この記事は2022年3月18日に「ニッセイ基礎研究所」で公開された「消費者物価(全国22年2月)-コアCPI上昇率は22年4月に2%へ」を一部編集し、転載したものです。

目次

  1. 1 ―― コアCPI上昇率は前月から0.4ポイント拡大
  2. 2 ―― 物価品目の割合が6割を超える
  3. 3 ―― コアCPI上昇率は22年4月に2%へ

1 ―― コアCPI上昇率は前月から0.4ポイント拡大

消費者物価
(画像=PIXTA)

総務省が3月18日に公表した消費者物価指数によると、2022年2月の消費者物価(全国、生鮮食品を除く総合、以下コアCPI)は前年比0.6%(1月:同0.2%)となり、上昇率は前月から0.4ポイント拡大した。事前の市場予想(QUICK集計:0.6%、当社予想も0.6%)通りの結果であった。

消費者物価
(画像=ニッセイ基礎研究所)

原油高の影響でエネルギー価格の上昇率がさらに高まったことに加え、食料品の伸びが加速したことがコアCPIを押し上げた。

生鮮食品及びエネルギーを除く総合(コアコアCPI)は前年比▲1.0%(1月:同▲1.1%)、総合は前年比0.9%(1月:同0.5%)となった。

コアCPIの内訳をみると、ガソリン(1月:前年比22.0%→2月:同22.2%)、灯油(1月:前年比33.4%→2月:同33.5%)の上昇率は前月とほとんど変わらなかったが、電気代(1月:前年比15.9%→2月:同19.7%)、ガス代(1月:前年比13.2%→2月:同16.5%)が前月から伸びを大きく高めたため、エネルギー価格の上昇率が1月の前年比17.9%から同20.5%へと高まった。

食料(生鮮食品を除く)は前年比1.6%(1月:同1.3%)と8ヵ月連続で上昇し、上昇率は前月から0.3ポイント拡大した。原材料価格の高騰を受けて、食用油(前年比29.8%)、マヨネーズ(同13.1%)、コーヒー豆(同18.6%)などが前年比で二桁の高い伸びを続けているほか、輸入小麦価格の高騰を反映し、食パン(1月:前年比4.0%→2月:同8.2%)、あんパン(1月:前年比2.4%→2月:同5.1%)、カレーパン(1月:前年比5.6%→2月:同9.7%)の伸びが大きく加速した。

コアCPI上昇率を寄与度分解すると、エネルギーが1.47%(1月:1.28%)、食料(生鮮食品を除く)が0.37%(1月:0.30%)、携帯電話通信料が▲1.54%(1月:同▲1.54%)、その他が0.30%(1月:0.16%)であった。

消費者物価
(画像=ニッセイ基礎研究所)

2 ―― 物価品目の割合が6割を超える

消費者物価指数の調査対象522品目(生鮮食品を除く)を前年に比べて上昇している品目と下落している品目に分けてみると、2月の上昇品目数は319品目(1月は311品目)、下落品目数は148品目(1月は154品目)となり、上昇品目数が前月から増加した。上昇品目数の割合は61.1%(1月は59.6%)、下落品目数の割合は28.4%(1月は29.5%)、「上昇品目割合」-「下落品目割合」は32.8%(1月は30.1%)であった。上昇品目の割合が6割を超えたのは、2016年8月以来5年6ヵ月ぶりとなる。

2月は子供用ズボン(秋冬物)、男子用シャツ(半袖)、子供靴など、被服及び履物で下落から上昇に転じる品目が目立った。原材料価格の高騰を受けて、物価上昇の裾野は広がっている。

消費者物価
(画像=ニッセイ基礎研究所)

3 ―― コアCPI上昇率は22年4月に2%へ

2022年2月のコアCPIは、エネルギー、食料品の伸びが高まったことを主因として上昇率が0.4ポイント拡大した。

原油価格(ドバイ)は、ロシアのウクライナ侵攻を受けて、一時130ドル台まで上昇した後、100ドル程度まで下落しているが、前年同時期と比べれば50%以上高い水準となっている。

エネルギー価格の前年比上昇率は20%程度で頭打ちとなるが、当面は10%台後半の高い伸びが続き、コアCPI上昇率への寄与度は1%台半ばの水準を維持するだろう。

消費者物価
(画像=ニッセイ基礎研究所)

今後、上昇ペースの加速が見込まれるのは食料品(除く生鮮食品)である。食料品は2021年7月の前年比0.1%と上昇に転じた後、2022年2月には同1.6%まで上昇率が高まったが、川上段階の物価上昇率に比べれば伸び率は限定的にとどまっている。

足もとの食料品の輸入物価は前年比で20%台後半、食料品の国内企業物価は前年比で3%台の高い伸びとなっている。近年で食料品(除く生鮮食品)の物価上昇率が2%を超えたのは2015年10~12月だが、川上段階(輸入物価、国内企業物価)の上昇率は現在のほうが当時よりも高い。

川上段階の物価上昇を消費者向けの販売価格に転嫁する動きがさらに広がることにより、食料品(生鮮食品を除く)の物価上昇率は2022年度入り後には2%台、夏場には3%程度まで加速するだろう。

消費者物価
(画像=ニッセイ基礎研究所)

コアCPI上昇率は、携帯電話通信料の大幅下落の影響が縮小する2022年4月に2%となった後、エネルギー、食料品に加え、日用品や衣料品などでも価格転嫁の動きが広がることから、2022年中は2%前後の推移が続くことが予想される。


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斎藤太郎(さいとう たろう)
ニッセイ基礎研究所 経済研究部 経済調査部長

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