大部分の不動産投資家にとって「金融機関の融資情勢」は、投資をするうえでの生命線の一つでしょう。

2021年はコロナ禍が継続している中で東京都の人口が減少するなどの大きなトレンド変化の兆しが見えている一方、不動産投資マーケットや融資情勢に今後少なからず影響が及ぶことも予測されます。

本記事では、不動産投資家への意識調査の結果を基づき、注目すべき2021年の融資情勢を3つ述べたうえで、その情勢下で不動産投資家がすべきことを3つ解説します。

注目すべき2021年の融資情勢3選

注目すべき2021年の融資情勢3選と不動産投資家が今すべきこと3選
(画像=jirsak/stock.adobe.com)

野村不動産ソリューションズ株式会社が2021年6月に実施した、不動産投資家411人への意識調査「2021年度 不動産投資に関する意識調査」の結果によると、2021年において注目すべき融資情勢は以下の3点です。

・求められる自己資金の割合が上がった
・フルローンの融資が出づらくなった
・従来まで通っていた属性条件が通じない

同意識調査において「直近6ヶ月で融資が厳しくなった」と回答した投資家にその理由を質問したところ、上記3つが最も多く回答された項目でした。

求められる自己資金の割合が上がった

融資が厳しくなった理由として、「求められる自己資金の割合が上がった」と回答した投資家の割合は50%でした。

融資時に金融機関から求められた自己資金の割合について、別の意識調査データを参照して紹介します。

不動産投資と収益物件の情報サイト健美家が2021年10月に実施した、同サイトの会員302人への意識調査「第16回不動産投資に関する意識調査」の結果によれば、2019年からの3年間に行われた融資において金融機関に求められた自己資金の割合は以下の表のように推移しています。

 2019年2020年2021年
1割以下※66.9%66.5%62.7%
2割以上16.7%33.6%37.3%

※フルローン以上(自己資金なし)を含む

1割以下の自己資金に収まったと回答した投資家が横ばいまたは微減しており、2割以上求められたと回答した投資家が2倍以上に増えていることが分かります。

求められる自己資金は、2021年までは1割以下に収まるケースがスタンダードでしたが、増加傾向がこのまま続くと2割以上の自己資金を求められるケースがスタンダードになる可能性もあり得るでしょう。

フルローンの融資が出づらくなった

融資が厳しくなった理由として、「フルローンの融資が出づらくなった」と回答した投資家の割合は46.7%でした。

フルローン以上(自己資金なし)での融資の割合について、別の意識調査データを参照して紹介します。

不動産投資と収益物件の情報サイト健美家が2021年10月に実施した、同サイトの会員302人への意識調査「第16回不動産投資に関する意識調査」の結果によれば、2019年からの3年間に行われた融資においてフルローン以上での融資の割合は以下の表のように推移しています。

2019年2020年2021年
35.3%28.5%27.1%

2019年では3人に1人以上が自己資金なしで不動産投資ができていましたが、2021年では約4人に1人までに低下したということです。

フルローンでの融資が今後も減少する事態に備えて、自己資金として拠出できるキャッシュポジションを厚くしておくことが重要でしょう。

従来まで通っていた属性条件が通じない

融資が厳しくなった理由として、「従来まで通っていた属性条件が通じない」と回答した投資家の割合は33.3%でした。

本意識調査における「属性条件」は年収・保有資産を指しており、従来まで通っていた属性条件が通じないということは金融機関の融資審査におけるハードルが上がったといえます。

一方で、金融機関の融資情勢は流動的であるため、各金融機関のオンタイムの動向を注視しておくことで融資を受けられるチャンスを掴める可能性はあるでしょう。

物件を現金購入したと回答した割合が直近5年間で最高

不動産投資と収益物件の情報サイト健美家の集計データによれば、2021年は直近5年間(2017年〜2021年)において、物件を現金で購入した投資家の割合が最高となっています。

2017年から2021年までの期間で物件を購入した投資家のうち、現金で購入した割合は以下の表の通りです。

2017年2018年2019年2020年2021年
23.0%18.2%31.8%37.7%48.2%

2018年には現金購入者の割合は5人に1人未満でしたが、2021年には約半数となっており、2.6倍以上に増えていることが分かります。

求められる自己資金の割合が上がった、フルローンの融資が出づらくなった、従来まで通っていた属性条件が通じなくなったという融資の厳格化を受けて、思うように融資を受けられなくなった投資家が現金購入にシフトしたと考えられるでしょう。

現金購入者の割合の推移も金融機関の融資情勢を推し量る一つの指標となるため、注視しておくとオンタイムの動向が掴めるかもしれません。

2021年の融資情勢において不動産投資家がすべきこと3選

厳格化した傾向が見て取れる2021年の融資情勢において、不動産投資家としてすべきこととして以下の3つが挙げられます。

・自己資金用の現金を増やす
・年収および保有資産の金額を増やす
・融資に積極的な金融機関を探す

いずれも、2022年以降に融資が緩和傾向に変わった場合にも融資審査において有利に作用し得る内容であるため、今後の融資情勢のトレンド変化に備えるために2021年から準備しておくといいでしょう。

自己資金用の現金を増やす

求められる自己資金の割合が今後も増加傾向となる場合に備えて、自己資金として拠出できる現金を増やしておくことが得策です。

物件価格の3割以上の自己資金を求められることも想定されるため、投資を考えている規模の3割を一つの目安としてキャッシュポジションの形成を始めておくのも選択肢の一つです。

年収および保有資産の金額を増やす

従来まで通っていた属性条件が通じなくなっているという融資ハードルの厳格化が今後も続く場合に備えて、融資審査における重要項目の一つである年収および保有資産の金額を増やすことも有効でしょう。

具体的に年収および保有資産の金額を増やす方法として、以下のようなものが挙げられます。

・本業からの所得(給与所得や事業所得等)を上げる
・担保となる資産(不動産、現預金、有価証券等)を増やす

年収および保有資産の金額が増えればより大きな金額の融資を受けることができる可能性が高まり、大規模な投資を行えるようになるため、資産規模の拡大を図りやすくなります。

融資に積極的な金融機関を探す

2021年は融資が厳格化しているトレンドが見受けられますが、そのような中でも不動産投資への融資に対して積極的な金融機関・支店・担当者が存在する可能性は大いにあります。

加えて、融資を受けられるか否かのボーダーラインとなる年収・保有資産の金額は金融機関によって大きく異なるため、融資アレンジに強い不動産業者等を経由してオンタイムの各金融機関の融資姿勢を把握しておくといいでしょう。

現状の融資情勢および自分の属性であっても有利な条件で融資を受けられる金融機関が見つかる可能性もあるため、個別に打診してみるのが得策です。

融資情勢のトレンドをオンタイムでフォローしよう

不動産投資をするうえで融資を受けられるか否か、どのような条件(自己資金、金利、融資期間等)かといった点は生命線ともいえる重要事項の一つです。

2021年は、求められる自己資金の割合が上がった・フルローンの融資が出づらくなった・従来まで通っていた属性条件が通じないといった融資の厳格化トレンドが見られるほか、現金購入をした投資家の割合が過去5年間の最高値を記録しています。

誰でも容易に融資を受けられる情勢とはいいがたい状況ですが、自己資金用の現金を増やす・年収および保有資産の金額を増やすといった準備を行いながら、融資に積極的な金融機関を探すことで、物件を購入できるチャンスを掴める可能性は大いにあるといえるでしょう。

(提供:Incomepress



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