この記事は2022年9月14日に「月刊暗号資産」で公開された「法制審議会が組織犯罪処罰法改正要項を法相に答申 暗号資産の没収を可能に」を一部編集し、転載したものです。


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(画像=mnimage/stock.adobe.com)

法制審議会(会長:井田良中央大学教授)が12日、犯罪収益として得た暗号資産(仮想通貨)やその他デジタル資産を没収することができる組織犯罪処罰法改正の要項を葉梨康弘法相に答申したことがわかった。日本経済新聞などが報じた。

これを受け、政府は関係法改正案の国会提出に向け準備を進める。

現行法では、犯罪収益が「不動産もしくは動産または金銭債権」の場合、「没収できる」と規定されている。今後、デジタル化の進展に伴い、犯罪収益の形態は多様化されると考えられていることから、着手した格好だ。

現状、世界に目を向ければマネーロンダリング(資金洗浄)に暗号資産が悪用されるケースが散見される。要項では、今後、様々なデジタル資産が増えることを想定し、形態を限定せず、あらゆる犯罪収益の没収を可能とする文言が盛り込まれる見込みだ。

今年6月、当時の古川禎久法相が暗号資産の取扱いについて法制審に諮問していた。その際、法務省が組織犯罪処罰法の改正に取り組む方針を固めたことが明らかになっている。

現行法では暗号資産の位置付けが曖昧なため、犯罪組織が不正に取得した資産を暗号資産に転換した場合、没収できない恐れがある。ビットコインなどの暗号資産は電子データとして扱われており、不動産や動産等に当てはまらない上、発行主体が明確ではない場合もあるため、金銭債権をはじめ没収可能ないずれの資産にも該当しないとされている。法務省によれば、複数の裁判で実際に「没収可能な金銭債権には当たらない」との判決が下されたこともあったという。

こうした背景から、法務省は組織犯罪処罰法の法改正を行いマネーロンダリング(資金洗浄)対策を強化することを狙っている。警視庁のまとめによると、マネロンの疑いがあるとして金融機関などが2021年に届け出た取引のうち、暗号資産交換業者の関連は1万3,540件に上り、前年比で5,517件増加した。

デジタル化をはじめ、次世代を見据えた政策を打ち出す岸田内閣としてもこれらに関連した法改正は急務と言える。すでに金融庁が2023年度税制改正要望に、自社で保有する暗号資産への法人税の課税方法見直しを盛り込むなどの動きがあることから、今後政府はこうした提言等をもとに法改正を行っていくものとみられる。(提供:月刊暗号資産