「ボラティリティトレーディング」とは、オプションや先物などの金融商品のボラティリティをもとに売買を行うトレーディング戦略です。この記事ではボラティリティの意味とその取引方法を解説します。

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ボラティリティとは

ボラティリティ(Volatility) とは、価格変動の度合いを示す言葉です。価格変動が大きい場合は「ボラティリティが大きい」といい、小さい場合は「ボラティリティが小さい」といいます。

ボラティリティは、証券や他の資産の価格に関する変動性や期待収益率を示すために使われます。標準偏差を用いて表され、「高い」「低い」といった表現を用います。

また、ボラティリティはリスクと関係があります。ボラティリティが高い場合、リスクも高くなる傾向があるからです。

オプションのボラティリティトレーディングとは

ボラティリティには、次のような種類があります。

  1. ヒストリカル・ボラティリティ(HV)
  2. インプライド・ボラティリティ(IV)

ヒストリカル・ボラティリティ(HV)とは、過去データに基づいて算出した変動率を指す用語です。これは、過去一定期間の原資産価格の変化率の平均値から求められ、統計学でいう「標準偏差(σ:シグマ)」にあたります。一般に、ヒストリカル・ボラティリティは、投資家が株価や通貨の価格の変動を予測するのに使われます。テクニカル分析の指標としてもよく使われます。たとえば、ヒストリカル・ボラティリティが10%であった場合、過去の相場変動率は10%だったことを示しているのです。

一方のインプライド・ボラティリティ(IV)とは、「予想変動率」とも呼ばれ、株式や為替、債券、商品(コモディティ)などの原資産価格の将来の変動率(ボラティリティ)を予測したものを指す用語です。インプライド・ボラティリティは、主にオプションで使われる用語で、市場が期待する将来の価格変動率を表します。また、インプライド・ボラティリティは、現在の市場でのオプション価格から逆算して求められる将来の予想変動率を指すものです。市場参加者が将来、どの程度の変動率を予想しているかの数値を表しているのです。

ボラティリティトレーディングでは、インプライド・ボラティリティを参考にしてトレードします。ボラティリティトレーディングとは、過去のボラティリティの水準と比較して、インプライド・ボラティリティが高いオプションを売ったり、逆に(インプライド・ボラティリティの)低いオプションを買うことで、マーケット価格の不均衡を利用して利益を得る取引手法のことです。

オプションのリスクパラメーターを理解する

ボラティリティトレーディングをするには、オプションのリスクパラメーターを理解する必要があります。

デルタ

デルタはオプション取引の用語であり、原資産の価格の変動に対して、どの程度オプション価格が変化するかを示す指標で、「ヘッジ比率」とも呼ばれます。オプション取引には、コール(買い)とプット(売り)の2種類があります。どちらを取引するかにより、デルタの数値はプラスかマイナスを示します。通常、コールオプションの場合にデルタはプラスを示し、プットオプションの場合にデルタはマイナスを示します。

日経平均株価を対象にしたオプション取引の場合を考えてみましょう。デルタが+0.5だと、日経225先物が100円上昇したら、コールオプションは50円上昇します。

ガンマ

オプションのガンマはオプションの価格変化を示す指標の1つであり、対象商品(原資産)の市場価格が1単位変動した時に、オプションの価格変化を示す指標(の1つ)であるデルタがどう変化するのかを示した指標です。以下の式で表されます。

ガンマ=デルタの変化/市場価格の変化

セータ

オプションのセータは、オプションの価格変化を示す指標の1つで、オプション料が満期日までの時間の経過によってどう変化するかを示すものです。オプションの価格は、本質的価値(intrinsic value)と時間的価値(time value)を合わせたものです。セータは時間的価値を示す指標です。

ベガ

オプションのベガとは、オプションの価格変化を示す指標の1つであり、インプライド・ボラティリティが1単位動いた時に生じるオプション料の変化を示す指標です。IVが変化した値×ベガが、オプション料の値動きを表します。ベガが大きいとIVの変化に対するオプションの感応度が高いことを示し、ベガが小さいと感応度が低いことを示します。ベガの価格変化が大きいとリスクも大きくなるので、リスクを管理するためにもベガを使ったオプションの分析は有用です。

ボラティリティトレーディングで大切なのは、「ベガ」です。ベガが大きいほどボラティリティが上昇したときの利益が大きくなるからです。

VIX指数を取引する

ボラティリティトレーディングはオプションを用いて取引します。ただ、実際にオプションを取引するのは難しいという人も多いでしょう。そういう人は、VIX指数の取引をおすすめします。

VIX指数は、S&P500を対象とするオプション取引の値動きをもとに算出・公表されています。VIX指数は投資家心理を示す数値として利用され、数値が高いほど投資家が相場の先行きを不安視していることを意味します。「恐怖指数」とも呼ばれています。過去1年間のVIX指数の推移は以下の通りです。

過去1年間のVIX指数の推移
過去1年間のVIX指数の推移(出典:CBOE)

過去1年間の推移を見ると、VIX指数はおおむね20~30の範囲で推移しています。この場合、20を割り込んだ水準で購入し、30を超える水準で売却できれば利益が出ることになります。ただ、2008年のリーマンショックや2020年のコロナショック時にはVIX指数は80を超えました。金融危機や戦争などの有事のときにはVIX指数は大きく上昇します。VIX指数の売りには注意が必要です。

VIX指数はCFDで取引する

VIX指数はCFDで取引できます。CFD(Contract for Difference)とは、差金決済取引のことで、実際の資産を保有せず、売買によって発生した差額を決済する取引方法です。CFDは金融派生商品(デリバティブ)の1つであり、株や先物などさまざまな市場で取引されています。FX(外国証拠金為替取引)もCFDの一種です。

GMOクリック証券、サクソバンク証券などを利用してVIX取引が可能です。

VIX指数を株式取引の参考にする

一般的にVIXの数値が高いほど、株価下落のリスクが高いことを示します。VIX指数は株式市場の不確実性や恐怖が高まると上昇する傾向があるため、しばしば「恐怖指数」とも呼ばれているからです。

ですから、VIX指数が大きく上昇して30を超えた場合は、株式市場が反発する可能性が高いと考えて(通常は)買いを入れます。一方、VIX指数が下がって20を割り込んだ場合は、株価が下がる可能性が高いと考えて売りを入れるのが普通です。

ただ、30を超えてVIX指数がしばらく推移することもありますし、20を割り込んで推移することもあります。あくまでも取り引きの判断材料の1つとしてVIX指数を利用するようにしてください。