本記事は、眞山徳人氏の著書『会計士・税理士のための伝わるプレゼン術』(中央経済社)の中から一部を抜粋・編集しています。
ジョブズにならなくてもいい……
会計士・税理士向けのプレゼン処方箋
資料作りが8割、でも……
ここからは、第Ⅱ部「伝え方編」と題して、プレゼンテーション当日の話し方や姿勢・表情といった部分に関するアドバイスをしていきます。
具体的には、以下のようなものです。
- 【視覚的な部分】
- 顔の表情
- 視線
- 身振り
- 手振り
- 姿勢
- 【聴覚的な部分】
- 声の高さ
- 声の大きさ
- 話すスピード
- 間(ま)
- 口癖
会計士・税理士のプレゼンテーションにおいて、「伝え方」よりも「資料作り」のほうが重要であることは確かです。しかし、プレゼンテーションに関して寄せられるご相談の多くが、これまで扱った「どうやって分かりやすい資料を作るか?」よりも、第Ⅱ部で扱う「どうしたら上手く話せるか?」という点に集中していることも確かです。
せっかく、第Ⅰ部を通して分かりやすい資料の作り方を学んだのですから、その資料の良さを最大限に活かしたプレゼンテーションにしたいもの。ここからはがらりと思考を変えて、ご自身が今まさにプレゼンテーションの場面に立っていることを想像しながらお読みいただけたらと思います。
さて、アメリカの心理学者であるアルバート・メラビアンが見つけた「メラビアンの法則」をご存じの方も多いことでしょう。私たちのコミュニケーションには、3つの要素があります(図表6-1)。
例えば、誰かが空腹を訴えている場合を想像してみてください。
「お腹が空いた」という言葉だけでなく、物欲しそうな声や、お腹をさする仕草からも、その人の空腹感を感じることができます。この例は、視覚情報・聴覚情報・言語情報のすべてが「空腹」という同じ情報を発しているので、聞き手が混乱することはほとんどないでしょう。
しかし、中には、それら3つが相反しているケースがあります。企業の不祥事が報じられると、しばしば経営陣による謝罪会見が開かれます。ニュース等でその会見の様子を見ると、彼らは紛れもなく「申し訳ありませんでした」と言っているのに、反省の色が感じられないことも少なくありません。
なぜ私たちが反省の色を感じ取れないかというと、私たちは以下の比率で相手から出ているサインを受け取っているからです。
すなわち、たった7%の「申し訳ありませんでした」という言葉よりも、残りの93%の話し方や態度のほうから、私たちは反省の色なしという判断をしてしまうのです。
プレゼンテーションの場面でも、そのようなことが起こり得ます。
「消費税の仕組みはそれほど複雑ではありませんから、安心してください」というセリフを、伏し目がちで猫背な人が、か細い声で言っていたら、どう思うでしょうか。たいていの聞き手は「そんな言われ方したらかえって不安になるわ…」と思ってしまうはずです。
せっかくの資料作りを無駄にしないためには、「伝え方」もおろそかにはできないのです。とはいえ、私たちはあくまでも会計・税務の専門家であって、プレゼンテーションの専門家ではありませんし、そうなる必要もありません。例えば、今よりも良い声でプレゼンテーションをしたいと思ったからといって、わざわざボイストレーニングに通う必要があるかというと、決してそんなことはありません。
ここからお伝えする「伝え方」のノウハウは、ほとんどが以下のような3つのポリシーに則ったものです(図表6-2)。
2004年慶應義塾大学経済学部卒業。2005年公認会計士試験合格。監査法人トーマツ(現・有限責任監査法人トーマツ)を経て、2016年に独立。合同会社フォルケCEO。
その他数社でCFOや監査役を務め,マイナビ会計士インタビュアーやCPA-learning等の経理スクール講師などの顔も持つ。JAPAN MENSA会員。
主な著書に『一番やさしい儲けと会計の基本』(日本実業出版社)、『スピーチ・ツリー ~どんな場面でも人前でブレずに「話せる」技術』(洋泉社)等がある。
2016年に行われた日本最大のスピーチコンテスト全国大会(トーストマスターズインターナショナル主催)にて日本一に輝いて以来、プレゼンテーションの専門家としての活動も行っており、小学生から経営者に至るまで、指導実績は延べ3万人を超える。
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