そもそも、資格を取って起業をするのは本格的な事業であって、ここでおすすめするオンライン起業とは趣旨が異なります。お伝えしたいのは、普通の主婦や会社員が、家事や本業の仕事があってサブ的にお金を稼ぐことや、空いている時間にできる起業のイメージです。そのタイプの起業に向いているのは、資格を取ってそのまま使うことではなく、すでに持っている資格に何かを組み合わせて起業のタネにすることです。
ポイントは、知識のある専門家がコツを教えてくれる、という点です。資格をうまく使っていくと信頼感や説得力が上がります。資格を使って、困っている人たちに何を教えられるかというところを明確にするといいでしょう。本人は「なんでこんな資格を取っちゃったのか」と思うような資格が、実は起業のいいタネになるケースは少なくありません。
例えば、実際にいらっしゃったのが、看護師でコーチングの勉強をされた方です。いまでも現役の看護師です。患者さんの話を聞くためにコーチングを勉強し、資格も取ったそうです。
彼女はもともとは、本職である看護師として月給をもらい、空いているお休みの日に誰かにコーチングのセッションをして副収入を得ようと考えていました。でもそうではなく、コーチングに看護師のイメージをかけ合わせて、「いろいろな人たちの不安を取り除く現役ナースのコーチング」とすれば、他にはないユニークなものになるのではないでしょうか。
●ルート5 あなたの「経験」がタネになる
私は、誰にとってもすべての経験が起業のタネになると考えています。どんな経験もムダにはならないからです。
「そう言われても、私はずっと主婦で、家事と育児しかしてこなかったんです」とおっしゃる方がいます。しかし、家事や育児は素晴らしい経験です。育児の経験は、第一子の出産・育児に直面している新米ママにとっては、喉から手が出るほどほしい情報にあふれています。家事も、忙しい毎日の中で効率よく時間を使うために手際よくするコツは、誰しも知りたいところです。
家事と育児をずっとなさってきた方なら、自分なりのコツや工夫がいくつもあると思いますが、それをブログやSNSにまとめて、悩んでいる人たちと分かち合うことで、収入につながる道筋が広がっていきます。
「私には子育ての経験もなく、コンビニのバイトでレジを打っていただけです」という人がいるかもしれません。でも、それも重要な経験です。コンビニのレジにいることで、この季節にはこういう商品が売れるとか、天気が変わると売れ筋が変わる、なんていうことをリアルに体験していることでしょう。まさにマーケティングの最前線にいるということではありませんか?
レジでお客様と接する中で、思いも寄らないクレームに対応しなければならなかったかもしれません。その対応の経験だって、まとめたらきっと誰かの役に立つはずです。経験を通して気づいたことを発信していけば、それを知りたい人は少なくないはずです。
●ルート6 あなたの「消費行動」がタネになる
先ほど、ルート1 あなたの「趣味」がタネになるのところで、趣味を「お金と時間をかけて継続的にやっていること」と定義しました。「お金を使うこと=消費行動」という考え方に則ると趣味も「消費行動」に入りますが、ここではそう定義しません。
例えば、病院に行って診察してもらう、薬を買う、などは、やむなく使うお金ですよね。もっと具体的な例を挙げてみると、「糖尿病でずっと薬を飲んでいます」という場合などは、まさにお金を使いたくて使っているわけではないかと思います。やむを得ず払っているお金です。
でも、払った分だけ、実は起業のタネになるような経験を積んでいることにお気づきでしょうか。「糖質を減らしてください」とか、「甘いものを控えてね」という食事の指導もされるでしょう。
私の知り合いに糖尿病の男性が2人いるのですが、彼らはやはり、何を食べたら血糖値が上がるのかについて、とても詳しく知っています。実は、食べ物と血糖値の関係は、ダイエットしたい人にとってはすごく重要な話です。血糖値がバーンと上がる食事は太りやすいからです。
先ほどの男性のうち1人は、YouTubeで血糖値のコントロールの話を糖尿病の人に向けて発信していて、ダイエットに関心のある人たちが視聴しているようです。視聴回数に応じて、彼には広告収入が入っています。彼にとっては、お金を使いたくて使っているわけではない糖尿病の治療ですが、そのことが起業のタネにもなっているのです。
楽しいことに使っているお金と違い、病気治療のために払っているお金のような「仕方なく使っているお金」は忘れてしまいがちです。でも、継続的に使っているということは、継続的に発信できるタネがあるということ。よく見直してみれば、あなたも日常生活の中に「仕方ない」出費があるはずです。それを、ぜひ収入のきっかけに転換させてください。
●ルート7 あなたの「苦手」がタネになる
「苦手なことが起業のタネ?」と、首をひねる人もいるかもしれません。実は、これにはある条件がついています。現在はすでに克服できているけれども「過去に苦手だったこと」が起業のタネになるのです。
例えば、極度のあがり症だった女性がいます。人前に出ると全然話せず、頭が真っ白になっていたそうです。そこで、「あがり症をなんとかしたい」と心理学やコミュニケーションをものすごく勉強して、ついにあがり症を克服。いまでは「あがり症克服トレーナー」として、オンラインで個人セッションをしているのです。彼女自身がかつて悩み、それを努力で克服した経験があるからこそ、伝えられることがあるのでしょう。
●ルート8 あなたの「存在」がタネになる
先日、20歳の私の娘が面白い本を紹介してくれました。『しあわせ貯金生活』(自由国民社)という、ぽちさんという方が書かれた本で、 2021年4月に出版されたのです。
ぽちさんはインスタグラマーで、まだ20代。手取りが16万円で、1人暮らしで大学の奨学金を返済中らしいのです。それで、貯金するためにどうしたらいいのかということや、いらないものを売ったり、節約したり、彼女なりの貯金のノウハウをInstagramに書いていたら、20万人のフォロワーがついたそうです。
そこで「本を出しませんか」と出版社から持ちかけられてこの本になったということですが、これがまさに「存在」がビジネスになったいい例です。「今日はこんなことをしたよ」「こんな貯金をしたよ」「モノを売って1万円になったよ」「私は貯金がすごく苦手」「でも夢のためにお金をためよう。奨学金も返済しよう」という、すごくリアルな20代の女の子の毎日。娘の世代だけでなく、親世代の私から見てもとても面白いと思いました。
自分がやっていることを他の人に伝えるだけで、それを素敵と思う人が本を買ったり、YouTubeを見たり、Instagramを見たりしてくれるのです。とにかくなんでもいいので、そのまま発信することで価値が生まれてくることも少なくありません。
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以上8つのルートから、いくつのタネが見つかりましたか? あなたらしい起業のタネが見つかったら、早速そのタネをもとにSNSなどを使って発信していきましょう。
著者プロフィール:山口 朋子(やまぐち ともこ) 彩塾オンラインコミュニティ主宰。株式会社アップリンクス代表取締役。主婦起業・オンライン起業の専門家。セミナーやコンサルティングを通じて、1万5000人以上の起業に関わる。現在は、中小企業のオンライン化のアドバイス、個人のオンライン起業の支援、国内・海外で講演やセミナーを行う。雑誌「日経ウーマン」「anan」「STORY」、テレビ番組「ワールドビジネスサテライト」「あさイチ」「バイキング」、朝日新聞、毎日新聞など大手メディアにオンライン活用の起業家として取り上げられる。著書『主婦が1日30分で月10万円をGetする方法』(さくら舎)、『普通の主婦がネットで4900万円稼ぐ方法』(フォレスト出版)、『忙しい主婦でもできる!スマホで月8万円を得る方法』(学研プラス)。
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