東京海上日動火災保険株式会社(東京海上)、株式会社NTTデータ、株式会社スタンデージ、株式会社トレードワルツの4社は27日、新たな貿易決済の仕組みの実現に向けた実証実験を行ったと発表した。
実証実験では、ブロックチェーン技術を活用、貿易プラットフォームで電子化された有価証券「船荷証券(B/L)」と暗号資産(仮想通貨)の同時交換を確認した。
貨物と代金を交換する貿易取引では、貨物の代わりとして船荷証券(B/L)と代金が交換されてきた。B/Lとは、運送者から貨物の引き渡しを受ける権利である運送品引渡請求権を示し、貨物の所有権を示す有価証券に分類されるもの。
このB/Lを用いる貿易取引では、海外で行う場合は輸出者と輸入者の物理的な距離があるため、同時に代金による交換ができない。また、どちらかの債務の不履行というリスクも生じる。今までは、銀行や保険、ファクタリングなどによるリスクヘッジが必要であり、追加コストが発生していた。
今回は債務不履行というリスクを回避できるよう、電子B/Lと暗号資産を同時交換させた。この試みは世界初だという。ブロックチェーン技術を用いることで、リスクを軽減させることに成功する見通しが立った。
日本国内では現在、B/Lの電子化は実用化に至っていないが、関係法改正を求める動きがあり、コロナ禍においては海外諸国でも同じ動きがあるという。また、デジタル通貨においても、国際的な実用に関する議論があり、中国やカンボジアなどを中心にCBDC(中央銀行デジタル通貨)の実用化に向けた動きが活発化している。
貿易において、電子B/Lと暗号資産の取引が普及すれば、デジタルデータである双方を同時に交換できる可能性が生まれる。
期待される効果として、国際売買の多くのリスクが除外される。リスクヘッジのための余計な負担も減る。輸出入業者の貿易コスト低減につながり、それは消費者にも反映される。そして、技術力や特色があるのにも関わらず、代金前払いに応じて貰えないばかりに海外の新規顧客開拓が進まないという課題を持つ、中小企業の貿易取引の活発化にもつながる。さらに貿易の平易化が期待できると言えるだろう。
債権債務の同時履行により、貨物の所有移転が明確になることで、時間差のために生じていた国際売買契約や、法律上の諸問題を解消できるという。
B/Lや保険証券、Invoiceなどを電子化する貿易プラットフォーム「TradeWaltz」と複数のブロックチェーンを連携するインターオペラビリティ技術をNTTデータが提供し、暗号資産の移転技術をスタンデージが提供し、今回の実証実験は実現した。また検証には松尾産業、ウィル・ビーをはじめ、複数企業が参加、協力したという。暗号資産を用いて、貿易の決済が大きく変わろうとしている。(提供:月刊暗号資産)