コロナ禍に注目が集まりすぎてあまり語られなくなっている部分もありますが、東京オリンピックの誘致が決まってからオリンピック開催までは不動産市場が活況を呈し、行き過ぎたバブルだとの指摘もありました。バブルであればいつかは弾け、それがオリンピック後にやってくるとの噂が囁かれていたものです。この「オリンピック後バブル崩壊説」ついて、実際のところはどうなのでしょうか。2022年以降の不動産市場がどうなるかを考察・展望します。

「コロナ前」の不動産市場は好調が続いていた

「オリンピック後」の不動産市場を大胆予測!2022年以降はこうなる
(画像=moarave/stock.adobe.com)

2020年の東京オリンピック招致が決まったのは2013年の9月7日のことです。オリンピックが開催されると多大な経済効果がもたらされるとあって首都圏の不動産市場は活況となりました。

そもそも人口の流入が続く東京を中心とする首都圏では不動産需要が堅調に推移しており、そこに「特需」が加わった形です。

さらに2013年はインバウンド景気が盛り上がりを見せていた時期でもあり、訪日外国人数が伸び続けていたこともホテルや民泊といった不動産需要を下支えしました。

不動産市場にとっては追い風となる要因が幾重にも重なっていたわけですが、その様相を一変させたのがコロナ禍です。

コロナ禍で状況が一変

ホテルや都心オフィス、所業施設などの需要が冷え込み、「東京脱出」という言葉も生まれるほど東京から人が減る事態も起きました。

その一方で物流施設など巣ごもり需要に関連する不動産は活況となるなど、J-REITの傾向を見てもその明暗ははっきりと分かれました。

オリンピック後、2022年以降の不動産市場はどうなる?

「オリンピック後」の不動産市場を大胆予測!2022年以降はこうなる
(画像=Wirestock/stock.adobe.com)

コロナ禍が起きていなかった当時は、「オリンピック後にバブルが弾けて不動産市場は暴落する」というのがなかば定説のように囁かれていました。それだけオリンピック特需が大きく、不動産市場にも過熱感があったということでしょう。

しかし実際にはコロナ禍によって不動産市場の過熱感もなくなり、そのコロナかが収束に向かっていくなかで不動産市場は落ち着きを取り戻し、それほど大きくは変わらないというのが一般的な見方です。

コロナ禍で最も影響を受けたのは観光業

コロナ禍の影響を最も強く受けた不動産セクターは、ホテルなど観光関連です。

ホテル型のJ-REITとして東証に上場している「大江戸温泉リート投資法人」の値動きを見ると、コロナショックによる落ち込みとそこからの回復基調が顕著に表れています。

「オリンピック後」の不動産市場を大胆予測!2022年以降はこうなる
(引用:TradingView

中央付近にある大きな落ち込みが2020年3月のコロナショックです。そこから何度も緊急事態宣言の影響で値を落としていますが、その後は上昇トレンドを維持して現在に至ります。

コロナ禍の収束次第でこうした不動産セクターも活気づくことが改めて証明されています。

2022年の不動産市場は堅調さを維持する

2022年はワクチンの普及や治療薬の開発などコロナ対策が充実していると考えられるため、ダメージを受けたセクターの復活も含めて不動産市場は堅調さを維持するもの思われます。

2022年の不動産市場で避けて通れない「生産緑地問題」

「オリンピック後」の不動産市場を大胆予測!2022年以降はこうなる
(画像=Paylessimages/stock.adobe.com)

オリンピック後の2022年には、不動産業界で警戒する声が上がっている2022年問題を避けては通れません。

これは「生産緑地問題」とも呼ばれているもので、これまで税金面での優遇を受けてきた都市部の農地が一斉に宅地などに転用され、大量に供給されることで不動産価格の暴落につながるのではないかと危惧されている問題のことです。

生産緑地が多い地域では不動産価格が下落する可能性が

生産緑地には税金の優遇メリットと引き換えに30年の営農義務があります。

生産緑地制度が始まったのが1992年なので、そこから30年後の2022年になると営農義務がなくなった土地が農地ではなくなる可能性があるわけです。

農地から宅地に転用されて大量に売却されると、確かに生産緑地が多い地域では不動産価格の下落圧力になるでしょう。

生産緑地は地域によって偏りが大きいので、ほとんどない地域ではあまり影響はないでしょう。しかし、生産緑地が多い地域では一時的な不動産価格の下落が起きるかもしれません。

