実際にはどんなスピンアウトがある?国内外の事例

スピンアウトのイメージをつかむために、ここからは国内外の事例をチェックしていこう。

【国内事例1】企業価値向上を狙ったスピンアウト/東芝

日本の大手電機メーカーである『東芝』は、過去に世界有数の半導体メーカーである『東芝メモリ(現:KIOXIA)』をスピンアウトさせている。さらに、2021年11月には3社分割の実施を公表しており、今後はそれぞれの企業が上場を目指していくシナリオになりそうだ。

東芝がこのような戦略に踏み切った背景としては、「物言う株主」の存在が大きい。同社は株主へのアピールとして企業価値向上を狙っており、その実現のためにスピンアウト・スピンオフを通して事業再編を行おうとしている。

独立をする企業がそれぞれどのような成長を遂げていくか、今後の動向も注目しておきたい国内事例だろう。

【国内事例2】本業ではないビジネスを独立させるスピンアウト/花見煎餅

スピンアウトを実施しているのは、誰もが知る大手企業だけではない。例えば、東京都の老舗せんべい屋である『花見煎餅』は、店内で営んでいた喫茶事業を『喫茶室ルノアール』としてスピンアウトさせた。

喫茶室ルノアールは親会社のコンセプトを活かした形で展開されており、店内には大きな柱時計が置かれるなど、大正ロマン・昭和モダンならではの雰囲気を大切にしている。前述の通り、スピンアウトでは親会社の経営資源を活用することは難しいが、両社の関係性によっては活用できるものも一部あるようだ。

このように、スピンアウトは副業にあたるビジネスを独立させたい場合にも活用できるので、中小企業も経営戦略のひとつとして検討したい。

【海外事例1】イノベーションを目指したスピンアウト/Alphabet

次は、イノベーションの実現を目指したスピンアウトの事例を紹介しよう。Google Inc.のグループ企業である『Alphabet』は、2021年11月に社内のロボットプロジェクトを『Everyday Robots』として独立させることを発表した。

同社のロボット事業はすでに稼働しており、現時点で100台以上の掃除ロボットなどがGoogle本社内を動き回っている。機械学習技術が搭載されたこのロボットは、日々の作業をこなしながら業務ノウハウを自ら習得していくようだ。

つまり、Everyday RobotsにとってGoogle本社は顧客であると同時に、テストの場としても機能している。この事例のように、スピンアウトされた新会社を関係企業(かつての親会社やグループ会社など)がサポートするケースも少なくない。

【海外事例2】入念な準備によって多額の資金調達に成功/Serve Robotics

アメリカの『Postmates』からスピンアウトされた『Serve Robotics』も、ロボット技術によるイノベーションを狙っている企業だ。同社は最先端の自動運転モードを搭載することで、業界をリードできるような歩道走行ロボットの実現を目指している。

この事業には多くの経営資源を必要とするが、同社はすでに約15億円の資金を調達している。資金調達が成功した要因としては、独立前の段階でロボットによる配達実験をするなど、入念な準備を行ってきた点が大きいだろう。