近年は、年間100社前後の企業がIPO(新規公開株式)により証券市場へ上場している。2021年度におけるIPO企業の社長の平均年齢は50.3歳と2011年度の52.3歳と比較して若年化しているのが特徴だ。本企画では、市場に新しい風を巻き起こすことが期待されるIPO企業の代表者に企業概要や上場のねらい、今後の展望についてインタビュー形式で実施している。

株式会社メイホーホールディングスは、地域に根ざす中小企業と資本提携や事業継承・譲渡の合意契約を行い経営改善へと導く経営プラットフォーマーだ。2021年6月2日に東証マザーズ(現:東証グロース市場)へ上場し、「長期的にグループ企業300社達成」の目標を掲げ、新たな門出を迎えている。

代表取締役社長である尾松豪紀氏が目指すのは「若者たちが夢を抱き、地元でいきいきと活躍する社会づくり」だ。本稿では、尾松氏から事業のあゆみや上場企業としての意気込み、未来構想などをうかがった。

(取材・執筆・構成=杉野 遥)

株式会社メイホーホールディングス
尾松 豪紀(おまつ ひでとし)―― 株式会社メイホーホールディングス 代表取締役社長
1963年11月4日生まれ、岐阜県出身。2001年7月株式会社メイホーエンジニアリング代表取締役に就任。2017年2月、持株会社へ移行に伴い、株式会社メイホーホールディングスを設立し、代表取締役社長に就任し現在に至る。
株式会社メイホーホールディングス
(会社概要)
創業1981年7月、岐阜県岐阜市と東京都千代田区に本社を構える持株会社。スローガン「変わる勇気が、未来を変える。」を合言葉に、地域を支える企業との資本提携、経営改善、企業価値の向上を通じて地域創生を推進する経営プラットフォーマー。現時点では、建設事業、、建設関連サービス事業、人材関連サービス事業、介護事業の4つのセグメントにおいて事業を展開。

2021年6月2日に東証マザーズ(現東証グロース)・名証セントレックス(現ネクスト)に上場した。グループ企業は、同社を含め全国18社・従業員数(連結)は1074名。(2023年2月28日現在)

目次

  1. 株式会社メイホーホールディングスについて
  2. 競合他社との違い、強みとは
  3. 上場のねらいと上場後の変化
  4. 日本経済の課題について
  5. 株式会社メイホーホールディングスの展望

株式会社メイホーホールディングスについて

― メイホーホールディングス様の事業内容についてお聞かせください。

株式会社メイホーホールディングス 代表取締役社長・尾松豪紀氏(以下、社名・氏名略): メイホーホールディングスは、中小企業の経営改善を行う「経営プラットフォーマー」です。企業のなかには、それぞれの地域に根ざし、長年にわたり愛される数多くの中小事業者があり、なかにはご家族で経営しているような小規模の事業者もあります。

時代の変遷と共に事業者が生き抜くには、規模を問わず組織的な経営力が求められるようになりました。そこで弊社は、こうした中小規模の事業者を「今の時代に合う形へと導く」という役割を果たしています。私が目指す最終的な目標は「地域創生」です。私の若いころは、がんばるほどに人生が開ける……そんな希望がありました。

だからこそみんな「努力しなければ損だ」という気持ちでがんばっていたわけです。ところが今は、国全体に閉塞感があるように思います。下請け構造や既得権益を偏重した日本経済では、特に地方で暮らす若い方がなかなか報われない状況に置かれているのではないでしょうか?そうしたなかで未来を変えるのは、中小企業の存在だと考えています。

理由はシンプルで、みなさん命がけで会社を切り盛りしている底力を感じるんです。ただ「時代に合った組織的な経営ができておらず行き詰まっている」「PDCAサイクルではなくDoDoサイクル、つまりひたすらD(行動)あるのみ」という状態の企業が多く存在しています。

底力を持っている中小企業と弊社がタッグを組むことで「計画を立てて検証をし、経営改善していく」というPDCAサイクルを回せるようにサポートしているのが現状です。現在は「建設事業」「建設関連サービス事業」「人材関連サービス事業」「介護事業」の4つのセグメントにおいて事業展開し、グループ企業は弊社を含めて18社に上ります。

▼株式会社メイホーホールディングスの4つの事業セグメント

株式会社メイホーホールディングス
(画像:株式会社メイホーホールディングス)

競合他社との違い、強みとは

― 競合他社と差別化できるポイントはどこにあるとお考えですか?

一般的な経営コンサルタントと大きく違うのは、基本的に資本関係を結んで支援を行うということ。ただ提案をするだけではなく、結果責任まで一緒に背負う……これが経営コンサルタントではなく「経営プラットフォーマー」と名乗っている理由です。形式としてはM&Aですが「一心同体となってもうかる会社に変えていく」「事業拡大を目指す」という姿勢が強みだと自負しています。

そうした姿勢を信頼していただいて、地元の企業から事業承継の相談を受けることも多々あります。

―具体的にはどのように経営改善を図るのでしょうか?

