「最近、ガソリンが高い」とお感じの方は多いと思います。これは日本だけで起きている現象ではなく、世界の原油価格のベンチマークとして知られるWTI原油が2021年の後半から上昇を続けており、世界各国で同様のことが起きています。2022年2月には90ドルを突破し、まだまだ上値を追う展開です。
なぜ、こんなに原油価格が高騰しているのでしょうか。その理由は後述しますが、現状では価格が下がる要因がほとんど見当たりません。つまり今後もガソリン高や物価高が続く可能性が高く、私たち消費者はそのことを踏まえて生活防衛をする必要があります。
レギュラーガソリン価格が1リッター=200円を超える日が現実になるのではないかと囁かれる今、原油高時代を生き抜くための生活防衛術を投資家目線、生活者目線の両方から解説します。
ガソリンが高い!1リッター200円超えも?
自動車に乗る方であれば、折からのガソリン高を実感されていることと思います。1リッターが120円程度だったものが今では170円を超えているのですから、生活者はもちろん自動車や重機などを多く使用する事業者にとっても死活問題です。
ガソリンがこんなに高くなっているのは、その仕入れ値が高騰しているからです。原油価格の世界的なベンチマークであるWTI原油先物のチャートを見てみましょう。
左にある大きな落ち込みは、「コロナショック」と呼ばれる暴落相場当時の下落です。この時はWTI原油が史上初のマイナス価格をつけるほどの安さでしたが、そこからコロナ後を見越した経済回復に伴って価格も上昇、2021年の12月からは急上昇をしています。こうした原油価格の高騰が、そのままガソリンや石油を使用する製品の価格上昇につながっているわけです。
ウクライナ情勢の緊迫化など原油価格を急騰させる要因が多く横たわっていることを考えると、WTI原油が100ドルを突破しても不思議ではありません。円安のために輸入価格が割高になると、本当に「1リッター=200円」が現実になってしまう可能性もあります。
原油価格が高騰している5つの主な理由
原油価格が高騰している理由は、たくさんあります。ここでは主な理由として考えられるものを5つにまとめました。
コロナ禍からの経済回復による需要の急増
航空機や自動車などが動くようになり、工場が稼働を再開すると石油だけでなく電力需要も増大するため、発電のための原油需要も急増します。
産油国が増産に消極的
原油価格は需給で決まります。需要が急増しても産油国が増産をすれば価格は安定しますが、OPECプラスは増産に消極的です。まだコロナ禍が完全に終わっていないのに安易に増産をすると「コロナショック」のマイナス価格のようなことが起きるのではないかとのトラウマもあるようです。
ESG、脱炭素の影響
世界は今、脱炭素に向けて動き出しています。脱炭素に貢献するものを選んで投資をするESG投資が活況を呈しており、油田開発への投資は低調です。まだエネルギーシフトが完了する前の過渡期に原油を増産しづらい環境ができてしまい、それが原油高の原因になるという皮肉な現実があります。
円安
2021年から2022年にかけて円安の傾向が続いており、円安になると輸入価格が割高になります。原油はほぼすべてが輸入資源なので、円安はそのまま価格上昇につながります。
地政学的リスク
戦争などの地政学的リスクが高まると、資源の供給が不安定になるとの警戒感から原油高になる傾向があります。2022年2月11日には、緊迫化するウクライナ情勢の影響でWTI原油が一気に94ドル台をつけましたが、このことは地政学リスクと原油価格の相関性を改めて証明しました。
石油価格が高止まりすると起きること
さまざまな角度から原油高の理由を挙げましたが、これだけ多くの理由があると簡単には下がらないと見るべきでしょう。逆に下げる理由がほとんど見当たらないからです。原油価格がこのままの水準で続くと、家計の負担額が1年間で数万円程度増えると試算するエコノミストもいます。
また、石油価格が高止まりすると石油製品だけでなく物価全体に影響が波及します。折からのインフレ懸念に上乗せする形で価格上昇が起きると、年間数万円では済まないほどの負担増になるかもしれません。
国は補助金によってガソリン価格の抑制に乗り出していますが、小売価格に反映されるかどうかは不透明との声が強く、さらに原油価格が上昇してしまえば補助金の効果も薄れてしまうでしょう。
石油価格高騰時代の生活防衛術
石油価格が高止まりしてしまうことを想定した生活防衛術を、生活者目線と投資家目線の両方で解説します。1つでも多くの対策を講じることで、生活防衛効果は高くなります。
生活者目線での防衛術
・ポイント制度、優待制度を活用する
ガソリンスタンドが顧客囲い込みのために設けているポイント制度を活用しましょう。車検やオイル交換などの付帯サービスを利用したり、LINEの友達登録で割引が受けられたりすることもあります。
・金券ショップを活用
多くのガソリンスタンドでは現金だけでなくQUOカードを使って給油ができます。QUOカードを金券ショップで購入し、それを給油代金に使用すると金券ショップでの割引分だけオトクになります。ある金券ショップでは5,000円券が4,865円、3,000円券が2,895円で販売されているので、毎回の支払いをQUOカードにすることによって節約の効果が上がります。
・クレジットカードで給油、買い物をする
ガソリンスタンドや、それ以外の支払いをクレジットカード決済にすることでポイントが付与されます。ポイント還元率が1%のカードであれば、実質的に1%の割引になります。
・エコ運転、エコ生活
クルマの運転ではエコ運転を心がけ、生活においても省エネを心がけることで節約ができます。エコ運転はクルマの機能によって燃費が表示される車種があるので、これがあるなら瞬間燃費を見ながら運転するとよいでしょう。エコ生活では家族の入浴時間を集約する、空調の最適利用、食品ロスの削減などを心がけるだけで積もれば大きな節約になります。
・冷凍食材の活用
冷凍食品というと調理済みのものを想像するかもしれませんが、冷凍野菜など冷凍の食材も多く売られています。冷凍食材は日持ちするため旬の時期や豊作になったときなどコストが安いときに冷凍されていることが多く、原油高によってハウス栽培の野菜が高騰することからの影響を受けにくいメリットがあります。生野菜が高いとお感じであれば、冷凍野菜の利用を検討してみてください。
投資家目線での防衛術
・原油関連商品を購入してヘッジする
原油価格に連動するETFやWTI原油連動型のCFDなど、これらの金融商品は手軽に購入することができます。こうした商品を購入しておくと原油高になるほど価格が高くなって利益が出るため、生活でのコスト増を相殺することができます。
・外貨買いで円安のヘッジをする
ガソリン価格が高くなる要因の1つに、円安があります。円安がまだまだ進行すると想定するのであれば、FXや外貨預金などで米ドルやユーロなどの主要な外貨を購入しておくと、円安が進行するほど利益が大きくなります。
カナダドルやメキシコペソは産油国の通貨なので、これらの通貨を保有しておくのも原油高に対するリスクヘッジになります。
・株主優待を活用する
株主優待で給油価格の割引をしている企業があります。こうした企業の株を保有しておくと、株主優待を利用して安く給油することができます。
さらに複合的な方法もあります。株主優待でQUOカードを提供している企業は多いので、株主優待でQUOカードをもらい、それを使って給油や買い物をするのも生活防衛になります。
(提供:Incomepress )
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