日本でダイバーシティが注目される理由や背景
ダイバーシティの考え方は、もともとアメリカで誕生したと言われている。アメリカでは、古くからマイノリティや差別に関する運動が盛んであり、個人の属性に捉われない公正な処遇を求める活動の一環としてダイバーシティが広がっていった。
近年、日本でもダイバーシティが注目されている理由としては、以下の3つが挙げられる。
○日本でダイバーシティが注目される理由
【1】 グローバル化
コスト削減などを目的として、現在では多くの日本企業が海外に拠点を構えている。その影響で、外国人労働者を採用する機会が増えたため、異なる言語や文化、慣習を受け入れる環境が必要になった。
【2】 労働力人口の減少
2008年以降、国内の労働力人口は減少傾向が続いている。業界によっては深刻な人手不足に直面しており、女性やシニア人材、外国人労働者など、採用する人材の幅を広げることが必要になった。
【3】 価値観の多様化
情報がありふれている現代では、自身の働き方について考える機会が多い。雇用形態にこだわらない求職者・転職者も珍しくないため、採用人材の幅が狭いと人材獲得競争で後れをとってしまう。
上記のほか、国が働き方改革の柱としてダイバーシティを推進している点も、国内で注目されている要因だろう。例えば、経済産業省はダイバーシティのガイドラインを公開しており、リーフレットなどの支援ツールも無償提供している。
また、「新・ダイバーシティ経営企業100選」の公式サイトでは、国内の優れた取り組み事例が紹介されている。より効果的な施策を考えるために、同じ業界や会社規模の事例はチェックしておきたい。
ダイバーシティ経営のメリット
ダイバーシティ経営では採用コストや教育コストが増える代わりに、さまざまなメリットを得られる。実際にどのような変化が生じるのか、分かりやすいメリットを確認していこう。
1.人材不足を解消できる
採用者の対象範囲を広げると、応募する人材は当然増えることになる。活躍の場を用意する必要はあるが、女性やシニア、外国人、障がい者を積極的に採用すれば、人材不足が一気に解消するかもしれない。
また、ダイバーシティ経営に取り組む企業には先進的なイメージがあるため、「働きやすい」「正当な評価を受けられる」と関心を示す求職者も増えるだろう。その結果、優秀な人材が集まりやすくなる。
2.斬新なアイデアや価値観が生まれる
組織に多様な人材が集まると、これまでにはないアイデアや価値観が生まれやすくなる。例えば、男性中心で製品開発をしている企業は、開発担当者やスタッフに女性を採用することで、女性向けの商品・サービスを展開できる可能性が高まる。
特に革新的な技術やイノベーションを目指す企業にとって、斬新なアイデアや価値観は欠かせないものだ。また、消費ニーズや産業構造が変わりやすい業界も、多様な人材を活かしやすい特徴がある。
3.市場での有利性や競争力がアップする
多角的なアイデアによって、市場での有利性や競争力が高まる点もダイバーシティ経営のメリットだろう。業界や業種に関わらず、現代の消費ニーズは多様化しているため、一つの商品・サービスがヒットしても安心はできない。
仮に消費ニーズが大きく変わったとしても、ダイバーシティ経営を進めておけば他社からの追随を許さないアイデアを生み出しやすくなる。