この記事は2022年10月27日に「月刊暗号資産」で公開された「厚生労働省、デジタルマネーでの給与支払いを来春解禁 暗号資産での支払いは見送り」を一部編集し、転載したものです。


厚生労働省
(画像=tapis volant/stock.adobe.com)

厚生労働省は26日、企業が従業員に対し、決済アプリなどで使えるデジタルマネーでの給与支払いを可能とする制度を来年4月1日から始める方針を固め、発表した。デジタル給与支払いの上限は100万円で、超える分については銀行口座などに振り込むという。

キャッシュレス決済の普及を目指した社会制度改革の流れで、厚労省の諮問機関に当たる労働政策審議会の分科会が、給与をデジタルマネーで支払う制度の導入を盛り込んだ労働基準法の省令改正案を了承したことで決定された。

厚生省が提示した紀尾井町戦略研究所が昨年5月に行ったWEBアンケートでは、「給与デジタル払いが可能になったら制度を利用したい?」という質問に対して26.9%が賛成していた。厚労省によると、キャッシュレス決済を通じて商品やサービスを購入している場合、資金移動アカウントへのチャージの手間を感じている回答者が一定層存在しているという。

また、賃金支払い側としても、そのようなニーズに応えることで広範な人材を確保・定着することができるとしている。

現行の労働基準法によれば、賃金の支払いは現金を原則としている。その上で銀行や証券総合口座への振込も認めている。

今回の省令改正により、「PayPay」や「Airペイ」「楽天ペイ」などのスマートフォン決済のアプリ口座も入金先として選択が可能となった。

スマートフォン決済アプリ業者などの資金移動業者への給与の支払いは労使協定を締結した上、労働者が希望し同意した場合のみに限るという。企業側は資金移動業者を給与の支払い先として設定する場合、銀行口座や証券総合口座への選択肢も合わせて提示する。

なお、現金化できないポイントによる支払いは認められない。例としては、楽天グループの「楽天ポイント」や、LINEの「LINEポイント」などが挙げられる。

そして焦点となっていた暗号資産(仮想通貨)による給与支払いについては今回見送られた。

給与に関する業務を行う資金移動業者は厚労省の認可が必要となる。厚労省は今後、専門知識を有する人材確保などを通じて監視体制を強化する方針だ。

事業者の指定には時間を有するため、実際に振込が行われるのは施行から数ヵ月見込みだという。厚労省から資金移動業者の認可を受けるための条件として、債務履行が困難となった時に労働者に対する責務を速やかに保証できる仕組みがあることや、ATMを利用するなどしてデジタル給与を1円単位で受け取れるシステムを構築するなどを挙げた。(提供:月刊暗号資産