1 ―― 本稿の問題意識と分析対象:「年金」を含むツイートは、何を契機に投稿されているか?

ツイートとは、Twitterに投稿されるメッセージ(発言)である。文字数が、基本的に全角で140文字(半角で280文字)までと制限されており、「つぶやき」とも呼ばれる。近年はマスコミの報道や国会審議などでも取り上げられているが、ツイートには、熟考の上で投稿されたもの、反射的に投稿されたもの、宣伝、広報、プログラムによって投稿されたものなど、さまざまなものが混在している。

本稿では、「年金」を含むツイートが何を契機に投稿されているかを考察するために、前稿(*1)までに行ったツイートの基礎的な投稿状況やツイートに含まれるリンクに関する分析を2021年11月に発信された「年金」を含むツイートに適用する(図表 - 1)。

後日実施するツイート内容の分析が最終目的であるため、分析対象とするツイートに単純なリツイート(投稿者自身の発言を含まないもの)と同日の他の対象ツイートと冒頭50字が同一なものを含んでいない。言い換えれば、分析対象とするツイートは投稿者自身の何らかの態度が示されている発言、ととらえることも出来よう。

年金,ツイート,分析
(画像=ニッセイ基礎研究所)

以下では、発信傾向の指標として、ツイート数(発言数)、投稿者数、いいね数、リツイート数を確認する。ツイート数は、前述のとおり単純なリツイート等を含んでいない点に注意が必要である。

投稿者数は、分析対象としたツイートのユーザー名を日付などの集計区分ごとに名寄せした件数であり、同一の集計区分において同一のユーザー名で複数のツイートを投稿していても1名と数えている。いいね数とリツイート数は、分析対象としたツイートのいいね数とリツイート数を集計区分ごとに合計した件数である。

いいね数とリツイート数は時間の経過とともに変化するが、データ取得時点の値を集計している。ツイートによって投稿時点からデータ取得時点までの間隔が異なるため、いいね数とリツイート数はツイート間で厳密には比較できない。ツイートへの関心を大雑把に示す指標として参照している。


*1: 中嶋邦夫(2021)「大臣会見でツイート数と投稿者数が急増もリツイート数はごく少数のツイートが左右:「年金」を含むツイートの基礎的な動向分析(2021年9月中下旬)」『基礎研レポート』2021-11-09号
中嶋邦夫(2021)「日本年金機構をめぐる不祥事のほか、積立金に関する前財相の発言も話題に:「年金」を含むツイートに含まれるリンクの基礎分析(2021年10月)」『基礎研レポート』2021-11-30号


2 ―― 「年金」を含むツイートは何を契機に投稿されているか?:前稿までに発見した傾向の検証

2 ― 1|本章の問題意識:前月までに見られた傾向は、今月にも当てはまるか

前稿まででは、2021年9~10月に発信された「年金」を含むツイートに対する分析から、(1)年金に関係するニュースがあると、リンク先のWebページのタイトルに「年金」を含むツイートのツイート数や投稿者数が増える、(2)少数の投稿者のみが数回以上参照しているリンクを含むツイートは投稿日別のツイート数等がほぼ一定水準で推移するし、あるWebサイトを宣伝・周知する目的で投稿されている可能性が高い、(3)いいね数やリツイート数が多い少数のツイートが、いいね数全体とリツイート数全体の大部分を占める、などの傾向を発見した。

そこで、これらの傾向が他の時期にも当てはまるかを確認するために、2021年11月の投稿に対しても前稿までと同じ枠組みの分析を行う。

2 ― 2|投稿日時×リンク先Webページ区分ごとの傾向や特徴: 投稿日別ではニュースへの反応のように見えるが、実際はニュース以外の記事への反応

前述した傾向のうち、(1)年金に関係するニュースがあるとリンク先のWebページのタイトルに「年金」を含むツイートのツイート数や投稿者数が増える、という傾向が普遍的か否かを確認するために、投稿日とリンク先Webページの区分の組み合わせごとの傾向や特徴を見たのが図表2である。

年金,ツイート,分析
(画像=ニッセイ基礎研究所)

まず、ツイート数と投稿者数(図表 - 2の上段と中段)は、11月4日(木)~5日(金)辺りと11月9日(火)~10日(水)辺りで特に多くなっていた。しかし、リンク先のWebページのタイトルに「年金」を含むツイート(「c:Web年金あり」)が特に多かったのは、11月4日のみだった。また、いいね数やリツイート数が特に多いのは11月8日のみで、「c:Web年金あり」との連動は小さかった。

そこで、リンク先のWebページのタイトルに「年金」を含むツイートについて、投稿日とリンク先Webページの区分の組み合わせごとにツイート数等を集計し、参照しているツイート数が多い上位20件を列挙したのが図表 - 3である。

この中で最も多くのツイートから参照されていたのは、11月4日に投稿されたツイートから参照された「就職氷河期世代の暗黒「年金すらもらえない」老後破産の現実味(幻冬舎ゴールドオンライン) - Yahoo!ニュース」であり、2位以下を大きく引き離していた。

10月には年金振込通知書の誤送付などの日本年金機構による不祥事に関する記事が多く参照され、同日(11月4日)などには同機構が発注する印刷で談合が行われた可能性に関する記事もあったが、11月に注目されたのは日本年金機構の不祥事ではなかった。

年金,ツイート,分析
(画像=ニッセイ基礎研究所)

前述の記事は、いわゆるニュース(新しく判明した事実にもとづく記事)ではない。厚生労働省が2020年10月から開始した『就職氷河期世代活躍支援プラン』のWebページを元に就職氷河期世代の定義を紹介し、2020年12月に厚生労働省が公表した平均年金額と2018年9月に経済産業省が産業構造審議会 2050経済社会構造部会で提示した資料を参照した論考である。

同記事のタイトル(テーマ)が参照が多かった背景の1つとして考えられるが、もう1つの背景として考えられるのが、11月3~4日に一定程度の参照を集めている「痛いニュース(ノ∀`) :経産省「現役世代を74歳までとし高齢者を支えれば、2065年まで年金制度を維持できます」 - ライブドアブログ」である。

このブログ記事は、前述したYahoo!ニュースの記事の2ページ目を引用した5ちゃんねる掲示板(旧 2ちゃんねる掲示板)のスレッドを転載したものである。前述した経済産業省の資料は年齢別人口の比を示したものであり年金制度について明示して述べたものではなかったが、このようなタイトルのスレッドが立てられたことで年金に関心を持つ人々から多く参照された可能性がある。

単日の単独のリンク先Webページとして次に多く参照されたのは「内閣支持増47.1% 優先課題「年金・医療」トップ 時事世論調査(時事通信) - Yahoo!ニュース」だったが、この記事を参照したツイートは多くのいいねを集めた一方で、リツイート数は低調だった。

また、11月22~23日には「住民税非課税世帯に10万円「資産ある年金生活者にも給付」の矛盾(NEWSポストセブン) - Yahoo!ニュース」が多く参照されており、Yahoo!ニュースだけでなく発行元のWebサイトに掲載された記事も一定の参照を集めていた。この記事も、いいね数に比べてリツイート数が低調となっている。