東京で生産緑地が多い地域

東京23区では練馬区と世田谷区が突出して多くの生産緑地を抱えており、東京都の市部だと八王子市と町田市の突出ぶりが目立ちます。

これらの地域では2022年問題の影響を受ける可能性があるので、考慮しておく必要があります。

「ロンドン」はどうだったのか

「オリンピック後」の不動産市場を大胆予測!2022年以降はこうなる
(画像=alice_photo/stock.adobe.com)

東京オリンピック後の不動産市場を展望するには、「先輩」にあたるそれまでの開催都市のオリンピック後を見ることも参考になると思います。

2012年にオリンピックが開催されたイギリスのロンドンもオリンピック景気に沸いた都市ですが、オリンピック後の不動産市場はどうなったのでしょうか。

ロンドン五輪は経済的には好影響だったが……

経済全体への影響を見ると、オリンピック開催が好影響をもたらしたと結論づけられています。

小売業や広告業、観光業、建設業など広範にわたって経済効果がもたらされ、「オリンピックには多大な経済効果がある」ことが証明されています。

不動産市場への影響はどうだったのかというと、あまり影響がなかったと結論づけられています。

不動産は衣食住の一角をなすものであり、人がいる以上住む場所は必要なので、住宅をはじめとする不動産市場は景気変動の動きを受けにくい特性があります。

すでに成熟した都市であるロンドンで開催されたオリンピックとあって新たな不動産の建設ラッシュが起きたわけでもなく、堅調な推移をしたものと考えられます。

ただし、ロンドンと東京の「オリンピック後」はコロナ禍の有無など同列に比較できない部分も大きいので、あくまでも参考程度で見ておくのがよいでしょう。

オリンピック後の不動産市場を大胆予想

「オリンピック後」の不動産市場を大胆予測!2022年以降はこうなる
(画像=oben901/stock.adobe.com)

ここまでさまざまな角度から東京オリンピック後の不動産市場を展望してきましたが、結局のどころどうなるのか?との疑問をお持ちの方も多いと思います。

そこで最後に、オリンピック後の首都圏の不動産市場についてどうなるのかを大胆予想してみたいと思います。そのポイントは、3つあります。

1.東京への人口流入は今後も続く
2.生産緑地の2022年問題による影響は限定的
3.インフレ圧力によって不動産価格は上昇しやすい

1.東京への人口流入は今後も続く

日本は人口が減少する時代に突入していますが、その一方で東京の人口は増え続けています。それだけ日本全国から多くの人が東京に流入しているわけです。

人が増えると不動産の需要も旺盛になります。この旺盛な需要とそれを見越した思惑により、首都圏の不動産市場は活況を維持すると思われます。

2.生産緑地の2022年問題による影響は限定的

先ほど解説した生産緑地の営農義務が終わることによる2022年問題については、地域によって生産緑地の有無や面積が大きく異なるため、影響を受ける地域はあるでしょう。しかしそれ以外の地域においてはほとんど影響がないか、影響があっても限定的でしょう。

生産緑地が集中している地域であっても首都圏の不動産であることに変わりはなく、一時的な下落はあってもすぐに堅調さを取り戻すものと思われます。

3.インフレ圧力によって不動産価格は上昇しやすい

日本経済は長らく続いたデフレから、緩やかにインフレにシフトチェンジしつつあります。

コロナ禍で傷ついた経済を下支えするための金融緩和が大きな原因で、すでにアメリカでは高いインフレ率が続いています。インフレ局面になると資産価格も上昇するため、不動産価格にも上昇圧力が掛かります。

ただし、インフレになると金利も上昇するため、あまり金利が大きく上昇しすぎると不動産への投資熱に冷や水を掛けることになってしまうため、過度のインフレは不動産価格を下落させる要因になります。

(提供:Dear Reicious Online



【オススメ記事 Dear Reicious Online】
40代からの将来設計。早いほどおトクなマンション経営
マンション経営の物件選び!初心者がまず知っておきたい必須のポイント
少子高齢化社会が不動産の可能性に与える影響
「働く」だけが収入源じゃない 欧米では当たり前の考え方とは
実は相性がいい!?不動産×ドローンの可能性