本記事は、平川憲秀氏の著書『日本一働きやすい治療院を目指したら、人が辞めない会社になりました』(あさ出版)の中から一部を抜粋・編集しています
「人が辞めない会社」づくりで大切なこと
人が辞める3つの理由
せっかく採用した「人」が辞めてしまう理由には、大きく3つあると私は考えています。
それは、「会社がつらい」「仲間がつらい」「仕事がつらい」。
逆に、この3つのうちの1つでも「好き」と思えるものがあれば、人はその組織で働くことに楽しさを感じ、「辞めたい」とは感じなくなってくれるはずです。
そこで、当社では、この3つのうちのどれかを「好き」になってもらうべく、会社の仕組みづくりを進めてきました。
そして、社員たちとの日々のコミュニケーションや社内アンケートの結果等から、その効果はジワジワと出ていると感じています。
当社の場合は、この3つでいえば、「仲間が好き」が一番多いようです。割合でいえば、社員のおよそ5割が「仲間」への愛着がフックになって、この会社で働いてくれている印象です。次に多いのが「会社が好き」で、これが3割くらい。「仕事が好き」はだいたい2割といった感じでしょう。
当社の場合、平均年齢が25歳(2022年4月現在)と若い人が多い会社ですから、こうした結果になるのは、想定内でした。
たとえば、「会社が好き」と思えるようになるには、ある程度、「組織で働く」経験が必要です。一方で中小企業の場合は「社長が好き」だから「会社が好き」というケースは多い。特に幹部は「この社長だからついていく」パターンがほとんどです。
「仕事を好き」も経験が必要でしょう。経験を積み、必要なスキル等を身につけていき、結果を出せるようになってようやく、「仕事が好き」と感じられるのではないかと思います。
そのため、「会社が好き」、さらには「仕事が好き」と感じられるようになるまで、「仲間が好き」というのがフックとなって辞めないでいてくれる、というのでよいのではないかと私は考えています。
ただ、その一方で、いくら「仲間が好き」でも、「会社がつらい」「仕事がつらい」という気持ちがあると、離職につながりやすくなります。
そこで、これらの「つらい」を生み出さないことも、「人が辞めない会社」づくりでは重要です。それには、「好き」とまではいかずとも、「嫌いではない」のレベルまで持っていくこと。中でも、私が力を入れているのが「仕事」です。
「仕事」は毎日のことです。「会社」よりもその人の心の中で大きな比重を占めているはずです。そのため、「仕事が嫌い」という状態が続けば、だんだんと「会社を辞めたい」も大きくなっていくと予想されます。よほど強烈な「仲間」もしくは「会社」への愛着がなければ、その人は遅かれ早かれ辞めてしまうのがオチでしょう。
そのため、経営者としては、決して社員を「仕事嫌い」にしてはいけない。そう私は肝に銘じています。
「結果」が出れば人は辞めない
では、どうすれば「仕事が嫌いではない」と思ってもらえるか。
その際のキーワードは、「結果が出る」だと私は考えています。
「結果が出る」とは、私の定義では「患者さまから〇をいただけること」です。
具体的に言うならば、自分の施術に患者さまが満足してくださり、次の予約を入れていただくこと。もっと欲をいえば、回数券を購入してくださり、リピーターになって定期的に通ってくださること。
そうしたことが、仕事への次なるモチベーションにつながっていくと私は考えています。
逆に、結果が出せない、つまり患者さまから次の予約をいただけなかったり、回数券の購入を提案しても断られたり……といったことが続けば、仕事をしていても面白くないでしょう。
それどころか、この状態だと会社から求められている個人目標も達成できませんから、会社からの評価も上がらず、当然、昇給もままならなくなります。一方で、同期たちがどんどん結果を出していくとなれば、精神的にもかなり落ち込むと思います。私としては、なんとしてもこの事態を避けたい。
だからこそ、新しく入ってきた社員たちができるだけ早く「結果」が出せるための仕組みづくりに、かなりの力を注いでいるのです。
社員教育を行うのは「結果」を出すため
その柱となっているのが、「社員教育」です。
当社では、新人研修、キャリアアップ研修、スキルアップ研修、組織研修など、年間1,000時間の研修を実施しています。
また、社員教育に投資している費用は、年間で約2,000万円に上ります。
しかも、どの研修も「営業時間内での実施」をルールにしています。そのため、1日かけて学ぶタイプの研修では、参加する社員はその日は研修に集中。施術なしで17時には退社する、となっています。
月に1回、全社員参加で実施している「全体研修」では、丸一日全院を休診します。
治療家が「施術をしない」ということは、その分、売上が減る、ということです。「丸一日全院を休診する」に至っては、1日分の当社の売上がゼロになる、ということです。
そうしてまでも研修を実施する。それくらい当社は教育を重要視しているわけです。
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