この記事は2022年7月21日に「ニッセイ基礎研究所」で公開された「消費者物価(全国22年6月)-コアCPI上昇率は、夏場以降に2%台後半へ」を一部編集し、転載したものです。
コアCPI上昇率は3ヵ月連続の2%台
総務省が7月22日に公表した消費者物価指数によると、22年6月の消費者物価(全国、生鮮食品を除く総合、以下コアCPI)は前年比2.2%(5月:同2.1%)となり、上昇率は前月から0.1ポイント拡大した。事前の市場予想(QUICK集計:2.2%、当社予想も2.2%)通りの結果であった。
物価高対策の影響でエネルギー価格の上昇率が鈍化したが、食料(生鮮食品を除く)の伸びが高まったことがコアCPIを押し上げた。
生鮮食品及びエネルギーを除く総合(コアコアCPI)は前年比1.0%(5月:同0.8%)、生鮮食品が前年比6.5%と高めの伸びが続いていることから、総合は前年比2.4%(5月:同2.5%)と、コアCPIを上回る伸びが続いている。
コアCPIの内訳をみると、ガス代(5月:前年比17.0%→6月:同17.1%)の伸びは前月とほぼ変わらなかったが、電気代(5月:前年比18.6%→6月:同18.0%)、ガソリン(5月:前年比13.1%→6月:同12.2%)、灯油(5月:前年比25.1%→6月:同23.4%)の伸びが鈍化したことから、エネルギー価格の上昇率は5月の前年比17.1%から同16.5%へと鈍化した。ガソリン、灯油は物価高対策として実施されている燃料油価格激変措置(石油元売り会社への補助金)で価格が抑制されている。
食料(生鮮食品を除く)は前年比3.2%(5月:同2.7%)となり、上昇率は前月から0.5ポイント拡大した。消費税率引き上げの影響を除けば、09年2月(前年比3.3%)以来の3%台となった。原材料価格の高騰を受けて、食用油(前年比36.0%)、マヨネーズ(前年比25.1%)、しょう油(前年比10.0%)などが前年比二桁の高い伸びとなっているほか、麺類(5月:前年比5.1%→6月:同9.7%)、菓子類(5月:前年比3.2%→6月:同4.0%)なども前月から伸びを高めた。
さらに、一般外食は、食料工業製品に比べて人件費の影響を受けやすいこともあり、相対的に低い伸びが続いていたが、原材料費の大幅上昇を価格転嫁する動きが広がり、3月の前年比1.0%から6月には同2.8%とここにきて上昇ペースが急加速している。
コアCPI上昇率を寄与度分解すると、エネルギーが1.27%(5月:1.31%)、食料(生鮮食品を除く)が0.75%(5月:0.61%)、携帯電話通信料が▲0.39%(5月:同▲0.39)、その他が0.58%(5月:0.58%)であった。
物価上昇品目の割合は7割に近づく
消費者物価指数の調査対象522品目(生鮮食品を除く)を前年に比べて上昇している品目と下落している品目に分けてみると、6月の上昇品目数は365品目(5月は354品目)、下落品目数は115品目(5月は124品目)となり、上昇品目数が前月から増加した。上昇品目数の割合は69.9%(5月は67.8%)、下落品目数の割合は22.0%(5月は23.8%)、「上昇品目割合」-「下落品目割合」は47.9%(5月は44.1%)であった。
食料(生鮮食品を除く)の上昇品目割合は80%に近づいている(4月:72.6%→5月:73.7%→6月:77.1%)、原材料価格の高騰を販売価格に転嫁する動きはさらに広がっている。
コアCPI上昇率は夏場以降に2%台後半へ
これまでコアCPIを大きく押し上げてきたのは、原油高に伴うエネルギー価格の大幅上昇だったが、ここにきて上昇ペース加速の主因は食料品(除く生鮮食品)へと移りつつある。
食料品は21年7月に前年比0.1%と上昇に転じた後、22年6月には同3.2%まで上昇率が高まったが、川上段階の物価は、輸入物価が前年比で30%程度、食料品の国内企業物価が前年比で4%台後半の高い伸びとなっている。川上段階の物価上昇を消費者向けの販売価格に転嫁する動きがさらに広がることにより、食料品(生鮮食品を除く)の物価上昇率は夏場には4%程度まで加速する可能性が高い。
物価高対策(燃料油価格激変緩和措置)がガソリン、灯油価格の上昇を抑えていることに加え、電気代、ガス代については、燃料費の変動を料金に上乗せする燃料費調整制度の上限に達した会社が増えているため、エネルギー価格の前年比上昇率は徐々に鈍化する公算が大きい。一方、円安による物価上昇圧力が高まる中で、食料品に加え、日用品や衣料品などでも価格転嫁の動きが広がることが見込まれる。
コアCPI上昇率は、夏場以降に2%台後半まで高まることが予想される。
(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
斎藤太郎(さいとう たろう)
ニッセイ基礎研究所 経済研究部 経済調査部長
【関連記事 ニッセイ基礎研究所より】
・世帯属性別にみた物価高の負担と過剰貯蓄
・物価高で実質賃金の重要性が増す中、エコノミストの判断を惑わす毎月勤労統計
・貿易統計22年6月 ―― 4-6月期の外需寄与度は前期比0.2%程度のプラスに
・雇用関連統計22年5月 ―― 失業率は上昇したが、雇用情勢の改善傾向は続く
・鉱工業生産22年5月 ―― 予想外の大幅減産、中国のロックダウンの影響が幅広い業種に及ぶ