手数料の安さや米国株式自体の成長力により、米国ETFに関心を持つ人が増えています。その中でも高配当ETFは分配金利回りの高さが魅力で、FIRE(経済的自立と早期リタイア)を目指している人にも高い人気があります。
数ある米国高配当ETFの中でも株価の成長力や分配金の安定感、分散性の高さなどメリットが多いのがVYMです。
本記事では、人気の高配当米国ETFの中でも代表格ともいえるVYMについて投資家目線で分かりやすく解説します。また、VYMを資産形成に役立てるための具体的な方法についても紹介します。
VYMの基礎知識
VYMとはティッカー(米国市場で銘柄を識別するために付けられている記号のこと)で、正式名称は「バンガード・米国高配当株式ETF(Vanguard High Dividend Yield ETF)」といいます。
米国の主要な企業のうち配当が高い443社で構成されるFTSEハイディビデンド・イールド・インデックスという指数に連動するように、米国の資産運用会社であるバンガード社が運用しています。経費率(日本の投資信託でいう信託報酬のこと)がとても安く、0.06%です。
2022年9月17日現在で純資産額は日本円にして約6.6兆円という、怪物級のETFです。
VYMの魅力4つ
VYMには、主に4つのメリットがあります。これらのメリットが世界中の投資家を強く惹きつけています。
分配金利回りが高く、安定している
米国の主要銘柄のうち配当利回りが高いものを中心に運用しているため、VYM自体の分配金利回りも高めです。おおむね3%台で推移しており、VYMを保有しているだけで3%台の資産運用ができます。
分散効果が高くリスクに強い
VYMがベンチマーク(連動する対象)にしている指数は米国の主要な443社の株価を指数化したものです。これにより、成長力かつ配当性向の強い米国株443社に分散投資しているのと同じ効果が得られます。
400社以上の銘柄で運用しているため分散性が高く、もし一部の企業にリスクが生じたとしても全体への影響は軽微です。リスク分散は投資の基本ですが、VYMを1本保有しているだけで分散投資を実践できます。
コストが極めて安い
0.06%という経費率は、ほぼ無料に近いレベルといってよいでしょう。他にも米国にはSPYDやHDVといった経費率の安い高配当ETFがありますが、VYMはこれらと比較しても最も経費率が安く、低コストでありながら高い分散効果と分配金利回りが得られるのは投資家目線で高いメリットといえます。
株価そのものに成長性がある
高配当ETFは株価の成長よりもインカムゲイン、つまり配当収入に重きを置いているので、株価の上昇にはあまり期待しないのが一般的な考え方です。しかしVYMは株価の成長性もあるため、保有しているだけで配当収入と株価成長の両方が期待できます。
VYMの株価成長力は、長期チャートを見ても一目瞭然です。
ちなみに2021年の1年間では22.45%の上昇となっており、米国の強い株価成長力を味方につけられる投資商品といえます。
VYMで資産形成をする方法
短期的に見ると、VYMはおおむね100ドルから110ドルの近辺を推移しています。他の米国高配当ETFと比べると株価は高めです。1ドルが140円でVYMが100ドルの時に買ったとすると1株あたり1万4,000円です。
米国株はETFも含めて1株単位で売買ができるため、これが最低取引単位となります。VYMを資産形成に役立てるには、まず購入できる範囲で1本から数本というレベルで少しずつ買い進めていくのがよいでしょう。
毎月一定額分ずつ購入し続ける手法はドルコスト平均法と呼ばれ、長期的な価格変動リスクを平均化できるメリットがあります。積立投資をしている期間も3ヵ月に1回の配当収入があるため、それも加えて再投資をしていくと加速度的に資産が増えていくことが期待できます。
しかもVYMには株価成長性があるので、VYMの価格が上昇していれば資産規模はさらに拡大する可能性があるでしょう。
VYM投資でFIREを目指せる?
最近ではFIREといって資産運用による収入で仕事を早期リタイアするといった考え方が流行しています。FIREでは年利4%の運用が前提となっているため、VYMの利回りでは若干少ないのですが、その分VYMには株価の成長性があるため、配当利回りの低さを補って余りある資産形成が期待できます。
年利4%の運用益だけで生活をする、もしくは最低限の仕事を続けながら運用益を生活の足しにするというのが、FIREの基本的な考え方です。運用益だけで年間400万円の生活資金を求めるのであれば、単純に1億円の資産が必要になります。最低限の仕事を続ける前提で資産規模を半分にしたとしても、5,000万円の資産を築く必要があります。
いずれにしても数千万円以上の資産形成が必要であることに変わりはないので、VYMを活用してFIREの達成を目指すのであれば、株価成長力と高配当という2つのメリットをフルに活かす必要があります。
2009年と比べると、VYMの株価は5倍以上に成長しています。ここから5倍に株価が成長して500ドルを超えるかどうかは分かりませんが、少なくとも倍以上の株価成長があっても不思議ではありません。
株価成長に過度の期待をするのはリスクが高いですが、現在の配当水準が継続する可能性は高いので、VYM投資でFIRE達成を目指すことには十分現実味があります。
仮にVYMの株価上昇によって資産が倍以上に成長したら、次は株価成長よりも配当重視の投資にシフトしていく必要があります。実際にFIREを達成したらそれ以上に資産を成長させる必要はなく、むしろ毎年得られる配当収入を大きくすることのほうが重要だからです。
株価の成長力よりも配当利回りを重視している米国ETFにはSPYDやHDV、さらにQYLDなどがあります。VYMによる資産形成を達成したら次に検討したいこれらのETFについて、特徴を簡単に解説します。
ETFのティッカー | 特徴 |
---|---|
SPYD | S&P500の構成銘柄のうち配当が高い銘柄を機械的に上位80銘柄選定し運用する。経費率は0.07% |
HDV | 財務健全性の高い米国の高配当銘柄を中心に運用する。 経費率は0.08% |
QYLD | ナスダック100指数のコール・オプションを売却して得た利益を分配する。経費率は0.6% |
HDVは高配当ETFの中でも安全志向なので配当金利回りはVYMよりも低くなることがありますが、それ以外のSYPDやQYLDについては配当利回りがとても高く、資産形成後の「分配金生活」を豊かにするのに有用です。
その一方でこれらのETFには株価成長力があまりなく、「攻め」の要素が含まれているVYMに対して「守り」重視のETFといえるでしょう。
なお、QYLDはカバードコール戦略という積極的な運用をしており、それゆえに経費率が高くなっています。QYLDはナスダック100指数の上昇分を現金化して分配金として還元するイメージのETFなので、ナスダック指数が成長力を失うと分配金も減少し、利回りが低くなることには注意が必要です。
(提供:Incomepress )
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