この記事は2022年6月20日に「第一生命経済研究所」で公開された「運輸活動は家計消費を見る鏡/a>」を一部編集し、転載したものです。


目次

  1. はじめに
  2. ●運輸・郵便活動指数の特性
  3. 3年ぶりに行動制限なしの夏休み到来で景気上振れも
ショッピング,消費
(画像=maroke/stock.adobe.com)

はじめに

輸送活動は、(1)一般的に荷主や旅客から運賃や料金を収受して輸送を行う鉄道やトラック、バス、ハイヤー、タクシ等の自動車。船舶、航空運輸等の営業輸送活動、(2)自家用自動車による貨物・人員輸送、マイカーによる移動等による自家輸送活動、の2つに大別されるが、いずれも我が国の産業活動や国民生活と密接な関係を持っている。

また、2015年の産業連関表によると、全輸送活動に伴う生産額は 43.5兆円と国内生産額の 4.3%となり、農林水産業(12.9兆円)の 3.4倍近い規模となっている。

このように、輸送活動は我が国の経済活動の中でも重要な位置づけを占めており、輸送活動の動向を把握することは我が国の経済動向を分析する上で欠かすことのできない要素となっている。

しかし、輸送活動を定量化にする方法として、輸送される貨物や人の量を指標とする方法や、輸送される貨物や人の移動距離を指標とする方法など様々である。このため、これらの指標は同一の輸送機関の間で同一のものを輸送する場合の比較には有効だが、例えば航空輸送と船舶輸送といった異なる輸送機関の間での比較や、旅客輸送量と貨物輸送量といった単位の異なるデータ間での比較を行う場合には必ずしも適当とは言えない。

こうした中、経産省が公表する第三次産業活動指数の中には、鉄道、自動車、船舶、航空による輸送量を各輸送機関がそれぞれ創出した粗付加価値額でウェイト付けすることにより算出した運輸・郵便活動指数がある。これを用いることにより異なる輸送機関やデータ間の輸送活動の比較も可能となる。

そこで本稿では、経済産業省の第三次産業指数を基に、運輸・郵便活動と経済全体との関係性を分析する。

●運輸・郵便活動指数の特性

運輸・郵便活動指数の主要な系列は運輸(鉄道、道路運送、水運、航空、倉庫、運輸に付帯するサービス)、郵便、旅客・貨物運送を含む以下の通りとなり、主要な系列のウェイトは以下の通りとなっている。

なお、運輸と運送の違いとしては、鉄道や船・飛行機という大規模な乗り物を使用する事を「運輸」、車・トラックなどを使う事が「運送」とされている。

第一生命経済研究所
(画像=第一生命経済研究所)

そして、経済指標としての運輸・郵便活動指数の特性については、以下の点が指摘できる。

まず、運輸・郵便活動は、どちらかというとGDPのなかでも民間需要の動向に影響を受けており、特に個人消費の動向をよく反映する。実際、運輸・郵便活動指数とGDPとの比較分析をすると、運輸・郵便活動指数の動きは、家計消費の動向とほぼ一致して変動していることがわかる。

第一生命経済研究所
(画像=第一生命経済研究所)

中でも、運輸・郵便活動指数の内訳についてみてみると、各指数の変動の違いから以下の傾向がみられる。

(1) 大分類で見ると、貨物運送が相対的に堅調に推移する一方で、旅客運送や運輸がコロナショックで大きく落ち込んだ水準から回復傾向にある。

(2) 運輸の中分類内訳を見ると、コロナショックに伴うネット通販の拡大などにより道路貨物運送や倉庫が底堅く推移する一方、それ以外の業種はコロナショック以降の大きな落ち込みから徐々に回復する傾向にある。

第一生命経済研究所
(画像=第一生命経済研究所)
第一生命経済研究所
(画像=第一生命経済研究所)

このように、第三次産業活動指数の運輸・郵便活動指数は、主として個人消費の経済指標として経済動向を把握するだけでなく、各種の運輸活動相互間の比較もできる。そして、特に運輸・郵便活動指数の伸びを要因分解すると、航空運輸の回復が最も大きいことがわかる。

少なくともこれまでは、原油高のマイナスはあるものの、行動制限緩和の好影響が上回ってきたということだろう。こうしたことから、運輸・郵便活動指数は、内閣府の消費総合指数と同様にマクロの経済指標の中でも個人消費の動向を把握するために用いることができるだろう。

3年ぶりに行動制限なしの夏休み到来で景気上振れも

以上より、運輸・郵便活動が膨らめばマネーも動くことになる。つまり、個人消費の動向を読む時は運輸・郵便活動指数を見ればいいことがわかる。こうしたことからすれば、第三次産業活動指数の運輸・郵便活動指数は四半期毎のGDPの中でも特に個人消費を予測するうえで重視すべきだろう。

となれば、高速道路の交通量やカーナビのデータなどが一般的に活用できるようになれば、もっと早く的確に運輸の活動状況を把握し、経済予測につなげられるだろう。そして、全国的な交通量の動向がわかれば、日本経済の状態がすぐさまわかるといえそうだ。

また、交通量と個人消費の関係が深いという意味では、渋滞が緩和されれば利用者にとって便利になるだけではなく、交通量の増加を通じた個人消費の増加を通じて日本経済に貢献することになりもそうである。

一方、足元のガソリン高が続けば、ヒトやモノの流れを鈍らせ、景気の足を引っ張る面も無視できないだろう。

ただ、2022年1~3月期は実質GDPが前年同期比+0.5%だった一方で、家計消費は同+2.5%、運輸・郵便活動指数は同+2.8%とGDP以上の回復を示している。恐らく2022年4~6月期は3年ぶりに行動制限のないGWとなったため、更なる回復が期待できるだろう。

となれば、今年の夏休みも3年ぶりに行動制限が発出されることがなければ、一方で水際対策の緩和もあり、燃料高の中でも今夏の運輸関連業界の景気は上振れする可能性が高いだろう。

第一生命経済研究所 調査研究本部 経済調査部 首席エコノミスト 永濱 利廣