マンションの大規模修繕、費用の目安は?費用を削減する方法なども解説
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マンションの大規模修繕は、空室対策などと並んで安定経営を行うために重要な項目の1つだ。大規模修繕では、まとまった資金が必要となるため、計画的に準備を進めることが求められるだろう。しかしなかには「どのぐらいの資金をいつまでに準備すればいいか分からない」といった方もいるのではないだろうか。

本稿では、一棟マンションのオーナーや一棟マンションを購入したい方に向けて「大規模修繕の費用」について解説する。あわせて費用の目安を中心に「大規模修繕の費用を削減する方法」や「大規模修繕の費用が足りないときの対策」も紹介していく。

大規模修繕の費用の目安はいくら?

はじめに大規模修繕の定義を確認しよう。建築基準法上の大規模修繕の定義は次の通りだ。

大規模の修繕 建築物の主要構造部の一種以上について行う過半の修繕をいう。<

引用:e-GOV「建築基準法 第2条14項」※この先は外部サイトに遷移します。

ここでいう主要構造部とは、壁、柱、床、はり、屋根または階段などのことだ。建物全体におけるこれらの部分の過半(2分の1超)を修繕することになるため、かなりの費用がかかる。具体的に「マンションの大規模修繕費がいくらか」は、次の条件で変わってくる。

  • 構造
  • 全戸数
  • 共有スペースの広さ、充実度
  • 築年数
  • 立地(自然環境)
  • 外壁の素材
  • 居室の間取り など

これらを前提にしつつ、一棟マンションにおける大規模修繕の費用の目安を見ていこう。参考になるのは、国土交通省の「民間賃貸住宅の計画修繕ガイドブック」※この先は外部サイトに遷移します。だ。このなかでは、以下のRC造マンションの具体的な修繕費用が示されている。

・RC造20戸(1LDK~2DK)
・RC造10戸(1K)

両者の大規模修繕費用の目安を比べてみると、同じRC造マンションでも戸数が多く間取りの広い「RC造20戸」のほうが高い。具体的な費用の目安は、以下の通りだ。

RC造20戸(1LDK~2DK)の大規模修繕費用の目安:21~25年目で約2,320万円

下の表のように、RC造マンションでは約5~10年おきのタイミングでまとまった修繕費用が必要になる。

築年数 修繕内容 一棟あたりの費用
5~10年目 ベランダ・階段・廊下(塗装)室内設備(修理)排水管(高圧洗浄等) 約170万円
11~15年目
(大規模修繕1回目)
屋根・外壁(塗装)ベランダ・階段・廊下(塗装・防水)給湯器等(修理・交換)排水管(高圧洗浄等) 約1,090万円
16~20年目 ベランダ・階段・廊下(塗装)室内設備(修理)給排水管(高圧洗浄等・交換)外構等(修繕) 約460万円
21~25年目
(大規模修繕2回目)
屋根・外壁(塗装・葺替)ベランダ・階段・廊下(塗装・防水)浴室設備等(修理・交換)排水管(高圧洗浄) 約2,320万円
26~30年目 ベランダ・階段・廊下(塗装)室内設備(修理)給排水管(高圧洗浄等・交換)外構等(修繕) 約460万円
30年間の総額 約4,490万円

※税制上の耐用年数は、RC造の場合、47年とされています。
※長期修繕計画および上記のイメージは、(公財)日本賃貸住宅管理協会「賃貸住宅版長期修繕計画案作成マニュアル(改訂版)」等を参考に作成したものです。個別の物件によって、具体的な時期や金額は異なります。
出典:国土交通省「民間賃貸住宅の計画修繕ガイドブック」※この先は外部サイトに遷移します。より株式会社ZUU作成

着目したいのは、次の2つのタイミングでマンション全体の修繕費用が1,000万円・2,000万円程度に急増することだ。

・11~15年目:一棟あたり約1,090万円
・21~25年目:一棟あたり約2,320万円

このタイミングがいわゆる「大規模修繕」にあたる。また両者を比べてみると同じ大規模修繕でも「築11~15年目」よりも「築21~25年目」のほうが2倍以上の修繕費用になっているのが分かるだろう。これは、同じ大規模修繕でも築年数が経つほど費用がかかりやすいことを示している。

一棟物件の経営で大事なことは、大規模修繕に加えて5~10年おきの小規模~中規模の修繕をしっかりと実行していくことだ。これによりマンションの大規模修繕の費用を抑えやすくなり、建物の外観の良さが保たれる分、空室リスクを抑えやすくなる。

