ダイバーシティ推進の取り組み事例
ダイバーシティの推進ではさまざまな施策が考えられるため、実際の事例からイメージをつかんでおくことも重要だ。ここからは、国内の有名な取り組み事例を紹介する。
【事例1】KPI設定や情報発信で女性活躍を推進/ベネッセホールディングス
通信教育や出版事業に携わるベネッセホールディングスは、「Benesse=よく生きる」の企業理念をベースとして、次のようなダイバーシティ推進に取り組んでいる。
○ベネッセホールディングスの主な取り組み
・「ESG・ダイバーシティ推進部」の設置
・女性活躍推進に関するKPIを重点的に設定
・ダイバーシティに関する情報を全社朝礼で定期的に発信
なかでも同社は女性活躍推進に力を入れており、スーパーフレックス制度や在宅勤務制度などを通して多様な働き方も実現している。
【事例2】教育面や雇用面からあらゆる人材をサポート/資生堂
化粧品の製造販売を行う資生堂も、女性活躍推進に力を入れている企業だ。同社は2017年から女性リーダー育成塾を開催しており、その成果として毎年多くの女性管理職候補を誕生させている。
また、定年後に再雇用する制度を実施したり、子会社で数十人の知的障がい者を採用したりなど、シニア人材や障がい者、外国人労働者の活用にも積極的である。
【事例3】年単位のロードマップやKPIの公開/損保ジャパン
大手保険会社の損保ジャパンは、「Diversity for Growth」をスローガンとして人材のグローバル化や女性活躍推進に取り組んでいる。
なかでも女性活躍推進では、目標を年単位でまとめたロードマップ(行動計画)が公開されている。そのほか、社外ネットワークへの積極的な参加や、従業員による自律的なキャリア形成をサポートしている点も参考にしたいポイントだ。
特にロードマップの公開は社会的なアピールにもつながるため、同社のように分かりやすい形で情報公開することを目指したい。
ダイバーシティに関するQ&A
ここからは、ダイバーシティに関して疑問に感じやすいポイントをQ&A形式でまとめた。最後までしっかりと確認し、プラン策定に必要な知識を押さえていこう。
Q1.ダイバーシティとはどういう意味?
ダイバーシティ(Diversity)は、直訳すると「多様性」を意味する。ビジネスにおいては、年齢や性別、人種、国籍、宗教などの属性に関わらず、多様な人材を受け入れることを指す。
もともとは人権問題などで用いられていたが、近年ではSDGsや働き方改革における重要ワードとなっている。
Q2.ダイバーシティの2つの種類とは?
ダイバーシティには、外見から分かる「表層的ダイバーシティ」と、外観からは判別できない「深層的ダイバーシティ」の2つがある。
表層的ダイバーシティ:性別、年齢、人種、国籍、民族、障がいの有無など
深層的ダイバーシティ:価値観、学歴、宗教、第一言語、収入、受けてきた教育など
多様性のある就労環境を作り出すには、表層的ダイバーシティと深層的ダイバーシティの両面から施策を考えることが求められる。
Q3.ダイバーシティの特徴や重要性は?
ダイバーシティの特徴は、属性に関わらず多様な人材を活かすことである。
経営面や戦略面にダイバーシティをとり入れると、企業内にはさまざまな価値観や発想が生まれる。場合によってはイノベーションにもつながるため、ダイバーシティは従業員個人の幸せだけではなく、企業の成長にも役立つ考え方である。
Q4.日本が抱えるダイバーシティの課題は?
日本ではダイバーシティの一環として、2016年に女性活躍推進法が実施された。しかし、世界経済フォーラムが公表する2021年のジェンダー・ギャップ指数において、先進国としては最低ランクとなっている(156ヵ国中120位)。
国際的に日本のダイバーシティが評価されるには、さまざまなビジネスシーンで男性優位になる文化や風習を変える必要がある。
Q5.ダイバーシティ推進の目的は?
ダイバーシティ推進の目的は、採用活動の裾野を広げることで人材確保力や競争力を高める点にある。また、個々の人材が能力を発揮できる環境になれば、イノベーション創出や市場ニーズへの迅速な対応にもつながる。
つまり、ダイバーシティには企業価値向上の効果があるため、現代ビジネスでは重要なキーワードとして捉えられている。
Q6.ダイバーシティ推進はなぜ進まない?
日本でダイバーシティ推進が進まない要因は、「アンコンシャス・バイアス」と言われている。
男女雇用機会均等法などの法整備は進んでいるが、日本には「役職には男性がつく」「女性は副会長のポジション」といった無意識的な偏見が存在している。このアンコンシャス・バイアスが解消されない限り、あらゆる業界でダイバーシティを進めることは難しい。
Q7.ダイバーシティの具体例は?
ダイバーシティの例としては、女性や障がい者の積極的な活用、言語に左右されない業務環境の整備などが挙げられる。また、ライフスタイルに合わせて働けるテレワークの導入も、ダイバーシティ実現のための取り組みだろう。
このように、人材の多様性を受け入れて組織力を高める施策は、「ダイバーシティマネジメント」や「ダイバーシティ経営」と呼ばれている。
Q8.ダイバーシティ人事とは何?
ダイバーシティ人事とは、企業が人材の多様性を確保しながら採用活動や教育を行うことである。また、不公平を生まないための人事評価や、メンタルヘルスを向上させる健康管理の導入なども、ダイバーシティ人事の一つに含まれる。
日本では1986年に男女雇用機会均等法が施行されたことや、人材不足に悩まされる業界が増えたことで、ダイバーシティの考え方が注目されるようになった。
Q9.ダイバーシティ経営の強みとは?
さまざまな従業員が働きやすい企業は、多様な価値観を持った人材や、優秀な人材を集めやすくなる。そのため、ダイバーシティ経営に取り組むと人材不足の解消や、経営課題の早期解決、企業価値の向上といった効果を期待できる。
さらに従業員の離職率が下がるため、安定した経営環境も実現しやすくなる。
Q10.ダイバーシティ&インクルージョンとは?
ダイバーシティ&インクルージョンとは、企業が多様な人材を受け入れて、個々の能力を発揮できる場を与えることである。多様な人材を増やすだけでは、さまざまな価値観や考え方を活かすことが難しいため、ダイバーシティ経営では「インクルージョン」にも取り組む必要がある。
インクルージョンの例としては、出産や育児がしやすい制度の導入、テレワークの推進、副業や兼業の許可などが挙げられる。