仮想通貨(暗号資産)のマイニング(採掘)を取り巻く状況が激変しています。しかも悪い方向への激変であり、マイニングビジネスが「冬の時代」を迎えるのではないかとの懸念も囁かれています。

米国ではマイニング事業者大手のコア・サイエンティフィック社の経営危機が明るみになり、さらに仮想通貨取引所の大手であるFTXが米国で連邦破産法の適用を申請するなど、マイニングだけではなく仮想通貨業界全体にネガティブな話題が多くなっています。

こうした流れの中、仮想通貨投資をしている人やこれから投資を検討している人は今後どう向き合うべきなのでしょうか。仮想通貨マイニングビジネスの最前線で起きていることを交えて、解説します。

そもそもマイニングとは?

仮想通貨のマイニングは冬の時代へ?採掘ビジネスの最前線で起きていること
(画像=Remus/stock.adobe.com)

マイニングとは、仮想通貨の取引記録を承認する作業に参加することで報酬を得るビジネスのことです。多くの仮想通貨はブロックチェーンという仕組みによって成り立っており、新たな資金の移動や取引があるとそのことを新しいブロックとして記録する必要があります。このブロックチェーンを世界規模の分散型ネットワークで管理することによって改ざんや不正行為が困難になり、通貨としての機能が保たれています。

この作業に参加するのがマイニングで、ビットコインなど価値が高い仮想通貨については高速処理が可能なコンピューターを大量に設置してマイニング事業を行う事業者も参入し、世界的な報酬の争奪戦が繰り広げられています。

マイニングが儲からなくなっている

マイニングに参入している事業者は莫大な投資をしてマイニング環境を整備しているわけですが、それを上回る利益を得なければ事業は成り立ちません。しかし、このマイニングが儲からなくなっています。その理由は次項で解説しますが、儲からなくなった事業者の経営環境が悪化していることは容易に想像がつきます。

こうした流れを象徴しているのが、米国コア・サイエンティフィック社の経営危機報道です。財務内容の悪化も指摘されており、株価は暴落してしまいました。こちらは、2021年6月から2022年11月までのコア・サイエンティフィック社の株価チャートです。

TradingView
出典:TradingView(2022年11月12日)

かつては15ドル付近にまで上昇した同社の株価は0.2ドルを下回る水準にまで下落しました。この状況が続くと米国マイニング最大手の経営破綻につながるかもしれません。

かつてマイニング大国といえば中国でしたが、中国当局がマイニングだけでなく仮想通貨の取り扱いを全面禁止にしたため、その後は米国やカザフスタンが高いシェアを占めています。同社の経営危機は、その一角である米国でもマイニング事業が行き詰まりつつあることを示しています。

マイニングが儲からなくなった主な理由

新しく登場したビジネスとして脚光を浴びたマイニングですが、なぜ儲からなくなったのでしょうか。そこには致命的ともいえる2つの理由があります。

電気代の高騰(仕入れ価格の高騰)

ロシアによるウクライナ侵攻やコロナ禍からの経済再開、さらに世界的に進行しているインフレなどにより、資源価格が高騰しています。資源価格の高騰は電気代の高騰に直結するため、大量の電力を消費するマイニング事業者にとっては「仕入れ価格」の高騰になります。

ビットコイン価格の低迷(売り上げの低迷)

電気代の高騰によって仕入れコストが膨らんでいる一方で、マイニングの報酬として得られる仮想通貨の価格は低迷しています。仮想通貨の筆頭格として最も時価総額が大きいビットコインですら、以下のように価格が低迷しています。

TradingView
出典:TradingView(2022年11月12日)

仕入れコストが膨らんでいる一方で売り上げが伸びないのですから、マイニング事業が儲からないのは当然といえるでしょう。

これから起きそうなこと

この状況から、この先に起きそうなことを展望してみました。まず考えられるのが、コア・サイエンティフィック社の経営破綻が現実になり、そこから派生する信用不安によって他のマイニング事業者もドミノ的な破綻をするかもしれません。さらに、企業が大規模なデータセンターを構築してマイニング事業に取り組むビジネスモデルが終焉を迎える可能性もあります。

仮想通貨には一種のブーム性があり、そのブームが落ち着いた今では一時期ほどの価格上昇はなかなか起きなくなりました。過熱していたブームが去った今のほうが本来の価値を示しているといえますが、そうなると無価値に近くなる仮想通貨が続出するでしょう。その波がビットコインやイーサリアムなど主要な仮想通貨に波及すると、仮想通貨全体の地盤沈下が懸念されます。

こうした背景により、マイニングに使用する機器の価格が下落しています。マイニング競争が熱を帯びていた頃はGPUと呼ばれるコンピューターパーツが最適であるとして価格が高騰しましたが、マイナー(マイニングをする人、事業者)の減少に伴って本来の価格に落ち着いていくことでしょう。

マイニングは仮想通貨を存立させるために欠かせない仕組みです。マイナーの減少が進み過ぎると、仮想通貨自体が一過性のブームとして過ぎ去ってしまう可能性すらあります。

これからマイニング事業への参入を考えている方へ

コンピューターが自動的にお金を稼いでくれるマイニングに魅力を感じ、これから始めたいとお考えの方は、この状況をどう判断するべきでしょうか。マイナーが減少するということは、世界的に繰り広げられている競争が緩和されます。すでに述べたようにマイニング機器の価格が安くなっているので、ブームが過熱していた頃と比べると個人であっても参入しやすくなっています。

また、ビットコインなど主要な仮想通貨でハッシュレートが低下しています。ハッシュレートとはマイニング速度のことです。ハッシュレートが高いほど処理能力が高くマイニングでは有利になりますが、ハッシュレートを高くするには高価なマシンを揃える必要があり、電気代も高くなります。しかしマイナーの減少によってハッシュレートが低下すると個人が不利になりにくく、これから参入する方には有利といえます。

こうした環境でマイニングに参入するのは、いわゆる逆張りに近いイメージでしょう。下落している株を買うようなものなのでリスクは高いですが、再びマイニングの環境が好転した時には利益を生み出しやすくなります。

まとめ

マイニングへの参入や仮想通貨への投資はあくまでも自己責任ですが、仮想通貨自体が今すぐなくなるとは考えにくく、一部の主要な銘柄を中心に実需のある仮想通貨については今後も利用が拡大していくでしょう。

2022年は全体的に仮想通貨のネガティブなニュースが多い年ではありますが、それでも主要な仮想通貨が無価値になったわけではありませんし、安くなった仮想通貨を購入する人、マイニングに参入する人はいます。個人が参入しやすいという本来の姿になることで、堅実な仮想通貨投資が実現するかもしれません。

(提供:Incomepress



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