スピンアウトを成功させるには準備が必要

スピンアウトはさまざまな経営目的を果たせるが、切り離した事業を軌道に乗せることは簡単ではない。特にイノベーションを目指して事業を切り離す場合は、経営資源や資金の獲得に向けて入念な準備が必要になる。

スピンアウトを検討している企業は、本記事で紹介した事例も参考にしながら、慎重に今後の計画を立てていこう。

スピンアウトのよくある質問集

スピンアウトを実施すると、会社の組織や事業構造は大きく変化する。場合によっては失敗を招くリスクもあるため、実施前には正しい知識をつけておくことが重要だ。

以下ではスピンアウトのよくある質問集をまとめたので、本記事をおさらいする意味でも最後まで確認していこう。

Q1.スピンアウトはどういう意味?

スピンアウトとは、資本関係を継続させずに会社の一部門を切り離すことである。切り離された子会社は完全に独立する形となるため、親会社のブランド力や販売チャネルなどを利用することはできない。

なお、近年国内でも見られる「バイアウト(※)」は、スピンアウトを実施する手段の一つである。

(※)経営陣や従業員が自社株を買収し、会社再建などを目的として経営権を握ること。

Q2.スピンアウトの使い方は?

経営戦略としてのスピンアウトには、次のような使い方がある。

・従業員が自社株を買収し、特定の部門や事業で独立を目指す
・不採算事業のみを切り離し、事業の選択と集中を実践する
・一部の事業や部門を切り離し、親会社とは別の方向性で成長を目指す

スピンアウトは事業の多角化やビジネスチャンスの獲得につながるため、工夫次第ではさまざまな経営戦略に活用できる。

Q3.スピンアウトのデメリットは?

スピンアウトによって切り離された子会社は、親会社の経営資源を活用できなくなる。完全に独立する形となるため、自社のブランド力や販売チャネル、設備、人材のみでビジネスを展開しなければならない。

また、人間関係や業務環境の変化によって、従業員のモチベーションが低下するリスクもある。そのため、スピンアウトでは会社の独立と並行して、従業員のケアにも取り組む必要があるだろう。

Q4.スピンアウトの成功例は?

無印良品やMUJIブランドで有名な「良品計画」は、スピンアウトの代表的な成功事例である。無印良品はもともと西友のプライベートブランドだったが、1990年のスピンアウトで独立する形となった。

その翌年にはロンドンに1号店を出店するなど、良品計画は独自のブランドや販売チャネルを築き上げてきた。親会社と異なる経営戦略が功を奏し、1998年には東証二部への上場を果たしている。

Q5.スピンアウトとスピンオフの違いは?

スピンアウトとスピンオフの違いは、親会社と資本関係を継続させるか否かである。いずれも会社から一部門を切り離す戦略だが、その中でも資本関係を継続する手法はスピンオフ、継続しない手法はスピンアウトと呼ばれる。

独立後にも親会社のブランド力や販売チャネルなどを活用したい場合は、スピンオフを選ぶことが望ましい。

Q6.スピンオフの目的は?

企業がスピンオフを実施する目的としては、不採算事業の整理や独立、肥大化したグループの再編などが挙げられる。また、新規事業立ち上げのリスクを回避するために、一部門をスピンオフによって独立させるようなケースも見られる。

なお、2017年度の税制改正によって、スピンオフを実施した企業の株主にもメリットが生じるようになった。この変化により、現在では事業承継の手段としてもスピンオフが注目されつつある。

Q7.スピンオフ上場のメリットは?

スピンオフをしてから上場すると、親子上場(※)に比べて切り離された子会社の独立性が高まる。つまり、親会社への依存度を下げられるため、全く異なる方向性で成長を目指しやすくなる。

また、切り離した企業・事業の企業価値を算定しやすくなる点も、スピンオフ上場のメリットだろう。

(※)子会社の株式の大部分を、親会社が保有している状態での上場。

Q8.スピンアウト税制とは?

スピンアウト税制とは、2017年度の税制改正で定められた要件を満たすことで、譲渡益や配当益への課税が緩和される制度である。親会社と資本関係があるケースも含まれるので、本制度は「スピンオフ税制」とも呼ばれている。

本制度によって株主への影響を抑えやすくなったため、以前に比べると国内企業はスピンアウト・スピンオフを実施しやすい状況になった。

著:片山 雄平
1988年生まれのフリーライター兼編集者。2012年からフリーライターとして活動し、2015年には編集者として株式会社YOSCAに参画。金融やビジネス、資産運用系のジャンルを中心に、5,000本以上の執筆・編集経験を持つ。他にも中小企業への取材や他ライターのディレクション等、様々な形でコンテンツ制作に携わっている。
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