本記事は、平川憲秀氏の著書『日本一働きやすい治療院を目指したら、人が辞めない会社になりました』(あさ出版)の中から一部を抜粋・編集しています
「ルール」があるからこそ、社員たちは自分らしくいられる
社内の心理的安全性を高める
一般的に治療院の業界は、体育会系で元気でノリのいい人が多いと思われがちです。ですが、当社の社員は実にさまざまなタイプがいます。実際、会社全体の気質として、どんなタイプの人であろうと受け入れる土壌があります。
社員たちに「エンパワーメント」の特徴をいくつか挙げてもらっても、次のような回答が目立ちます。
「上司や先輩であれ、同期であれ、相談しやすい雰囲気がある」 「社長を含めて、幹部や院長など上の人たちが、こちらの話に耳を傾けてくれるので、質問や意見がしやすい」 「『相手を否定しない』というタイプの人が多い」 「価値観の違いがあるということを前提にしてくれる会社」 「足の引っ張り合いがない組織」 「社員同士がお互いをリスペクトしている」
相手を否定しない。お互いの違いを認め合う。相手の話に耳を傾ける。
こうしたことが当たり前のように実践されている「場所」というのは、それまで「変わっている」と分類されてきた人にとってはかなりの衝撃のようです。
「この会社に入るまで、こんな風に扱ってもらったことはない」とびっくりする社員もいます。
「心理的安全性(サイコロジカル・セーフティ)」という心理学用語があります。
2000年前後から使われるようになったそうですが、この言葉が特に注目されるようになったのは、2016年にグーグル社が発表した生産性に関するある研究結果です。
その研究では、グーグル社が4年間にわたって「生産性が高いのはどのようなチームか」について、自社内の各チームを分析しました。その結果、「心理的安全性が高いチーム」が、もっとも生産性が高いことが明らかになったというのです。
この心理的安全性とは、自分が属する組織において、自分の考えや気持ちを安心して発せられると本人が確信できている状態のことです。
社員たちが挙げるエンパワーメントの特徴を見ると、手前味噌ではありますが、当社はかなり心理的安全性が高い組織だと言えるでしょう。
リーダーの考え、コミュニケーションの仕組みが大切
では、なぜ当社はそうした組織になり得たのか。
その1つに、社長である私や、社員が10名前後だった頃から私と一緒に会社の基礎をつくってきた今のナンバー2やナンバー3の気質もあるのかもしれません。
この3人は基本的に、どんな人でも受け入れるタイプ。人間ですから、相性が「合う・合わない」はありますが、たとえ合わない人であっても、相手を否定したりはしません。「そういう考え方もあるよね」と受け入れます。
こうしたタイプの人間たちが、会社の仕組みづくりをしているので、会社自体の「気質」もそうなっていったのではないでしょうか。そして、そういう気質に合う人はこの会社に残るし、そうでない人は去っていく。そうしたことを繰り返しながら、今に至っているような気がします。
また、社内のコミュニケーションをよくするためのさまざまな仕組みもあります。たとえば、定期的な飲み会、さまざまなチーム活動、社員旅行などです。
こうしたことも、心理的安全性の高い職場づくりに一役も二役も買ってくれています。
ルールの存在が多様性を認め合う土壌を生む
そして、これら以上に、私が当社の心理的安全性の確立に大きな要因になっていると考えているのが、仕事において守るべき明確な「ルール」がある、ということです。
「マニュアル」や「環境整備」、「経営計画書」などは、まさにそうした「ルール」になります。それらに記されている「ルール」をきちんと守っている限り、それ以外のことは誰も何も言いません。上司も「ああしろ、こうしろ」と余計なことは言いません。
エンパワーメントの社員として「やるべきこと」をきちんとやっている。「それ以外に求めるものはありますか?」というスタンスです。
なので、その人がどんなタイプの人であっても、否定したり、「からかったり、悪意を持って相手をいじったり」といったことはしません。「そういうのもありだよね」と受け入れる。そうした雰囲気が当社にはあるように思います。
最近の言葉でいえば、「多様性」を認め合う土壌です。
だから、エンパワーメントでは、それぞれの人が「自分のまま」でいられます。「自分」というものを存分に出しても、誰かに否定されることはありません。自分が「自分のまま」でいられる職場。
こうした企業文化が、当社の「働きやすさ」の根っこの部分にあるのです。
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