年金は、老後の生活を支える重要な収入源の1つです。国民年金や厚生年金といった公的年金のほかに、個人が任意で加入する私的年金もあります。私的年金にはどんな特徴があるのでしょうか。本記事では、公的年金との違いや私的年金の種類、メリット・デメリットについて解説します。

私的年金とは?公的年金との違いや種類、メリット・デメリットを解説
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大西 勝士
大西 勝士
フリーランスの金融ライター(AFP、2級FP技能士)。早稲田大学卒業後、会計事務所、一般企業の経理職、学習塾経営などを経て2017年10月より現職。10年以上の投資経験とFP資格を活かし、複数のメディアで執筆しています。

私的年金とは

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私的年金とは、公的年金(国民年金、厚生年金)を補完するための制度です。老後に備えるために、公的年金に上乗せして企業や個人が任意で加入します。私的年金にはいくつかの種類があり、職業や公的年金の状況によって加入できる制度は異なります。

公的年金との違い

国が運営する公的年金は強制加入です。国民年金は国民全員に加入が義務付けられており、厚生年金は会社員や公務員が国民年金に上乗せして加入することになっています。それに対して、私的年金は任意加入です。加入が義務付けられていないので、利用するかは企業や個人が自由に選択できます。

私的年金は企業年金と個人年金の2種類がある

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私的年金は、「企業年金」と「個人年金」の2つに分けられます。それぞれの特徴は以下の通りです。

企業年金の概要

企業年金は、企業が従業員の退職後の生活のために福利厚生の一環として支給する年金です。代表的なものに「確定給付企業年金(DB)」「企業型確定拠出年金(DC)」があります。

確定給付企業年金は、あらかじめ退職後の給付額が確定しているのが特徴です。企業型確定拠出年金は、企業があらかじめ決まった掛金を加入者(従業員)に対して拠出します。加入者が自分で商品を選んで管理・運用を行うため、運用状況によって給付額は変動します。

企業年金は福利厚生として企業が加入しているため、従業員が年金制度を自由に選ぶことはできません。

個人年金の概要

個人年金は各個人が任意で加入し、自助努力で将来に備えるための年金です。代表的なものに「国民年金基金」「個人型確定拠出年金(iDeCo)」があります。

国民年金基金は主に自営業者が対象で、iDeCoは会社員や公務員も加入できます。制度によって加入対象者は異なりますが、どの年金制度を利用するかは個人が自由に選べます。

個人が加入できる主な私的年金

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個人が加入できる私的年金には、具体的にどんな制度があるのでしょうか。ここでは、主な私的年金(個人年金)である以下の特徴を紹介します。

・iDeCo(個人型確定拠出年金)
・国民年金基金
・小規模企業共済
・財形年金貯蓄
・個人年金保険

iDeCo(個人型確定拠出年金)

iDeCoは、加入者が自らの責任で年金資産の拠出・運用を行う年金制度です。自分で商品を選んで運用を行い、掛金とその運用益の合計額をもとに将来給付を受け取ります。自営業者のほかに一定の条件を満たす会社員、公務員、専業主婦(夫)なども加入できます。

掛金拠出限度額(月額)は自営業者が6万8,000円(国民年金基金との合計)、会社員・公務員は1万2,000円~2万3,000円となっています。

iDeCoは「掛金は全額所得控除」「運用益は非課税」「受取時も所得控除適用」など、税制優遇が充実しているのがメリットです。ただし、掛金は原則60歳まで引き出せない点には注意が必要です。

国民年金基金

国民年金基金は、国民年金第1号被保険者(自営業者・フリーランス)が加入できる年金制度です。国民年金のみの自営業者と厚生年金のある会社員との年金額の差を解消するために創設されました。

国民年金基金は、一生涯受け取れる終身年金であることが最大の魅力です。掛金によって将来受け取る年金額が確定します。途中で口数を変更しなければ、加入時の掛金額は払込期間終了まで変わりません。掛金上限額は月額6万8,000円です(iDeCoとの合計)。

iDeCoと同じく掛金は全額所得控除の対象で、受取時にも税制優遇を受けられます。一方で、国民年金基金は任意脱退ができません。また、加入時に年金額が確定するためインフレに弱い特徴があります。

小規模企業共済

小規模企業共済は、小規模企業の経営者や自営業者が将来に備えて積み立てる退職金制度です。満期や満額はなく、退職・廃業時に加入期間や掛金に応じて共済金を受け取れます。掛金上限額は月7万円で、掛金月額は1,000円~7万円まで500円単位で設定できます。iDeCoや国民年金基金との併用も可能です。

