本記事は、平川憲秀氏の著書『日本一働きやすい治療院を目指したら、人が辞めない会社になりました』(あさ出版)の中から一部を抜粋・編集しています
「結果」だけでなく「プロセス」でも評価する仕組みをつくる
価値観を体現できている社員を表彰する
社員を評価する仕組みについても、将来的には、今以上に「多様な視点」を取り入れたいと考えています。その1つの試みとして、2022年1月から新しく3つの表彰・褒賞制度を追加しました。
表彰・褒賞制度は、以前からありました。たとえば、次のようなものです。
これらの表彰・褒賞は、どちらかというと「定量面」を重視したものでした。つまり、数字として結果を出した社員や部署にご褒美を出す、というもの。
一方で、数字には出てこない「定性面」、つまり数値化できない部分で頑張っている社員たちを評価する仕組みも必要だとずっと感じていました。たとえば、「目に見える結果」は出ていないものの、日々の仕事において人一倍頑張っている人だったり、ムードメーカーで店舗の雰囲気をつねによくしてくれている人だったり、縁の下の力持ちとしてスタッフ等へのサポートに尽力してくれる人だったり。
そこで、「定性面」を評価するものとして、新しい表彰・報奨制度を創設することにしたのです。具体的には次の3つです。
◆実行賞
年に3回、「考えるより先にまず実践します」を実践し、社内の取り組みに対して前向きに実践・参加した人を選出。全社員の投票によって決定。社員等級を「+5等級」アップ。
◆変化賞
年に3回、「変化こそ成長」の精神で、積極的に「事象の変化」(=患者さまの自由とライバルの勝手)に合わせて、変化できた人を選出。全社員の投票によって決定。社員等級を「+5等級」アップ。
◆貢献賞
年に3回、「患者さま、同僚に感謝し、相手本位で行動」ができた人を選出。全社員の投票によって決定。社員等級を「+5等級」アップ。
この3つの賞は、当社の「経営理念」にある「大切にする価値観」に基づいたものです。経営計画書には、次のように記しています。
【大切にする価値観】 私たちは、自立する人間になる為に、 1.実行:考えるよりもさきにまず実践します。 2.変化:変化こそ成長の精神で挑戦し続けます。 3.貢献:お客さま、同僚に感謝し、相手本位で行動し続けます。
つまり、この「大切にする価値観」を体現できている社員を表彰するものなのです。
これら3つの表彰制度によって、発展途上ではあるものの、「人一倍頑張っている」事実を認めてあげたり、社員本人が「能力」と思っていない部分を「それは能力だよ」と認めてあげたりといったことが可能になります。
そうなれば、これまであまり日の当たらなかった社員も選ばれやすくなるはずです。彼らのモチベーションアップにもつながります。
社員全員が能力を発揮するための仕組み
「2:6:2の法則」と呼ばれるものがあります。
これは、さまざまな集団での典型的な構成比を表したもので、多くの集団は、優秀な人(上位)2割、平均的な人(中位)6割、イマイチな人(下位)2割で構成されている、というものです。
長く経営者をしていると、「なるほどな」と思わされる法則です。そして、私としては、中位と下位の8割の人たちをしっかりとケアしていきたいと考えています。
その人たちが、「仲間」「会社」「仕事」のどれかを好きになってくれて、この治療院で働くことを楽しいと感じてくれる。さらには、ある一定の売上を立て、ある一定の給料を確保できる。こうした状況をつくってあげられれば、彼らはこの治療院に残ってくれる可能性が高くなります。
これまで述べてきた当社の仕組みや制度等は、そのためのものと言っても過言でありません。一定の技術を身につけてもらうために、マニュアルを駆使して社員教育を行う。会員制度等により、「売る」のが苦手な治療家が、施術に専念できる環境をつくる等。ただ、これらの制度は、どちらかというと「社員たちが『目に見える結果』を出せるようにする」をサポートするためのものだといえます。
私としては、それだけでなく、目に見えない部分の頑張りや貢献、能力なども評価する組織にしていきたい。そうすることで、今以上に、社員全員がそれぞれの持つ能力を120%発揮できる、多様性に満ちた組織になっていけるはずです。
ここで挙げた3つの賞が、そうした評価の仕組みをつくっていく第一歩となることを期待しています。
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