スピンオフを実施する3つのメリット
企業がスピンオフを実施するメリットとしては、以下の3つが挙げられる。
1.親会社の経営資源を活用できる
一般的なスピンオフでは、親会社が出資をする形で特定の子会社や事業を切り離す。つまり、両社の資本関係を維持したまま独立するため、切り離された子会社は親会社の経営資源を活用しながら成長を目指すことが可能だ。
ここで言う経営資源とは、設備やシステムなどの目に見えるものだけではない。親会社のブランド力やノウハウ、販売チャネルなども活用できるため、スピンアウトに比べると経営基盤が安定しやすい。
2.経営の自由度が高まる
親会社から離れることで経営の自由度が高まる点も、スピンオフによって生じるメリットだ。子会社として独立すれば、親会社の古い慣習やルールを守る必要がなくなるため、より現代的な企業文化を形成しやすくなる。
したがって、スピンオフはイノベーションを目指す場合や、コア事業に集中したい場合に実施されることもある。
3.株式の価値を下げずに子会社や事業を切り離せる
スピンオフによって分離された子会社の株式は、親会社の株主に分配される形が一般的である。そのため、仮にコア事業を切り離す場合であっても、理論上はスピンオフの実施前後で株式の価値が変動することはない。
一方で、一部の事業を親会社から完全に切り離す場合は、どうしても株式の価値が下がってしまう。切り離す事業の価値が高いほど、分離後の株価低下も大きくなるので、この方法ではコア事業や採算事業などを切り離すことは難しいだろう。
スピンオフにはデメリットやリスクも潜んでいる
スピンオフはさまざまな経営戦略に活用できるが、実は注意すべきデメリットやリスクも潜んでいる。場合によっては従業員にも影響を及ぼすため、計画を立てる際には以下の点も強く意識しておこう。
1.中長期的なプランが必要になる
スピンオフによって切り離された子会社は、親会社の安定した経営基盤から離れることになる。また、親会社のすべての経営資源を活用できるわけではないため、子会社の事業を短期間で収益化させることは難しい。
したがって、スピンオフされた子会社を成長させるには、中長期的な経営プランが必須だ。分離前に比べると事業運営のハードルが上がるので、スピンオフ実施後の影響や変化をしっかりと予測した上で、綿密なプランを立てることが重要になる。
2.従業員のモチベーション低下につながることも
スピンオフを実施する場合は、従業員のケアにも注意を払わなくてはならない。事業や企業を切り離すにあたって、それまで親会社に属していた一部の従業員も移動することになるためだ。
ここで子会社と人材のミスマッチが起こると、従業員全体のモチベーションが低下してしまう恐れがある。場合によってはキャリアプランやライフプランの変更を余儀なくされるため、スピンオフの実施前には各従業員の意志も確認しておこう。