この記事は2022年10月17日に「月刊暗号資産」で公開された「2022年10月のハッキング被害「過去最大規模」 チェイナリシスが分析結果を公表」を一部編集し、転載したものです。
ブロックチェーン分析企業チェイナリシス(Chainalysis)は13日、今年10月は暗号資産(仮想通貨)業界で最もハッキング被害が発生した月になる可能性があると報告した。
10月はまだ2週間ほど残っているものの、11回のハッキング事件により、DeFi(分散型金融)プロトコルからすでに7億1,800万ドル(約1,067億円)が盗まれたという。
チェイナリシスは、「このままでは、2021年を上回り、今年は過去最大のハッキングイヤーとなる可能性がある。現在のところ、ハッキング集団は125回のハッキングで30億ドル(約4,460億円)以上の犯罪収益を上げている」と報告した。
また、チェイナリシスはハッキング集団の標的の変化についても指摘した。
2019年に発生したほとんどのハッキング事件は、中央集権的な暗号資産取引所を標的としていた。その後、多くの暗号資産取引所がセキュリティ対策を取ったことで、ハッキングの優先順位が変化したと分析している。
チェイナリシスは、現在ハッカー集団の標的となっているのはDeFiプロトコルだと指摘した。2020年のDeFiへのハッキングは全体の約30%だったが、2021年には約70%と急増しているという。また、2022年は現時点で約90%がDeFiへの攻撃であると述べた。
さらに、「DeFiの中でもクロスチェーンブリッジが主な標的だ。10月は3つのクロスチェーンブリッジがハッキングされ、6億ドル(約890億円)が盗まれた。これは10月のハッキング被害に遭った総額の82%に相当する。また、年間のハッキング被害総額の64%を占めるものだ」と説明した。
クロスチェーンブリッジとは、異なるブロックチェーン同士で暗号資産等の転送を可能にする技術。近年、DeFiプロトコルなどで利用ユーザーが増加しているが、堅牢性に課題がある例もあり、クロスチェーン・ブリッジを標的にしたハッキング事件も多々見受けられる。
今月7日には、大手暗号資産取引所バイナンス(Binance)のクロスチェーンブリッジであるBSCトークンハブがハッキング被害に遭い、5億8,600万ドル(約850億円)相当となる200万BNBが不正に発行された。
また、11日にはソラナ(SOL)基盤のDEX(分散型取引所)MangoMarketsにおいても1億1,400万ドル(約170億円)相当の不正流出事件が発生している。(提供:月刊暗号資産)