0.4%増となった。
一方、マイナスになったのは、半導体などの部品供給不足で生産が落ち込んだ自動車小売業が19.5%減と二桁のマイナス、織物・衣服・身の回り品小売業がマイナス2.0%、無店舗小売業がマイナス2.0%だった。
また、大型小売店の販売額を見ると、百貨店とスーパーの合計で前年同月比1.3%増だった。既存店ベースでは0.9%増と、3カ月ぶりに増加した。既存店ベースの内訳は百貨店が3.0%増、スーパーが0.1%増と、百貨店が牽引したがどちらも3カ月ぶりの増加になった。
それに対して、コンビニエンスストアの販売額は前年同月比0.2%減だった。「Go To トラベル」で行楽需要が高まった前年同月の反動が出たようだ。
緊急事態宣言の解除から約2カ月がたつが、懸念されたコロナ感染再拡大が見られず、消費者心理は改善しつつある。しかし、足元で懸念材料が出てきた。世界保健機関(WHO)は11月26日、南アフリカなどで確認された新型コロナの新たな変異株を「懸念される変異株」に指定し、オミクロン型と命名した。特徴として、感染力がデルタ型よりも強く、ワクチンが効きにくい可能性が報道されている。26日の日経平均株価は前日比747円66銭安と大幅に下落した。日本は当面、水際対策で対応することになろうが、このオミクロン型の動向は注視したい。
(提供:きんざいOnline)