本記事は、眞山徳人氏の著書『会計士・税理士のための伝わるプレゼン術』(中央経済社)の中から一部を抜粋・編集しています。

資料,カラー,装飾,デザイン
(画像=metamorworks/stock.adobe.com)

逆効果な演出にならないために

資料作りにおける「演出」の在り方

PowerPoint等のソフトウェアを使ってプレゼンテーション資料を作る場合、以下のような細かい設定が必要になります。これらをひとくくりにしてプレゼンテーション資料における「演出」と呼ぶことにします。

  • フォントの種類・色・サイズ
  • オートシェイプの種類・色・サイズ・配置
  • 貼り付けた画像の書式設定
  • 表やグラフの書式設定
  • アニメーションの設定

これらの演出は、プレゼンテーションの本筋から外れた部分であるにもかかわらず、ひとたび調整を始めてしまうと、いつの間にか細かい設定、それこそミリ単位の調整に気を取られて時間を浪費してしまうことがしばしばあります。

しかも、労力を割いた結果、多少なりとも資料の見栄えが向上するならまだしも、むしろ過剰な演出や多彩すぎる色づかいが、かえって逆効果になってしまうことすらあるので厄介です。かといって、これらの設定をおざなりにしてしまうと、資料全体が「手抜き」に見えてしまい、聞き手がプレゼンテーションに集中できなくなってしまう恐れもあります。

そういった事情を踏まえ、基本的なスタンスとして以下のことを意識して、演出の在り方を解説しています。


  • 手間を減らす…… 本記事を読むことで、演出について考える時間を削減できるようになる。
  • 効果を上げる…… 本記事を読むことで、資料の見栄えを向上できるようになる。

裏を返せば、「デザイン性の高いページを時間をかけていかに作っていくか?」といった解説はしていません。私たちはあくまで税務・会計の専門家であり、プレゼンテーション資料の品質に割くエネルギーは片手間で実現できる範囲で十分だからです。

また、あくまでも会計士・税理士のプレゼンテーションにおいて必要な考え方を身につけていただくことを目標としています。そのため、PowerPointやKeynoteといったプレゼンテーション用のソフトの細かな操作方法についての解説は行っていません。

配色は「基本色+強調色」で十分

突然余談になってしまいますが、ここではあえてモノクロで制作していただくことにしました。それは、少なくとも会計士・税理士のプレゼンテーションにおいて、配色が及ぼす影響はごく限定的だと筆者が考えているからです。

仮にフルカラーで作ったとすれば、配色について丁寧な解説を加えられる可能性は確かに高まります。ただ、その解説をするために上昇してしまうであろう書籍の価格差に見合うほどの価値はきっとないだろうと思っています。価格差といっても数百円でしょうが、その価値すらもないと言って過言ではないほどです。

プレゼンテーション資料を作る際の配色のルールは、最低限、以下の3点だけで十分です。

─配色のルール─
  • 資料全体の色調を方向付ける「基本色」を決める(青系・緑系・赤系など)。表・グラフなどのチャートを作成する際にはその基本色に沿った色選びをする。PowerPointの場合、図形の書式設定における「テーマの色」の中から基本色を決めると便利
  • 基本色に加え、特に重要な箇所に用いるための「強調色」を決める(基本色と並べたときに十分目立つ色を選ぶとよい)。強調色は多用しすぎないようにする。1つのページに1つのメッセージを置くのであれば、強調色が使われる場面は多くても1つのページに1か所のはず。
  • 資料中の文字は原則として(重要なところは強調色を用いても構わない)。

上記のルールに沿った場合、配色のために細かな調整のための作業をする手間はかなり削減されると思いますが、唯一丁寧な設定が必要になるのがグラフです。ExcelやPowerPointでは、グラフの種類を指定すると、個々のデータ系列ごとに自動で色を割り当ててくれますが、必ずしもプレゼンテーション資料全体の色調に沿ったものになるとは限りません。棒グラフなどは基本色と同じ色調で統一して濃淡だけを分け、必要なところだけ強調色を用いるなどの工夫をすると良いでしょう

=会計士・税理士のための伝わるプレゼン術
眞山 徳人
公認会計士。
2004年慶應義塾大学経済学部卒業。2005年公認会計士試験合格。監査法人トーマツ(現・有限責任監査法人トーマツ)を経て、2016年に独立。合同会社フォルケCEO。
その他数社でCFOや監査役を務め,マイナビ会計士インタビュアーやCPA-learning等の経理スクール講師などの顔も持つ。JAPAN MENSA会員。
主な著書に『一番やさしい儲けと会計の基本』(日本実業出版社)、『スピーチ・ツリー ~どんな場面でも人前でブレずに「話せる」技術』(洋泉社)等がある。
2016年に行われた日本最大のスピーチコンテスト全国大会(トーストマスターズインターナショナル主催)にて日本一に輝いて以来、プレゼンテーションの専門家としての活動も行っており、小学生から経営者に至るまで、指導実績は延べ3万人を超える。
2022年2月2日YouTubeチャンネル「眞山徳人のプレゼン相談室」開設。

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