この記事は2022年7月7日(木)配信されたメールマガジンの記事「岡三会田・田 アンダースロー(日本経済の新しい見方)『消費の持続的な回復には政府の家計支援が必要』」を一部編集し、転載したものです。
要旨
サービスを中心に消費の回復が鮮明だ。2022年4~6月期の実質GDPが2022年1~3月期のマイナスからプラスに転じる力となるだろう。一方、耐久消費財の消費は供給制約の強い影響を受けて下押されている。賃金上昇前の物価上昇の中、消費の持続的な回復には、供給制約の緩和だけではなく、政府の経済対策による家計支援が必要となるだろう。
経済活動の回復にともない、新規求人数の増加トレンドが有効求人数より加速を始めている。日本でも、労働市場の逼迫から、賃金上昇が生れる方向に動き始めているようだ。
政府の経済対策による家計支援が必要
2022年5月の日銀実質消費指数は前月比+0.7%となった。2022年3月の同+3.4%と2022年4月の同+0.3%に続き、3カ月連続の上昇となった。新型コロナウィルスの感染が抑制され、経済活動が回復しつつあることを反映している。
2022年5月の3M/3Mは+1.5%と、2022年3月の—1.5%から持ち直し、4カ月ぶりのプラスとなった。2022年4~6月期の実質GDPは消費がけん引する形で、2022年1~3月期のマイナス成長からプラスに戻るとみられる。
業界データなどで補強されたプラス指数と実質消費指数の比であらわすマクロ統計では見えにくい、消費の2022年5月の前年同月比は−0.2%とマイナス圏を脱せておらず、まだ消費の回復に広がりがみられないようだ。
再び感染拡大の兆候もあり、賃金上昇前の物価上昇の中、消費の回復が持続するためには、政府の経済対策による家計支援が必要となるだろう。
▽日銀実質消費活動指数
実質耐久財指数と実質サービス指数
2022年5月の実質耐久財指数が前月比−6.1%となり、同年3月の同+1.3%からマイナスに転じた。2022年5月の3M/3Mは—0.6%とまだ弱い。部品不足などで、耐久消費財の納期が遅れていることのかなり強い影響がみられる。
一方、2022年5月の実質サービス指数は前月比+1.3%となり、2022年4月の同+1.3%に続き強かった。2022年5月の3M/3Mは+3.3%と堅調となり、消費の回復をけん引している。
2022年5月のインバウンド指数の3M/3Mは0.0%と、動きはまだまったくない。海外からの旅行者の受け入れが始まっており、夏までにはリバウンドが期待される。
消費者の楽観度合を示す実質耐久財指数と実質非耐久財指数の比の2022年5月の6M/6Mは+1.3%となり、10カ月振りにプラスとなった。
この回復モメンタムの維持には、供給制約が解消していく必要がある。
▽実質耐久財指数と実質サービス指数
PCEデフレーター
名目消費指数と実質消費指数の比で表すPCEデフレーターの2022年5月の前年同月比は+2.4%となり、2022年4月の+2.2%から更に上昇幅が拡大した。PCEデフレーターの2022年5月の3M/3Mでは+1.2%と、5か月連続の上昇となっている。
前年同月比に影響する昨年の携帯電話通信料の引き下げの反動だけではなく、コスト上昇などを転嫁する値上げの動きが幅広くなってきていることを表す。
賃金上昇前の物価上昇が家計の購買力を削ぎ、消費需要を減退させることで、国内のデフレ圧力が徐々に蓄積されることに警戒する必要がある。
▽PCEデフレーター
2022年5月の失業率
2022年5月の失業率は2.6%と、2022年4月の2.5%から若干上昇した。労働市場に戻った労働者が雇用を得るまでのテクカルな動きであり、雇用市場は回復を続けているとみられる。2022年5月の失業者の6M/6Mは—4.6%と安定した減少トレンドが続いている。
2022年5月の有効求人倍率は1.24倍と、2022年4月の1.23倍から5カ月連続で上昇した。2022年5月の有効求人数の6M/6Mは+5.5%と安定した増加トレンドが続いている。
2022年5月の新規求人倍率は2.27倍と、2022年4月の2.19倍から上昇が加速した。2022年5月の新規求人数の6M/6Mは+6.5%と、増加に加速感がある。
経済活動の回復にともない、新規求人数の増加トレンドが有効求人数より加速を始めている。日本でも、労働市場の逼迫から、賃金上昇が生れる方向に動き始めているようだ。
▽失業率と失業者
▽有効求人倍率と新規求人倍率
▽有効求人数と新規求人数
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