RC造10戸(1K)の大規模修繕費用の目安:21~25年目で約900万円

同じ RC造のマンションでも戸数が減り間取りが狭くなると大規模修繕費用が大きく減る。RC造10戸(1K)の例は、次の通りだ。

築年数 修繕内容 一棟あたりの費用
5~10年目 ベランダ・階段・廊下(塗装)室内設備(修理)排水管(高圧洗浄等) 約70万円
11~15年目
(大規模修繕1回目)
屋根・外壁(塗装)ベランダ・階段・廊下(塗装・防水)給湯器等(修理・交換)排水管(高圧洗浄等) 約460万円
16~20年目 ベランダ・階段・廊下(塗装)室内設備(修理)給排水管(高圧洗浄等・交換)外構等(修繕) 約180万円
21~25年目
(大規模修繕2回目)
屋根・外壁(塗装・葺替)ベランダ・階段・廊下(塗装・防水)浴室設備等(修理・交換)排水管(高圧洗浄) 約900万円
26~30年目 ベランダ・階段・廊下(塗装)室内設備(修理)給排水管(高圧洗浄等・交換)外構等(修繕) 約180万円
30年間の総額 約1,770万円

※税制上の耐用年数は、RC造の場合、47年とされています。
※長期修繕計画及び上記のイメージは、(公財)日本賃貸住宅管理協会「賃貸住宅版長期修繕計画案作成マニュアル(改訂版)」等を参考に作成したものです。個別の物件によって、具体的な時期や金額は異なります。
出典:国土交通省「民間賃貸住宅の計画修繕ガイドブック」※この先は外部サイトに遷移します。より株式会社ZUU作成

上述した「RC造20戸(1LDK~2DK)」の大規模修繕費用を比べてみると以下のように約2.3~2.5倍の大きな差となる。

「一棟マンションを経営したいが、修繕費用の部分が不安」といったオーナーは、戸数が少ない物件を購入するのも一案だ。なお、修繕は30年目以降も必要になるため、その点は留意しておきたいところだ。

マンションの修繕積立金の目安(参考)

参考までに1平方メートルあたりでどれくらいの修繕費用を用意すればよいかも確認してみよう。以下の表は、マンションの管理組合向けに国土交通省がまとめた内容だが、一棟物件のオーナーの参考になる面もある。1平方メートルあたりの修繕積立金の平均値(20階未満の場合/機械式駐車場除く)は、次の通りだ。

建築延床面積
(20階未満の場合)
月額の平均値
(1平方メートル・専有面積あたり)
5,000平方メートル未満 335円
5,000~1万平方メートル未満 252円
1万~2万平方メートル未満 271円
2万平方メートル以上 255円

出典:国土交通省「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」※この先は外部サイトに遷移します。より株式会社ZUU作成

この内容と照らし合わせて適切なペースで修繕費用の準備ができているかについてチェックしたい。

一棟マンションの大規模修繕費用の注意点

ここまでの内容に基づいて、一棟マンションの大規模修繕費用の注意点を確認しよう。

  • 建物の大きさに比例して修繕費用がかかる
    上述したように一棟マンションの大規模修繕費用は、建物が大きくなるほどたくさんかかる傾向だ。戸数が多いほど家賃を得られるが、一方で大規模修繕費用の負担が重くなる。これを考慮すると手もと資金があまりない方が戸数の多い一棟マンションを購入するのはリスクが高いだろう。

  • 大規模修繕のタイミングを見極める
    中古の一棟マンションを購入する方は「次の大規模修繕(または小規模~中規模修繕)のタイミングがいつなのか」を見極めることが重要だ。もし近日中に修繕が必要なのであれば、以下のポイントを意識して購入を検討していかなければならない。

・修繕費用の見積もりはどれくらいか
・修繕費用を用意できるか
・修繕費用を考えても適切な利回りか

大規模修繕の頻度は12~18年程度が目安

大規模修繕を行うペースについては、オーナー(一棟物件の場合)や管理組合(区分所有の場合)が長期修繕計画に基づいて決めていくのが一般的だ。国土交通省では「長期修繕計画標準様式」などの改訂にあたって、長期修繕計画の期間を「2回の大規模修繕工事を含む30年以上」としている。

