GSIクレオス
吉永 直明社長

GSIクレオスは、繊維と工業製品の販売や輸出入を行う専門商社だ。創業90年の老舗であり、「事業創造型商社」として付加価値や独自性の高い商品を提供している。前中計では収益力の向上に注力し、営業利益、経常利益、純利益とも過去最高益を達成。新中計(2022~24年度)では強みを生かした事業に注力し、過去最高純利益の更新と流通株式時価総額の向上によるプライム市場上場維持を目指している。

吉永 直明社長
Profile◉吉永 直明(よしなが・ただあき)社長
1955年10月生まれ、群馬県出身。早稲田大学政治経済学部卒。79年、グンゼ産業(現GSIクレオス)入社。GSIホールディング社社長兼GSIアメリカ社社長、取締役、常務取締役などを歴任。2017年、代表取締役社長社長執行役員に就任(現任)。

生糸の輸出入で創業
海外売上高比率は5割強

GSIクレオスは1931年、「林大作商店」として横浜市にて創業した。創業者の林大作氏は総合商社鈴木商店の元ニューヨーク支店長であり、日本に帰国後、生糸(シルク)の輸出入を始めたことを祖業とする。

50年代には工業製品分野に進出して事業を拡大。現在は国内7拠点、海外22拠点を展開し、海外売上高比率は50%超を占める。

現在の事業セグメントは、繊維と工業製品の2分野であり、売上比率は繊維事業が77%、工業製品が23%となる。

繊維事業は、素材や生地の開発・調達からインナー・レッグウェア、アウターなどの最終製品までを手掛け、「川上から川下まで」の一貫した機能と高い専門性を有する。なかでも、パンスト(パンティストッキング)用素材の取扱量は国内1位の実績を誇る。

工業製品事業は、「化学品」「機械・材料」「ホビー・ライフ」の分野で専門性の高い商品商材を提供。2001年からカーボンナノチューブの分野に参入し、積極展開している。

「当社は『事業創造型商社』として、新たな価値を創造するビジネスモデルを構築し、展開しています。例えば繊維事業では、原糸に様々な加工を行い独自の付加価値をつけて提供する、などです。将来に向け当社が名実ともに発展していくため、メーカー的要素を入れながら事業を作り上げていくことを多方面で展開しています」(吉永直明社長)

前中計は過去最高益を達成
医療・衛生消耗品需要に対応

国内繊維市場の製造出荷額は、1991年の12.4兆円をピークに縮小傾向が続き、2018年には3.8兆円まで減少している。衣料繊維(アパレル製品)の輸入拡大と単価の下落が、縮小の要因とされる(経済産業省調べ)。

繊維事業を主力とする同社においても、90年代に過去最高の売上高を達成したが、バブル経済崩壊後、16年間無配が続いた。そんな中、2017年に吉永氏が社長に就任。事業基盤強化や収益拡大に注力した結果、前中期経営計画(18~20年度)では目標を上回る売上高、利益を達成。営業利益、経常利益、純利益とも過去最高益を達成した。

最高益の要因は、繊維事業における医療・衛生消耗品への対応だ。コロナ禍において、マスクなどメディカル関連の需要に的確に対応したことが利益貢献した。

「繊維は衣食住の一角をなす基本であり、当社でも繊維事業を基盤に位置付けています。当社の技術や販売網、サプライチェーンを駆使しコロナ禍でのひっ迫した需要に対応できたのは繊維事業の底力だと考えています」(同氏)

もう1つの要因は、利益率の高い工業製品事業の拡大。特にホビー関連商材において海外市場拡大策が奏功した。

「ホビー商材では、MR. HOBBYという自社ブランドを展開し、水性塗料をはじめとした塗料アイテムなどを販売しています。ガンダムマーカーなど国内、海外ともに好調です」(同氏)

日米中3拠点連携により
半導体関連事業を拡大

新中期経営計画「GSI CONNECT 2024」の数値目標は、25年3月期の売上高1,350億円、営業利益35億円、経常利益35億円、当期純利益22億円だ。収益力のさらなる向上に注力し、過去最高純利益の更新を目指す。

繊維事業の施策の1つとして、メディカル関連事業に注力。有力メーカーと連携し、リンパ浮腫用着圧タイツなどの材料となる高品質機能糸の生産販売を拡大する。同タイツの販売にも取り組み、国内はもとより、同社の強みである南米ブラジル市場での拡大を狙う。

工業製品事業では、半導体関連の事業モデルを強化。日本、米国、中国の3拠点連携により同事業の拡大を図る。

「半導体を主力事業とする拠点を中国上海市に設立し、中国半導体事業に本格参入しました。また、初の試みとして日米中の3拠点を統括するグローバルマネジャーを任命し、情報を一元管理できるようにしました。半導体市場は成長分野であり、当社もその波に乗って拡大していきたい」(同氏)

同社はプライム市場の上場維持基準における「流通株式時価総額」(上場維持基準は100億円)の基準を満たすため、今中計を着実に実行し、過去最高純利益の更新を目指す。

なお、株主還元として22年3月期は1株7円の「創立90周年記念配当」を実施。普通配当を加えた配当金は62円を予想しており、実施されれば6期連続増配を達成することになる。

「同中計では、配当性向50%を基本方針としています。株主還元を安定的かつ継続的に実施していきたいと思います」(同氏)

GSIクレオス
(画像=株主手帳)

▲GSIクレオスと畿央大学が共同開発した「バスタイムトップス」。乳がんの手術痕をカバーする入浴着

GSIクレオス
(画像=株主手帳)

▲ホビー商材の塗料アイテム

GSIクレオス
(画像=株主手帳)

▲ブラジルでは透析クリニックを運営


2021年3月期 連結業績

売上高1,163億7,500万円前期比 0.7%増
営業利益36億3,200万円同 204.8%増
経常利益37億円同 205.0%増
当期純利益20億2,600万円同 100.8%増

2022年3月期 連結業績予想

売上高1,160億円前期比 ー
営業利益20億円同 44.9%減
経常利益20億円同 46.0%減
当期純利益15億円同 26.0%減

※株主手帳3月号発売日時点
※22年3月期より新会計基準を適用するため、売上高の対前期比増減率は記載なし

(提供=青潮出版株式会社