先日、大阪に住んでいる友人から国際郵便が届いた。包みを開けると、グリーティングカードとともに『東光 干支の酒』が入っていた。東光は、安土桃山時代に創業し、後に上杉家御用酒屋を承った小嶋総本店が醸す日本酒だ。夫が東光の大ファンということで送ってくれたようだ。
『東光 干支の酒』のサイトでは、2022年の干支である「壬寅(みずのえとら)」について、「陽気を孕み、春の胎動を助く」という意味があり、転じて「冬が厳しいほど春の芽吹きは生命力に溢れ、華々しく生まれる年になるということだそうです」と紹介されている。新型コロナ禍の2021年が「冬の厳しさ」だとしたら、2022年は春の訪れとともに希望に満ち溢れた年になるように、との願いが込められているようだ。
ちなみに、2021年の「辛丑(かのとうし)」には「痛みを伴う衰退と、新たな息吹が互いに増強し合う年」という意味があったとされている。金融業界の新たな息吹といえば、ビットコインに代表される暗号資産が存在感を強めたことが記憶に新しい。暗号資産の専門サイト「コインマーケットキャップ」によると、世界の暗号資産全体の時価総額は12月23日時点で2兆 2,602億ドル(約258兆2,584億円)前後で推移しており、この1年で約3倍に拡大している。2021年は年金基金など巨額の投資マネーを運用する機関投資家が暗号資産投資へ参入したことも話題となったが、果たして2022年もこの傾向は続くのだろうか。
今回は「2022年、注目すべき暗号資産のトレンド」と題してお届けしたい。
機関投資家は調整局面を予想? 流動性とボラティリティに課題も
12月9日、資産運用会社ナティクシス・インベストメント・マネージャーズは、調査会社コアデータ・リサーチに依頼して、世界29カ国・地域の約500の機関投資家を対象に実施した調査報告を発表した。約500の機関投資家のなかには中央銀行4行のほか、20余りの政府系ファンド、150を超える企業年金基金が含まれる。これら約500の機関投資家の運用資産の総額は12兆3,000億ドル(約1,400兆円)ということだ。
調査では、機関投資家の多くが2022年に様々な資産やセクターで「調整局面」を想定していることが判明した。最も調整が予想される資産のトップは暗号資産で過半数を占めていた。また、全体の75%近くが「(暗号資産は)大半の個人投資家にとって適切な投資先ではない」と回答している。
調査では「個人投資家にとって適切な投資先ではない」理由を示していなかったが、もともと暗号資産はボラティリティ(価格変動)が大きいこともあって、警戒されやすい面はあるのかもしれない。
一方で筆者が興味深く感じたのは、調査対象となった機関投資家の約40%が「暗号資産を正当な投資の選択肢と認識している」と回答したことだ。さらに、28%が「現在暗号資産に投資している」と答え、そのうち約33%が「(2022年に)暗号資産への配分を増やす計画」を明らかにしている。
暗号資産の課題として、かねてより指摘されるのが流動性とボラティリティだ。暗号資産に限らず、どんな市場でも流動性が低いとボラティリティが大きくなりがちで、その反対に流動性が高くなればボラティリティが低くなる傾向にある。暗号資産市場が発展するためには、流動性を高めてボラティリティを低く抑えることが欠かせない、と筆者は考えている。したがって、機関投資家のような巨額の資金を運用するプレイヤーが、暗号資産の資産配分を増やせば、流動性が高まり、その結果としてボラティリティを抑える可能性もあるのではないだろうか?
2022年も引き続き機関投資家の動向が注目されるところである。