本記事は、平川憲秀氏の著書『日本一働きやすい治療院を目指したら、人が辞めない会社になりました』(あさ出版)の中から一部を抜粋・編集しています
エンパワーメントが考える「働きやすさ」とは?
まずはホワイトな労務環境であること
「瞬間最大風速的ではなく、継続的、かつ安定的な幸せ」を、社員たちに実現してもらえる組織。
これが、私が考える「働きやすい会社」です。
ここで言う「幸せ」とは、「物心ともに満たされている状態」と私は定義しています。もう少し具体的に言うなら、日々の生活において安定した暮らしが続けられて、かつ仕事についても、「この治療院で働くのが楽しい」と感じ続けていられる状態。
こうした「幸せ」を、一時的にではなく、継続的、かつ安定的に社員たちに感じ続けてもらえる会社。これこそが、当社エンパワーメントのあるべき姿だと、10年ほど前から組織づくりを進めてきました。
社員が「物心ともに満たされている状態」であり続けるための大前提となるのは、やはり「ホワイト」な労務環境です。
適切な労働時間、適切な休日数、適切な賃金、十分な福利厚生……。
労働基準法などの関連する法律にのっとって、最低限の労務環境を整えていくのは経営者の義務です。
ところが、われわれの属する治療院業界では、こうした労務環境が実現できていないところが少なくありません。
私は「それではまずい」と10年くらいかけて労務環境のホワイト化に取り組んできました。
その結果、現在、「残業月20時間以下」「月9日きちんと休める」「有給休暇年間10日以上取得」「昇給制度によって、賃金が2年で最大7.5万円アップする」「多種多様な福利厚生が整っている」といったことが実現できています。治療院業界では群を抜いてホワイトな会社だと自負しています。
「働きやすい」に必要な3つの「好き」
しかし、労務環境のホワイト化だけでは「働きやすい会社」になるとは私は考えていません。こうしたホワイトな労務環境は、あくまでも法律で定められていることを実現しているにすぎないからです。
そうした環境が整い、さらにその上で「この治療院で働くのが楽しい」と感じてもらうこと。社員たちに「働きやすい」と感じてもらうには、こうした要素が実は重要なカギを握っていると私は思います。
そして、「この治療院で働くのが楽しい」と感じてもらうためのフックとして私が重要視しているのが、「会社」「仲間」「仕事」の3つです。
これらのうちどれかを「好き」になってもらうこと。3つすべてを「好き」になってもらえるのが理想ですが、なかなかそうもいきません。それでも、そのうちの1つでも「好き」だと思えれば、その人はその組織に愛着を感じ、そこで働くことに楽しさを感じてくれます。
そこで当社では、労務環境のホワイト化に取り組みつつ、同時に、社員それぞれが、これら3つのうちのどれかを「好き」になってもらうために、左に挙げるような、さまざまな仕組みづくりを行っています。
・会社のルールを記した「経営計画書」等で会社の「文化」を繰り返し伝え、そこに共感してもらう →会社が好き ・定期的な飲みニケーションの機会や、「チーム治療」の推奨などによって、社員同士がコミュニケーションしやすい雰囲気をつくる →仲間が好き ・充実した社員教育とマニュアル化の徹底等によって、社員一人ひとりが確実に仕事で結果が出せるようにする →仕事が好き
なぜ、社員の幸せにこだわるのか
それにしても社長がなぜ、ここまで社員たちの「幸せ」にこだわっているのか、みなさんはちょっと不思議に思うかもしれません。
これには私の実体験がかかわっている気がします。父が早くに病に倒れたため、母は仕事に、家事に、子育てに疲弊していました。もちろん、家族で旅行することなどもありませんでした。私自身はそうした環境を「不幸」と思ったことはなかったですが、社員とその家族が健康で幸せであることは何よりも大切だと考えています。
もう1つは、社員たちに「いい仕事」をしてもらいたいからです。当社で言う「いい仕事」とは、患者さまから「〇」をいただける治療を提供することです。
そして、そうした治療を提供できれば、その患者さまがリピーターになってくださる可能性が高くなります。
リピーターの患者さまが増えれば、その分、会社の売上は上がっていきます。
売上が上がり利益が出れば、その分、社員たちには賃金や賞与の形で還元されます。
患者さまから「〇」をいただけて、その上、お給料なども上がっていく……。そうなれば社員たちはこの治療院で働くことに幸せを感じてくれるだろうし、仕事もますます楽しくなっていくはずです。
結果、さらに「いい仕事」をしてくれるようになります。
こうしたことは、患者さまの視点に立てば、不調等の解消につながるような「いい施術」が提供できることになります。つまり、患者さまにとっても、われわれ治療家にとってもウイン・ウインの関係です。
この好循環を回し続けたい思いがあるため、私は社員たちの「幸せ」にこだわり、働きやすい組織づくりを続けているのです。
逆に、社員たちがこの会社で働くことに不満や嫌悪、苦痛といったネガティブな感情を日々募らせていては、彼らは決して「いい仕事」をする気にはなりません。
そうなれば、患者さまへの治療もぞんざいになりがちです。そんな治療を受けた患者さまは二度とわれわれの治療院には足を運んでくれません。
その結果、来院される患者さまはどんどん減っていき、それに比例するように売上も利益も減っていく……まさに悪循環のパターンです。
こうした事態に陥らないためにも、私にとって、社員たちの「幸せ」に重きを置いて、働きやすい会社であり続けることは必須事項なのです。
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