今、全国各地、あらゆる業界でパワハラ問題が噴出しています。パワハラは、境界線があいまいなだけに、上司も部下も悩ましいテーマでしょう。本記事では、いくつかの調査結果をもとに「どんな内容のパワハラが横行しているのか」「パワハラが起きる理由はなにか」「パワハラは増えているのか」など気になるテーマを探ります。
過去にこんなパワハラをしてしまったランキング
はじめに、ビジネスの現場でどんな内容のパワハラが横行しているかを確認してみましょう。管理職108名を対象にしたパワハラ調査によると、回答者本人が「パワハラを行った、もしくは行ってしまったと感じた」行為は次の通りです。
1位の「人格を否定するような暴言を言った」、2位「長時間、説教した」などは一般的にイメージされる典型的なパワハラではないでしょうか。また、3位「無視してしまった」、4位「仕事ができない部下に仕事を与えなかった」はパワハラを越えた、その人の尊厳を傷つける行為といえます。
さらに、5位の「仕事ができないならやめろ、首にすると言った」という行為は退職勧奨が違法にあたる可能性があり、損害賠償が発生するリスクがあります。「仕事ができないならやめろ」といった上司本人が責任をとって会社をやめることに……こんな結果にならないよう、部下や後輩がいる人は言動に配慮しましょう。
「キーボードを強く打つ」などもパワハラ行為として問題に
注意したいのは、先ほどご紹介したような暴言、長時間の説教、人格否定など以外でも、 パワハラの対象になることです。厚生労働省では、典型的なパワハラとして次の6パターンを挙げています。
上記6パターンのパワハラのなかで、とくに注目したいのは「6.個の侵害」です。嫌がらせや威圧的な言動がなくても、プライベートへの干渉や個人情報の暴露もパワハラ行為にあたるのです。
また、周囲を不快にする行為もパワハラにあたる可能性があります。例えば、出雲市の県立病院の医師が、同じ部署に勤務する複数の職員に対して行ったパワハラでは、怒鳴りつける以外の次の行為も問題視されました。
・パソコンのキーボードを強く打つ
・ゴミ箱を足で踏みつぶす
ちなみに、島根県はこの医師の行為をパワハラにあたると判断して処分しています。
このような報道を参考にすると、周囲に対して機嫌が悪いことをアピールするような行為もパワハラになりかねません。同僚などに不快な態度をとっていないか、セルフチェックしていく必要がありそうです。
「パワハラの原因は部下にある」という管理職は多い
前出の管理職を対象にしたパワハラ調査では、「パワハラとなったシーンを振り返ってみて、どれくらい自身に責任があったと考えているか」についても聞いています。
その結果は、半数近くの管理職が「自分と部下の責任が半々」または「部下の責任のほうが大きい」と回答しています。つまり、「自分だけが悪かったわけじゃない」「むしろ悪いのは部下のほうだ」と考えている上司が相当数いるということです。
仮に、部下側に問題があったとしても、パワハラ防止は法律(改正労働施策総合推進法)で事業主に義務づけられたものです。これが前提である以上、「部下が悪いからパワハラもある程度しょうがない」といった考え方はやめましょう。
パワハラの理由を聞くと「特に理由はない」という声も
さらに、パワハラをしてしまった管理職の内面を深掘りしていきましょう。前出のパワハラ調査で、管理職に対してパワハラに至った理由を問うと、次のような声が挙がりました。
上司側から見ると「共感できる」という項目もあるでしょう。逆に、部下側から見ると「納得できない」という内容が多いのではないでしょうか。
例えば、パワハラをした理由1位の「何度教えても、満足に仕事ができなかったから」という項目を上司側の立場で見ると、「ボーッとしているから覚えられないんだ」「こういうタイプはメモを取っていないに違いない」といった気持ちになりそうです。
一方、部下側の立場から同じ回答を見ると、「一度や二度教えられたくらいで仕事は覚えられない」「仕事が覚えられないのは上司の能力が低いからだ」といった不満が漏れそうです。
この両者の溝を埋めるのは、そう簡単なことではありません。
もうひとつ、アンケート結果で注目したいのは、以下のように上司のなんとなくの気分でパワハラが行われていることです。
回答 | 割合 |
---|---|
自分が部下以外のことでストレスを感じていたから | 3.7% |
部下のことが気に入らなかったから | 2.8% |
特に理由はない | 8.3% |
このように上司の気分次第でパワハラが行われては、部下からするとたまったものではありません。もちろん、「特に理由はない」のにパワハラをするのは論外です。
パワハラ調査の結果を踏まえると、パワハラを減らすには上司自身のストレスチェックやアンガーマネジメントも含めたフォローを会社が実施していく必要があるでしょう。ただし、相談窓口を設けて研修をしたからパワハラがその会社からなくなるほど、簡単な問題ではなさそうです。
経団連の調査では「パワハラが増えた」という企業が4割以上
パワハラ自体が増えているのか、減っているのかについても確認してみましょう。経団連が2021年12月に公表したハラスメントに関するアンケート結果を参考にすると、「パワハラはやや増加傾向にある」ようです。
5年前と比べたときのパワハラの相談件数は?
(調査対象:経団連会員企業)
回答 | 割合 |
---|---|
増えた | 44% |
変わらない | 30.8% |
減った | 16.3% |
これまで相談なし | 5.8% |
不明 | 3.30% |
5年前と比較して「パワハラに関する相談が減った」と回答した企業は全体の16%しかありません。大半を占めるのは 「パワハラが増えた」または「変わらない」というものです。両者を合わせると全体の約75%になります。
経団連では、パワハラを含むハラスメントの相談が増えている理由として、「法施行に伴う社会の関心の高まり」や「相談窓口の周知の強化」などを挙げています。この分析が正しければ、パワハラの相談件数が増えていることは、むしろよいことです。
これを裏付けるように、パワハラへの取り組みが積極的な企業ほど、5年前と比べてパワハラの相談件数が増加傾向にあります。
この結果に基づくと、相談窓口や研修などがないにも関わらず、パワハラが問題になったことのない会社は、「たまたま表面化していないだけでは?」と疑う視点を持つことも大事です。
「逆パワハラ」部下側が処分の対象になることもある
最近では、部下が上司に嫌がらせをする「逆パワハラ」という問題も出てきています。一例では、兵庫県警で上司である警部補に業務連絡をしなかったり、呼びかけを無視したりした部下2人が処分されました。
逆パワハラが全国メディアで報じられるようになった今、パワハラの加害者になるのは管理職やリーダーとは限りません。入社年数などに関係なく、若手社員も含めて「パワハラの加害者になるかも」と自身の言動に配慮していく必要がありそうです。
(提供:Dear Reicious Online)
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