建設業界の人材難を乗り越えるカギは「選ばれる」こと【三和建設インタビュー】

右肩上がりの成長を遂げてきた建設業界。一方で高齢化による職人不足が深刻化していくと言われています。さらに2024年には労働基準法の改正によって労働時間の規制も始まるなど、働き方改革やDXが急務。そんな建設業界の今について、森本尚孝氏(三和建設株式会社 代表取締役社長)にインタビュー。

▽お話をお聞きした人

森本 尚孝氏(三和建設株式会社 代表取締役社長)
1971年京都府生まれ。1996年大阪大学大学院工学研究科建築工学専攻修了。 大手ゼネコンを経て、2001年三和建設株式会社入社、2008年同社 代表取締役社長就任。 昭和22年の創業以来70年以上にわたり、サントリー山崎蒸溜所をはじめとした大手企業や中小中堅企業の工場・倉庫・事務所などを中心とした建築事業を行う。 「働きがいのある会社ランキング」に7連続ベストカンパニー入り、第7回「日本でいちばん大切にしたい会社大賞」審査委員会特別賞を受賞、2017年関西経営品質賞ブロンズ賞受賞。 一級建築士、1級建築施工管理技士、早稲田大学 環境総合研究センター 招聘研究員、人を大切にする経営学会 常任理事。

課題解決の糸口は提供価値の向上

――まず、現在の建設業界は全体的にどのような課題を抱えているのでしょうか。また、その中で三和建設が特に実感しているものはございますか?

大きく2つの課題があると思っています。1つは受注産業であることです。毎年、売上がリセットされますし、決まったお客様から決まった仕事を毎年、安定的にいただけるわけではない業態です。そのため、受注の枯渇が経営上の一番のリスクになるのは昔も今も変わりません。

もう1つは、仕事を際限なく取ることができないということです。社内外にいる人材の質・量に売上が制約されるため、商社や小売業のように売れば売るほど損益分岐点が上がっていくわけではありません。

これに関連して人材難の問題もあります。社員はもちろん、協力会社が現場に送り込んでくれる職人さんや専門技術者に関しても人材の確保に苦慮しています。さらに、昨今は資源高も経営を圧迫する材料になっています。

中でも当社が特に感じているのは人材難です。社員も専門工事会社の方も確保が非常に難しいですし、今後はさらにその傾向が強まると思います。

――人材難が続く理由はどこにあるのでしょうか?

私見ですが、この業界は一人前になるのにかなり時間がかかります。若く優秀な人材であっても、ベテランを追い越して成果を上げるというのが難しい構造になっています。修行をし、時間をかけて何かを作り込んでいく作業よりも、効率性や生産性を重視する世の中になっているため、業界の特性がそもそも合わない、耐えられないという人が増えているような気がしています。

――そうした課題の解決に向けてどのような取り組みを行い、どのような成果が表れているのでしょうか?

「いかに選ばれる存在になるか」を重要視しています。まず、お客様から選んでいただかないと付加価値の高い仕事を獲得することができません。それでは利益が上がらず社員や協力会社に還元することもできません。

そして、三和建設が存続するためには、社員から選ばれ続ける必要があります。採用の観点では学生や中途採用のマーケットの中から選ばれなければなりません。職人さんに作業所へ来ていただくために、サプライヤーから選ばれることも重要です。

こうした選ばれる存在になるために、いかに同質化を避けた取り組みをしていくかを重視しています。他社と同じことをしていては、知名度の高い企業や給料の高い企業に勝てなくなります。

受注やマーケティングの観点では、我々は食品工場や危険物倉庫など、分野を絞り込むことで専門家としての価値を高める行動をしています。

そして、人材マーケティングの観点では、「人を大切にする経営」を理念の最上位に置き、福利厚生や社員教育、つながりを深めるための社内文化の醸成など、社員や社員になり得る候補の方から会社を選んでもらうための取り組みをしています。

協力会社から選ばれるためには、適正な金額で発注することが受注に返ってくると思います。そういうことも含めて、いかに各ステークホルダーから選ばれる存在になるかに注力しています。

事業承継・M&Aをご検討中の経営者さまへ

THE OWNERでは、経営や事業承継・M&Aの相談も承っております。まずは経営の悩み相談からでも構いません。20万部突破の書籍『鬼速PDCA』のメソッドを持つZUUのコンサルタントが事業承継・M&Aも含めて、経営戦略設計のお手伝いをいたします。
M&Aも視野に入れることで経営戦略の幅も大きく広がります。まずはお気軽にお問い合わせください。

【経営相談にTHE OWNERが選ばれる理由】
・M&A相談だけでなく、資金調達や組織改善など、広く経営の相談だけでも可能!
・年間成約実績783件のギネス記録を持つ日本M&Aセンターの厳選担当者に会える!
・『鬼速PDCA』を用いて創業5年で上場を達成した経営戦略を知れる!

✉️経営、事業承継・M&Aの無料相談はこちらから