バリューチェーンから企業を分析する
企業の事業活動をバリューチェーンというフレームワークに落とし込み、細分化した各活動で生み出されている価値や問題点を洗い出すのが、バリューチェーンを用いた分析である。具体的には、以下のような作業を行う。
- バリューチェーンの概念に従って、自社の事業活動を細分化する
- 各活動で発生するコストを把握する
- 各活動の強みと弱みを洗い出す
- 自社の強みをV(Value=価値)R(Rareness=希少性)I(Imitability=模倣可能性)O(Organization=組織)の観点から分析(VRIO分析)。
4つの要素のうち、満たすものが多いほど、その強みは自社の市場における優位性を高めてくれる。
このような分析を行うことで、「自社の限られた経営資源を事業活動のどこに投入すればよいか」が見えてくるだろう。経営資源の最適化を図るため、必要に応じてコストを削減したり、競合優位性を高めるための戦略を立てたりする。
バリューチェーンとサプライチェーンの違い
バリューチェーンとよく似た言葉に「サプライチェーン」がある。サプライチェーンとは、商品やサービスを顧客に届けるまでの流れを指す言葉だ。サプライチェーンの効率化・最適化を図ることを「サプライチェーン・マネジメント」という。主にモノや情報、お金の流れの効率化・最適化を目指す。
一方、バリューチェーンはサプライチェーンだけでなく、それを支える労務管理なども含めて細分化し、各活動が生み出す価値に主眼を置いている。
企業環境が変わればバリューチェーンも変わる
世界各国で「2050年カーボンニュートラル」を目指す動きが加速している。カーボンニュートラルとは「温室効果ガスの排出量と吸収量を均衡させる」という目標のことで、政府は2050年までに温室効果ガスの排出量を削減し、植林や森林を管理することで、吸収量を強化・保全し、その差し引きで温室効果ガス排出の実質ゼロを目指すとしている。
この目標に賛同した国と地域は日本を含み124か国・1地域(2021年1月時点)で、地球の温暖化対策と環境保全はグローバル経済の喫緊の課題となっている。
一言でカーボンニュートラルというが、要は100年間以上続いてきた化石燃料を主体とした社会から脱炭素社会への移行を目指すというもので、まさに社会経済システムの転換点に各産業界は立たされている。
日本では、2021年2月に経済産業省が「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」を発表した。そのなかの一文に「経済と環境の好循環をつくっていく産業政策=グリーン成長戦略」と明記されており、「カーボンニュートラルに向けた投資促進税制・研究開発税制の拡充、事業再構築・再編などに取り組む企業に対する繰越欠損金の控除上限を引き上げる特例の創設を講じ、民間投資を喚起していく」とするなど、産業の業種を問わず、各企業は事業を通した地球規模の環境保全への貢献という命題に直面している。
この経済産業省が明記する「事業再構築・再編などに取り組む企業」に対する殊遇策は、これまでの化石燃料を主体とした事業活動で社会貢献を継続してきた企業体に対して、自社のバリューチェーンの見直しを迫るものであるといえる。