資金繰りを改善するための3ステップ

ここまで紹介してきたように、資金繰りの改善にはさまざまな方法がある。しかし、全体像を把握しないままやみくもに取り組んでも、なかなか資金繰りは改善しない。全体像を把握しながら資金繰り改善するために、どのようなステップを踏めばいいかを解説する。

ステップ1 資金繰り表を作成する

資金繰りを改善する上で、資金繰り表を作成することが最初のステップとなる。

資金繰り表とは、お金の動きを把握し、予測する表のことだ。月ごとに売上と仕入、収入と支出を入力し、資金の増減や残高を把握する。これに設備投資や新規雇用の予定などを入力すれば、将来の資金繰りを予測することもできる。

資金繰り表に決められた形式はないので、管理しやすいような表の作成は自由だ。日本政策金融公庫が公開しているオーソドックスな資金繰り表を活用してみるのもいいだろう。

資金繰り表を作っておくと、融資を受けるときや、金利や返済方法の交渉をするときにも活用できる。

ステップ2 アクションプランを立てる

資金繰り表でお金の動きを把握できたら、問題点を分析し、資金繰り改善に向けたアクションプランを立てる。

たとえば、売上代金の回収もれを防ぐため決済方法を見直す、不良在庫をなくすため在庫管理システムを導入する、といった方法が考えられる。

ステップ3 実行に移し効果を検証する

アクションプランを立てたら、実行に移して効果の検証まで行うことが大切だ。資金繰り表があれば、効果が数字で分かるため、次の施策にもつなげやすい。

資金繰りは、一度改善したら終わりというわけではない。資金繰りの改善計画を立てて実行し、効果検証するというサイクルを回すことで、健全な経営状態を維持できる。継続的に資金繰りの改善に取り組むことが大切だ。

中小企業が資金繰りを改善する4つのメリット

それでは、中小企業が資金繰りを改善するメリットについて、4つの視点から解説する。

1.会社を存続させられる

資金繰りが悪化し、支払に必要な資金が不足すると、最終的に会社は倒産してしまう。資金繰り表で会社のお金の流れを把握し、資金繰りを改善することは、会社を存続させることにつながる。会社を存続し、事業活動を続けられることが、資金繰り改善の目的であり、メリットでもある。

2.経営の自由度が上がる

資金繰りが改善すれば、会社に十分な資金が残り、経営の自由度が上がる。設備投資や従業員の待遇改善、経営者の報酬の確保など、経営の意思決定をする上で、元手となる資金は必ず必要だ。会社の資金が増えて経営の自由度が上がるのは大きなメリットといえるだろう。

3.事業を拡大できる

資金繰りが改善すれば、事業拡大や新規事業の創設に取り組みやすくなる。現代は、技術革新をはじめ変化の激しい時代だ。既存の事業だけで売上を維持し、会社を存続させていけるとは限らない。事業を多角化し、時代の変化に柔軟に対応できるのはメリットである。

4.リスクに備えられる

経営リスクに備えられるのも、資金繰りを改善するメリットだ。不良品や情報漏洩、不祥事、災害など、会社経営にはさまざまなリスクがある。対策を講じても、すべてのリスクを排除することは難しい。問題が起きてしまったとき、資金があると、対処しやすくなる。いざというときに備えられるのも資金繰りを改善するメリットである。