政府が積極的に推進している「キャッシュレス化」。民間の動きも盛り上がり、普及が進んでいる印象を受ける。この記事では、キャッシュレス決済に関する調査データを参照し、実際の普及度を探りつつ、改めてキャッシュレス化のメリットとデメリットを整理する。
キャッシュレス化を国が推進している理由
日本政府と国がキャッシュレス化の取り組みを推進しているのは、導入に意義があるからだ。詳しくは後述の「キャッシュレス決済のメリット」で触れるが、消費者や事業者、そして公共的な観点においてもメリットがある。
例えば消費者は、キャッシュレス化によって現金を持ち歩かなければならない不便さから解放される。また、現金の場合は無くしてしまったらそれまでだが、電子マネーなどの場合は条件次第で全額が保証される。
事業者にとっては、人手不足の対策になる。レジ作業にかかる時間が減るため、省人化が可能になるわけだ。完全にキャッシュレス化されれば、売上の金額が合わないということもなくなる。またキャッシュレス決済を導入すれば、訪日外国人客にも対応しやすい。
公共的な観点で言えば、税金をキャッシュレスで支払ってもらえるようになれば、現金を扱わない分、税務に関する関係省庁の業務が効率化する。キャッシュレス化するとお金の流れが記録に残るため、マネーロンダリング(資金洗浄)などの犯罪の抑制にもつながる。
日本のキャッシュレス決済比率はいまどれくらい?
経済産業省商務・サービスグループキャッシュレス推進室の「中間整理を踏まえ、令和3年度検討会で議論いただきたい点」によると、2018年の世界各国のキャッシュレス比率は韓国がトップで94.7%、次いで中国の77.3%、カナダ62.0%、オーストラリア59.0%と続く。その中で日本は24.1%にとどまっている。
しかし、日本のキャッシュレス比率も徐々に高まっており、2016年には20.0%、2017年には21.3%、2018年には24.1%、2019年には26.8%、そして2020年には29.7%となった。それぞれのキャッシュレス決済の比率は以下の通りだ。
<キャッシュレス決済比率の内訳の推移(2015〜2020年)>
決済手段 | 2015年 | 2016年 | 2017年 | 2018年 | 2019年 | 2020年 |
クレジットカード | 16.5% | 18.0% | 19.2% | 21.9% | 24.0% | 25.8% |
デビットカード | 0.14% | 0.30% | 0.37% | 0.44% | 0.56% | 0.75% |
電子マネー | 1.5% | 1.7% | 1.7% | 1.8% | 1.9% | 2.1% |
QRコード | - | - | - | 0.05% | 0.31% | 1.1% |
計 | 18.2% | 20.0% | 21.3% | 24.1% | 26.8% | 29.7% |
日本でも徐々にキャッシュレス化が進んでいるのが分かる。いずれの年もクレジットカードを使ったキャッシュレス決済の比率が最も高いが、この数年はQRコード決済の普及率がじわりと高まっている印象だ。
キャッシュレス決済のメリットは?
記事の前半でも少し触れたが、キャッシュレス決済のメリットを表で整理すると、以下の通りとなる。
消費者 | ・現金を持たずに買い物が可能 ・ネット取引でも便利に利用できる ・カード紛失時のなどの被害リスクが低め |
事業者 | ・人手不足対策 ・売上金の紛失などのトラブルが減る ・インバウンド需要の取り込みに効果 ・顧客の購買データをマーケティングに利用可能 |
公共 | ・税金徴収の効率化 ・マネーロンダリングの抑制 |
特に小売店などの事業者の場合は、キャッシュレス決済機能を導入すると、どのような年齢・性別の客がどのような商品を購入したかなどの情報をビッグデータ化し、マーケティングに生かせる。この点は非常に大きなメリットであると言える。
キャッシュレス決済のデメリットは?
一方でキャッシュレス化にもデメリットはある。
消費者 | ・災害発生時、キャッシュレス決済が利用できない可能性がある |
事業者 | ・導入する際に専用端末などのコストが発生する ・決済手数料の負担 |
事業者にとっては、キャッシュレス決済を導入する際に専用端末などのコストが発生することや、決済手段ごとに設定されている決済手数料を負担しなければならないことが挙げられる。
消費者側にとっては、災害発生時にデメリットを感じやすい。普段からキャッシュレス決済を利用していると現金をあまり持ち歩いていないため、災害発生時にコンビニなどでキャッシュレス決済が利用できなくなると、必要なものが買えない状況が発生する可能性がある。
不動産業界でもキャッシュレス化が進む
キャッシュレス決済にメリットとデメリットはあるが、デメリットを補って余りあるメリットがあると言え、小売店などだけではなく、さまざまな業界でキャッシュレス化が進む。
例えば不動産業界。家賃をクレジットカードで支払う仕組みやQRコード決済で支払う仕組みがすでにあり、導入が徐々に進んでいるようだ。
コロナ禍がキャッシュレス化を加速
最後に、コロナ禍がキャッシュレス化を加速させたことにも触れておきたい。キャッシュレス決済では現金のやり取りがないため、「非接触(コンタクトレス)」という特徴を有している。そのため、感染防止対策としてもキャッシュレス決済に注目が集まった。
経済産業省によれば、2020年のキャッシュレス決済比率は29.7%だが、どのように変わっていくのか今後に注目したい。
(提供:manabu不動産投資 )
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