2022年9月、政府と日銀は約24年ぶりに円買い介入(為替介入)を行いました。1ドル=145円台まで進んだ円安を抑制し、物価高騰や家計の負担増を阻止する姿勢を見せることが狙いだと考えられます。為替介入にはどのような方法があり、どういった効果が期待できるのでしょうか。

本記事では、為替介入の目的や方法、メリット・デメリットをわかりやすく解説します。

為替介入とは

為替介入とは?目的や期待できる効果、デメリットまでわかりやすく解説
(画像=tokyostudio/stock.adobe.com)

為替介入とは、為替相場に影響を与えるために、通貨当局が外国為替市場で通貨の売買を行うことです。「外国為替平衡操作」とも呼ばれます。

日本では、財務大臣の権限で為替介入が実施されます。日銀は法律に基づき、財務大臣の代理人として、財務省の指示を受けて為替介入の実務を担います。

為替介入の目的

為替介入は為替相場の急激な変動を抑え、為替の安定化を図るために行われます。基本的に為替は市場で決まるものであるため、政府や日銀は為替相場に対して過度な介入は行いません。

しかし、急激な円安や円高は、物価や家計に大きな影響を与えます。そのため、投機などにより過度な変動が繰り返された場合は、為替介入を実施することがあります。

急激な円高に対しては、円を売ってドルを買うことで円安に誘導する「ドル買い・円売り介入」を行います。円売り介入では、債券の一種である政府短期証券を発行して円を調達し、ドルを買い入れます。

一方、急激な円安に対しては、ドルを売って円を買うことで円高に誘導する「ドル売り・円買い介入」が実施されます。その場合、外貨準備の範囲内でドルを調達して円を買い入れます。

過去に行われた為替介入

財務省は「外国為替平衡操作の実施状況」において、過去の為替介入の実績を公表しています。

為替介入は、1990年代~2000年代前半と2010~2011年にかけて頻繁に行われています。2011年11月を最後に10年以上実施されていませんでしたが、冒頭で触れたように、2022年9月に円買い介入が行われました。円安抑制を目的とした円買い介入に限定すると、今回は約24年ぶりとなります。

2010~2011年は1ドル=75円台まで円高が進んだ時期であり、当時は円高を阻止するために円売り介入が行われました。

そもそも為替とはどういうもの?

そもそも為替とはどういうものなのでしょうか。次に、為替相場の仕組みや影響について解説します。

為替相場の仕組み

為替とは、現金を使わずに代金決済や資金移動を行う手段のことです。為替取引は、これまで手形や小切手、証書などが使われていました。最近では、インターネットの発達によって銀行振込や口座振替が主流となっています。

国内で行われる為替取引を「内国為替」、異なる国の通貨を交換する為替取引を「外国為替」といいます。そして、異なる国の通貨を交換するための市場が「外国為替市場」です。

外国為替市場では、「為替レート(通貨の交換比率)」に基づいて取引が行われます。為替レートが「1ドル=120円」であれば、120円で1ドルを購入可能です(手数料は考慮外)。為替レートは固定されておらず、通貨間の需給関係に応じて変動します。

為替変動が与える影響

為替レートの変動は、経済や物価、外貨建て資産の価格などに影響を与えます。

輸入品の物価は円高になると下がり、円安になると上がる傾向にあります。為替レートが「1ドル=100円」なら、1ドルの商品を買うのに必要なお金は100円です。円高が進んで「1ドル=80円」になると、必要なお金は80円で済みます。一方、円安が進んで「1ドル=140円」になれば140円必要です。

外貨建て資産を保有している場合は、円高になると円換算後の価格が下がり、円安になれば円換算後の価格は上がります。

円安と円高はどちらがいいのか

円安になると輸入品の物価は上がり、家計を圧迫する恐れがあります。一方で、輸出では海外での販売価格が安くなり、販売数量の増加につながるため、輸出企業にとっては有利です。

円を保有している場合は、円高が進むと円の価値が高くなるので有利ですが、円安になると円の価値が下がって不利になります。反対に外貨建て資産を保有している場合は、円高になると為替差損が発生し、円安になると為替差益を得られます。

円安と円高のどちらが有利かは状況によって異なるので、正解はありません。

政府や日銀が為替相場に介入する方法

政府や日銀が為替相場に介入する主な方法は以下の3つです。

口先介入

口先介入とは、円買い介入や円売り介入の実施を示唆する発言を行い、為替相場を心理的にコントロールしようとすることです。政府や日銀が為替介入の可能性に触れることにより、過度な為替変動を抑えられる可能性があります。

市場金利の調整

為替相場は、市場金利に大きな影響を受けます。金利が高いと得られる利息が増えるため、金利が高い通貨が買われ、金利が低い通貨が売られる傾向にあります。諸外国との金利差が大きい場合は、市場金利の調整を行うことによって為替相場が安定する可能性があります。

為替介入

為替介入は、実際に円買い介入や円売り介入を実施することです。大きくは「単独介入」と「協調介入」の2つに分けられます。単独介入は、日本単独で行う為替介入です。協調介入は、政治や経済面で利害が一致する国と一緒に行う為替介入を意味します。

為替介入で期待できる効果

為替介入が行われることによって、急激な円安・円高の抑制が期待できます。経済や物価が安定し、ビジネスや投資、家計管理がやりやすくなるでしょう。

為替レートは基本的に市場で決まるものですが、政治や経済、家計などに幅広く影響を与えるため、為替介入の必要性は高いといえます。

為替介入のデメリット

一方で、為替介入には以下のようなデメリットもあります。

為替介入の効果は限定的との見方がある

為替介入は急激な円安・円高を抑制する効果が期待できますが、その効果は限定的との見方もあります。為替介入は資金が必要で、何度も行うのが難しいからです。

また、一時的に急激な円安・円高が是正されても、為替介入の効果は長く続かず、短期間で元に戻ってしまう可能性もあります。

米国との関係に影響を与える

為替介入は、主に米ドルに対して行われます。米国との合意の上、協調介入を行うなら問題ないでしょう。しかし、利害が一致しない状態で日本が強引に単独介入を行えば、米国の反発を招き、日米関係に影響を与える恐れがあります。

急激な円安・円高に備えて投資家ができること

急激な円安・円高に対して、投資家はどのように備えればよいのでしょうか。

為替レートは常に変動しており、将来どのように推移するかを予測するのは困難です。長期的には円高と円安を繰り返しているので、円と外貨をバランスよく保有することが大切です。

保有資産が円と外貨のどちらかに偏ると、為替相場の影響を受けやすくなります。しかし、円と外貨の両方を保有すれば、円安・円高のどちらになっても保有資産全体の値動きは安定しやすいでしょう。

円と外貨の保有割合に正解はないので、自分にあった割合を検討しましょう。分からない場合は、円と外貨を50%ずつ保有するのも1つの方法です。

まとめ

為替介入は急激な円安・円高を抑えて、為替相場の安定化を図るために実施されます。ただし、その効果は限定的との見方もあり、短期間で元の相場に戻ってしまう可能性もあります。

急激な円安・円高に備えるために、円と外貨をバランスよく保有することを検討しましょう。

(提供:Incomepress



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