合成燃料「e-fuel」とは?カーボンニュートラル実現の切り札?
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2050年のカーボンニュートラルの実現に向けて「合成燃料」が注目されている。合成燃料とは、二酸化炭素と水素を使って製造する燃料のことだ。合成燃料のなかでも化石燃料に由来しない水素を用いたものを「e-fuel(イーフューエル)」と呼ぶ。

はたしてe-fuelは、カーボンニュートラル実現の切り札になるのだろうか。本稿では、e-fuelの概要や特徴、課題について解説していく。

合成燃料「e-fuel」とは?

冒頭で記載した通り合成燃料とは、二酸化炭素(CO2)と水素(H2)を合成することでつくられる複数の炭化水素化合物の集合体だ。石油の主成分は炭化水素(HC)であり、石油からつくられるガソリンや灯油なども多数の炭化水素の混合物であることに変わりない。また合成燃料は、「人工的な原油」とも呼ばれる。

合成燃料は、フィッシャー・トロプシュ反応(以下FT反応と記載)を利用して生成されるのが基本だ。FT反応とは、一酸化炭素と水素から触媒反応によって炭化水素をつくり出す技術のこと。二酸化炭素は、合成前に一酸化炭素に変換される。合成燃料を生成するうえでポイントになるのは、どのように二酸化炭素と水素を調達するかだ。

二酸化炭素の調達

二酸化炭素の集め方は、大きく分けると以下の2つがある。

  • 工場や発電所などから排出される二酸化炭素を分離・回収する方法
    もっともこの方法は、回収の前提として化石燃料を燃やして二酸化炭素を発生させておりカーボンニュートラルの観点からすると二酸化炭素の削減効果は他の方法より小さい。

  • 大気中の二酸化炭素を直接、分離・回収する方法
    この方法は、DAC(Direct Air Capture)と呼ばれる。空気中の二酸化炭素を直接回収するため、カーボンニュートラル上の効果は大きい。一方で排ガスから二酸化炭素を回収する方法と比べて大気中の二酸化炭素濃度が薄いため、回収効率は悪い。低コストで実現できるかなどの課題も多いのが特徴だ。

水素の調達

水素の調達方法は、大別すると3つあり、それぞれの特性を踏まえてグレー水素、ブルー水素、グリーン水素と呼ぶこともある。

  • グレー水素
    石炭や天然ガスといった化石燃料をベースにつくられる。化石燃料を燃やしてガスにし、ガスのなかから水素を取り出す。この方法は「改質」と呼ばれ最も一般的な水素の製造方法だ。同方法では、製造過程で二酸化炭素を排出するデメリットがある。

  • ブルー水素
    化石燃料を燃やしてガスのなかから水素を取り出す点は、グレー水素と変わらない。グレー水素との違いは、製造過程で生じた二酸化炭素を回収・貯留して再利用する点だ。二酸化炭素の排出を抑制できるブルー水素は、グレー水素に比べてカーボンニュートラル上は好ましい。

  • グリーン水素
    水を電気分解して水素と酸素に還元する方法だ。水を電気分解するには、大規模な電力が必要になる。しかしこの電力を太陽光発電など再生可能エネルギーでまかなうことができれば水素の製造過程で二酸化炭素を排出せずに済む。このように再エネ由来の水素を用いて生成した合成燃料を特に「e-fuel」と呼ぶ。

「e-fuel」の特徴とは

e-fuelには、既存インフラをそのまま利用できる点やエネルギー密度が高いといった特徴がある。

原油よりクリーン

原油とe-fuelとでは、e-fuelのほうが燃焼時によりクリーンな燃料だ。化石燃料の原油には、微量ながらも硫黄や金属成分が含まれている。一方、二酸化炭素と水素を合成してつくったe-fuelには、こうした不純物が含まれていない。

既存の内燃機関に使える

e-fuelは、既存の内燃機関(※)でも利用可能だ。自動車を例に考えるとカーボンニュートラル実現のためとはいえガソリン車から電気自動車や水素自動車に移行することは容易ではない。なぜなら動力源が異なり自動車としての構造から考え直さなければならないからだ。これがe-fuelであれば既存の内燃機関を変更する必要はない。

ただ燃料をe-fuelにするだけで二酸化炭素の排出量を削減できるのだ。

※ガソリンを使うためのエンジンなど

エネルギー密度が高い

e-fuelは、エネルギー密度が高いことも特徴の一つだ。e-fuelのエネルギー量は、同じ重さや体積の電池などと比べて大きい。例えば重さや体積が同じリチウムイオン電池とe-fuelでは、e-fuelのほうが同じ大型車を動かすのに遠くまで動かせるといえる。

合成燃料「e-fuel」の課題は?

e-fuelを普及させるうえでの課題は、製造コストの高さだ。経済産業省は、合成燃料について1リットルあたり300~700円と試算している。日本政府は、合成燃料の推進目標として2050年までにガソリン価格を下回ることを掲げており、水素や二酸化炭素をいかに低コストで調達できるかがカギを握る。

日本政府は2040年までの商用化目指す

日本政府は、2030年までに合成燃料の大規模製造プロセスを実証し2040年までに商用化することを目指している。今後e-fuelの実用化に向けて技術革新などが起きればカーボンニュートラルの達成に与える影響は大きい。そのためe-fuelの今後の動向には注目に値するといえるだろう。

(提供:manabu不動産投資

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