掛金は全額所得控除で、受取時にも税制優遇を受けられるのがメリットです。また、納付した掛金合計額の範囲内で事業資金などの貸付けを受けられます。

中途解約は可能ですが、掛金納付月数が12ヵ月未満の場合は解約手当金を受け取れません。また、240ヵ月未満の場合は元本割れします。

財形年金貯蓄

財形年金貯蓄は、勤務先で加入できる財形貯蓄制度の1つです。金融機関と契約し、給与天引きで事業主を通じて積み立てると、60歳以降の所定の時期から5年以上の期間にわたって年金を受け取れます。積立期間は5年以上です。

財形住宅貯蓄とあわせて、元利合計550万円まで利子などに対する非課税措置があります。給与天引きで手間をかけずに将来に向けた財産づくりができるのもメリットです。

解約は可能ですが、目的外の払い出しとなるため利子などに課税されます。また、利率が低いため、資産を大きく増やすのは難しいのがデメリットです。

個人年金保険

個人年金保険は、契約時に定めた年齢から一定期間または生涯にわたって年金を受け取れる保険商品です。払い込んだ保険料をもとに年金が支払われるため、私的年金として活用できます。

年金の受け取り期間によって、「終身年金」「有期年金」「確定年金」の3つに分類できます。また、保険会社の運用実績に応じて年金額が変動する「変額個人年金保険」もあります。

個人年金保険料は生命保険料控除の対象で、所得税・住民税の節税になります。ただし、利率が低いため、お金を大きく増やすのは難しいでしょう。また、中途解約で元本割れの可能性があります。

私的年金に加入するメリット

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私的年金のメリットは以下の通りです。

・将来受け取る年金額が増える
・税制優遇措置がある

将来受け取る年金額が増える

私的年金は、将来受け取る年金額を増やせるのが最大のメリットです。国民年金のみの自営業者はもちろん、厚生年金に加入している会社員も公的年金だけは老後資金が不足する恐れがあります。公的年金に私的年金を上乗せすることで、老後のお金に対する不安を解消できます。

税制優遇措置がある

私的年金は、制度ごとに税制優遇措置があります。例えば、iDeCoや国民年金基金、小規模企業共済の掛金は全額所得控除となります。受取時も所得控除(退職所得控除または公的年金等控除)が適用されるため、所得税・住民税が節税できます。

私的年金のデメリット

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一方で、私的年金には以下のようなデメリットもあります。

・老後まで掛金を引き出せないことがある
・元本割れリスクがある

老後まで掛金を引き出せないことがある

私的年金は、一定の年齢になるまで掛金を引き出せないことがあります。iDeCoは原則60歳まで掛金を引き出せず、国民年金基金も任意脱退は認められません。税制優遇はありますが、掛金を払いすぎると手元資金が不足する恐れがあります。無理のない範囲で掛金額を設定することが大切です。

元本割れリスクがある

私的年金は、制度によっては元本割れする可能性もあります。iDeCoは自分で投資信託などを選んで運用するため、株価が下落して損失が生じるかもしれません。また、小規模企業共済や個人年金保険は中途解約で元本割れすることがあります。特徴を理解したうえで、自分に合った制度を利用しましょう。

私的年金はマンション経営で作るのも選択肢

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公的年金を補う私的年金は、マンション経営で作るのも選択肢です。マンション経営とは、マンションを第三者に貸し出して家賃収入を得る方法です。

入居者がいれば毎月家賃が入ってくるので、年金と同じような感覚で使えます。マンションを売却してまとまった資金を手に入れることも可能です。また、不動産は預貯金に比べて相続税評価額が低いため、相続税対策にも活用できます。

ただし、入居者がいないと家賃収入を得られないので、マンション経営で成功するには空室リスクの低い優良物件を選ぶ必要があります。初心者は、不動産会社に物件選びのサポートを依頼するのが確実といえます。

まとめ

私的年金とは?公的年金との違いや種類、メリット・デメリットを解説
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老後資金に不安を感じる場合は、公的年金に私的年金を上乗せすれば年金の受取額を増やせます。私的年金はiDeCoや国民年金基金などが代表的ですが、マンション経営で作ることも可能です。それぞれメリット・デメリットが異なるので、特徴を理解した上で自分に合った方法を選びましょう。

(提供:Dear Reicious Online



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