この記事は2023年1月9日に青潮出版株式会社の株主手帳で公開された「ハニーズホールディングス【2792・プライム】全国871店を生かしたOMO戦略推進 EC事業強化し25年5月期営業利益率10%超へ」を一部編集し、転載したものです。
自社企画によるカジュアル婦人服を製造販売、全国に871店舗出店するのがハニーズホールディングスだ。商品の生産を2010年代中頃に中国からアセアン諸国へと移したことが奏功し、近年は高利益率を維持している。
現会長の江尻義久氏からバトンを受け継いだ江尻英介社長は、EC事業を強化。リアル店舗とECの両輪で売上、利益の拡大を図っている。
▼江尻 英介社長
アパレル業界で首位の
売上総利益率60.3%
ハニーズは福島県を拠点に全国に店舗を展開する、婦人服製造小売りの大手だ。20~40代をターゲットにした「グラシア」、幅広い年代向けのベーシックな「シネマクラブ」、ヤングカジュアルの「コルザ」の3ブランドを展開している。
2022年5月末現在で全国に871店舗を出店。イオンを始めとする郊外型大型ショッピングセンターや都心の駅ビルなどに出店している。
同社の2022年5月期決算は売上高が476億9,500万円、売上総利益が287億4,100万円、売上総利益率60.3%と、アパレル業界で首位の高い利益率を有する(右ページ下図参照)。要因の1つは高いアセアン生産比率だ。自社工場をミャンマーに設立し、バングラデシュ、カンボジアなどにも生産を委託。近年はアセアン生産比率9割を維持している。
また、EC事業が伸長。利益率の高い自社ECサイトの売上比率が約6割となり、EC事業の成長をけん引している。
EC事業の営業利益率は
店舗の利益率の約2倍
中期経営計画では、2025年5月期の売上高505億円、営業利益60億円、営業利益率10.9%を掲げている。
主要施策の1つはEC事業の強化だ。EC事業の営業利益率は店舗の利益率の約2倍であり、EC事業を伸ばすことで全体の利益向上を図っていく。2022年5月期のEC事業の売上高は45億円であり、EC化率は2021年5月期の8.2%から9.5%に上昇。2025年5月期には14.5%に引き上げる。
同社のEC事業では、会員組織を二段構えで展開している。1つは、自社アプリをインストールして店舗での買い物に活用するアプリ会員。2022年現在、会員数は230万人を突破している。もう1つは自社ECサイト「ハニーズオンラインショップ」の会員であり、106万人が登録している。
同社は2008年にEC事業を開始。スタートから数年間は伸び悩んでいたが、江尻氏が責任者に就任し、サイトの操作性の改善に着手。その中で、店舗とECの売り方の違いに気づき、在庫管理を改革した。
「当社は多品種少ロット生産で新しい商品を次々に投入し、回転率を良くして売上を伸ばしてきました。しかしECでは、売れる物の奥行きをどれだけ持てるか、つまり売れ筋上位1~2割の商品で売上の8~9割を作るような在庫の持ち方をしないと、売上が取れないということが分かってきました」(江尻英介社長)
同社は地元福島に物流センターを構え、店舗及びEC用の在庫を二元管理しており、リアルタイムに在庫状況を把握。ECでの反応が良い商品は店舗用在庫から優先して回し、それでも足りない場合は全国の店舗から取り寄せるなど「売り時を逃さないための在庫コントロール」(江尻社長)を徹底している。
店舗受け取りサービス開始
買い足しや送客効果創出
ハニーズオンラインショップでは、2022年4月から、注文した商品を店舗で決済して受け取る「店舗受け取りサービス」を開始した。利用状況は順調で、ネット注文の3割超が店舗受け取りを選択しているという。
「全国約871の店舗があるので、当初の想定以上の利用件数になっています。商品を注文するときは決済しなくていいので、例えば同じパンツのMとLをネットで注文し、店舗で試着してMだけを買うこともできます。
このサービスを始めたところ、店舗に良い商品があったから1点買い足す人が増えました。ネット販売が店舗への送客の機能も果たしています。将来的にはEC売上高を100億円に、EC売上比率を20%に引き上げたいと考えています」(同氏)
ミャンマー事業でコスト抑制
最新機器導入し効率化推進
同社はかつて、製造拠点を中国に展開していたが、急激な発展による競争激化等により利益率の低下が進んだことから早期に脱・中国路線に転じ、新たな拠点としてミャンマーに進出した。
ミャンマー事業はコスト抑制に寄与している。ミャンマーからの仕入れ構成比率は約6割(2022年6~8月)。第1工場、第2工場合わせて3,800人が働いている。現在、第3工場を建設中であり、来期(2024年5月期)中の稼働を見込んでいる。
「ミャンマーの現地通貨であるチャットがドル高チャット安になっています。通常は1ドル約1,200チャットですが、今、1ドル約3,000チャットになっていて、実質的な人件費が下がっています。工場には日本と同じ最新の機器を導入して生産効率向上を図っています。今後も効率化を進め、品質確保とコスト削減を追求していきたいと考えています」(同氏)
▼ハニーズイオンスタイル品川シーサイド店
▼ハニーズオンラインショップのトップページ
▼アプリ画面
▼ミャンマー自社工場の工場外観と工場内の様子
2022年5月期 連結業績
売上高 | 476億9,500万円 | 前期比 5.1%増 |
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営業利益 | 49億9,300万円 | 同 32.5%増 |
経常利益 | 50億5,700万円 | 同 27.3%増 |
当期純利益 | 32億5,500万円 | 同 35.4%増 |
2023年5月期 連結業績予想
売上高 | 505億円 | 前期比 5.9%増 |
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営業利益 | 55億円 | 同 10.2%増 |
経常利益 | 55億円 | 同 8.8%増 |
当期純利益 | 35億円 | 同 7.5%増 |
*株主手帳1月号発売日時点