また日本経済新聞(2022年7月2日付)では、「マンションの大規模修繕は12年程度で繰り返すのが一般的」としながらも、「18年周期などに間隔を延ばすことも増えている」と記載。

これらの内容に基づくと、大規模修繕は12~18年程度を目安にして、長期修繕計画や建物の傷みなどの状況に合わせて行っていくのが理想だ。なお修繕は、主に次の流れで行う。

  1. 長期修繕計画の策定
  2. 定期的な検査
  3. 専門的な検査
  4. 修繕・補修の実行
  5. 修繕記録の策定
  6. 「定期的な検査」を行うに戻る

参照:国土交通省「民間賃貸住宅の計画修繕ガイドブック」※この先は外部サイトに遷移します。

大規模修繕費用を削減する方法

大規模修繕費用の削減を考えるオーナーも多いのではないだろうか。具体的な削減方法としては、次の3つが挙げられる。

削減方法1.業者に丸投げしない

一棟マンションの修繕は、管理会社、設計会社、工事会社などの主導で行われることが多いだろう。そのこと自体は問題ないが、丸投げしてしまうとコスト意識が失われやすい。業者に任せっぱなしにせず、オーナーが内容をチェックすることも大事だ。

削減方法2.工事箇所をチェックする

大規模修繕の対象となる箇所は、以下のように多岐にわたる。

  • 屋根
  • 外壁
  • 給湯器やエアコン
  • 階段や廊下
  • 給排水管 など

これらの箇所は、長期修繕計画に沿った修繕が必須なわけではない。状態を確認したうえで「修繕不要」と判断することもできるため、大規模修繕費用の削減も可能だ。ただし必要な修繕は、先送りせずに実行することを心がけておきたい。

削減方法3.複数の業者から見積もりをとる

修繕費用の適正さを判断するのに最も簡単な方法は、複数の業者から見積もりをとることだ。ただし安かろう悪かろうの大規模修繕にならないように、中身と価格のバランスにも注目したい。

大規模修繕の費用を見越した対策

将来の大規模修繕を見越したときに「このままでは大規模修繕を行う費用が足りない」と悩んでいるオーナーであれば、具体的な対策として以下の2つを検討したい。

費用対策1.修繕用の貯金に回すお金を増やす

「修繕費用が足りない=オーナーの貯金が足りない」と考えた場合、不動産投資のキャッシュフローやその他の収入から「貯金に回すお金を増やすこと」が第一に考えられる対策といえる。

費用対策2.金融機関の融資や共済の利用

大規模修繕費用が足りない状況を放置するのは、空室リスクを高めかねない。早めの対策が求められるが、「金融機関の融資」や「オーナー向けの賃貸住宅修繕共済」などを利用するのも手段の1つだ。賃貸住宅修繕共済とは、外壁・軒裏・屋根といった対象箇所の定期点検を共済側が行い、劣化が認められれば共済金が支払われるものだ。

一方でこうした方法の利用には共済掛け金や融資の返済が生じ、キャッシュフローを圧迫する一因にもなることから利用は計画的に行うべきだろう。

<appendix>家賃を値上げするのは現実的ではない

一棟マンションの経営で大規模修繕の費用が足りなければ、家賃を値上げしてキャッシュフローを増やすことも方法としてあるが、借主への家賃の値上げ交渉(賃料増額請求)は、借地借家法の制約があるため、現実的にハードルが高い。

また、家賃の改定は新規契約の借主のみが対象となるが、値上げによって周辺相場に比べて家賃が割高になることで、かえって空室リスクが高まる可能性もあるため、現状の設定賃料が周辺の相場よりも割安である状況を除いては避けたほうがよいだろう。

大規模修繕は、賃貸経営の重要度の高い検討課題やタスク

マンションにおいて「大規模修繕の費用」が賃貸経営にいかに重要か理解できたのではないだろうか。特にこれから中古の一棟マンションを購入する方は、実際の物件の状態や修繕記録を確認し、次の3つを確認することが大切だ。

・購入直後に修繕が必要となる箇所はないか
・次の大規模修繕のタイミングはいつか
・上記の修繕でいくら必要か

あわせて経営計画を立てたり、融資を受けたりする際に修繕費用を組み込んで考えていく姿勢も求められる。賃貸経営では、修繕や大規模修繕は欠かせない事項となるため、重要度の高い検討課題やタスクとして肝に銘じておこう。

(提供:manabu不動産投資

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