中小企業の実情を見ていくと、月次決算がしっかりできていないケースがあります。労務管理もあいまいで残業代の計算もなあなあになっているといった具合です。そこでまずは、経営者が責任を持って会社を管理する意識を持っていただくことからスタートします。ここで必要なのが「システムと規程」です。膨大なデータ管理を行うには、まず「システム=ITツールの導入」が不可欠ですね。

ですが、どんなにハイスペックなツールを導入したところで、正しく利用しなければ全く意味がありません。機能させるためには、マニュアルやルールといった規程とツールを使いこなすための教育訓練がワンセットだと考えています。DXの本質は、システムの導入にとどまらず、規程づくりと教育訓練にあるはずです。

グループ企業には、弊社からITに精通した人材が出向いてトレーニングを行うなどDX実現に向けた支援を行っています。

上場のねらいと上場後の変化

― 2021年6月に東証マザーズ(現:東証グロース市場)および名証セントレックス(現ネクスト)へ上場されましたが、上場のねらいをお聞かせください。

上場を目標としていたわけでなく、私にとってはあくまで手段です。投資できる資金は増えていきますから、事業拡大に一層まい進していきたいと思っております。「長期的にグループ企業300社達成」という目標を掲げていますが、これは上場前から設定していた目標です。どことなく漠然とした目標が上場によって確実にやり遂げようという意識に変わる……それがねらいといえるでしょうか。

上場すれば、応援してくださる株主さまたちの期待も背負うことになります。つまり絶対に会社を大きくしなければならなくなるわけです。実際に言葉への責任感が圧倒的に高まりました。

―上場後、変化を感じられることはありますか?

社員は、責任感と同時にモチベーションが上がり、誇りにつながっているようです。そして世の中からの注目度も高まっているように感じています。今回ZUU Onlineからも取材の依頼をいただいたように上場後は、メディアへの露出も増えました。またネクスト市場は、ローカル市場ですから地元の方へアピールできる機会もあります。

人材採用の面においても良い影響が出ていると感じます。新卒採用では、公立大学からの応募が増えましたし、中途採用では経営企画や人事、総務、経理といった管理部門で経験者を採用できました。

▼株式会社メイホーホールディングス本社

株式会社メイホーホールディングス
(画像:株式会社メイホーホールディングス)

日本経済の課題について

― 尾松社長の感じている日本経済の課題についてお聞かせください。

これからの日本経済の状況については、大きく変化するとは考えていません。強いていえば金利が上がる可能性はありますから、ここがブレーキになるかもしれません。本当の問題は「今のままで何とかなるだろう」という国民の意識だと感じます。私と同年代の世代の方だと「自分の寿命を考えると、あと20年くらい現状維持できればいいや」と。

そうした感覚でいると苦労するのは、次世代を生きる若者です。「自分たちのためではなく次世代のために変えていこう」という人たちを増やしていかなければならないと感じます。弊社のビジネスモデルも「世の中を変えたい」という想いから誕生したものです。もともと当社の原型は、父が創業した建設会社でした。

私は、別の大手重工業メーカーに就職しましたが、28歳のときに父を手伝うことになりました。従業員は、父と母と私を含めて5名の小さな下請け会社。父の会社で初めて業界の下請け構造を知り、大きなカルチャーショックを受けたのです。「元請けとして仕事をしたい」という想いが膨らみ、国家資格や許認可を取得して基盤を整えたものの仕事は簡単に取れませんでした。

実力よりも実績が重視される構造のなかで中小規模事業者の活躍の場は、なかなか広がりません。この現状を変えたいと考えたすえに行きついたのが「経営プラットフォーマー」というあり方でした。弊社は、今後も「経営プラットフォーマー」として地域を創生し、若者たちが地元で幸せに暮らせる社会づくりに貢献していきます。

株式会社メイホーホールディングスの展望

― 今後の未来構想をお聞かせください。

グループ企業300社達成というのは、地域創生を形にするにあたりミニマムの基準として考えている目標です。300社を達成するためには、10ほどのセグメントをつくることが理想だと考えています。現状では、特に業界を絞り込んでいるわけではありません。しかし行政のアウトソーシングをしている会社や農林、水産、観光など地域に根ざした会社などとご縁をつくれたらいいなと考えています。

私は、経験上、土木業界のことは知っていますが、他の業界に詳しいわけではありません。ですから「農林や観光など業界の知見はあるけど経営や人材活用について悩んでいる」という事業者があれば、ぜひ協力させていただきたいですね。売上目標は、長期的に1,000億円を目指しています。2023年6月期の売上予想がおよそ70億円ですから、数年後に100億円を達成することが直近の目標です。

またセグメントを増やすにあたり、中間持株会社には事業や業界に詳しい人材の獲得を目指しています。

― 最後に、読者へメッセージをお願いします。

弊社と同様のビジネスを展開した会社は、過去にもありました。しかしうまくいかなかった例もあると聞きます。うまくいかなかった理由は、おそらく「相手会社へのフォロー不足」にあるのでしょう。弊社は、経営フィロソフィーの啓蒙からIT導入支援、PDCAサイクルの提供に至るまでトータルでバックアップしていきます。

また弊社がM&Aの対象にしているのは、地元で何十年も実績があり、かつ利益を出し続けているような企業です。こうした優秀な地域企業のバックアップをすることで経営を改善し、さらなる活性化へと導きます。弊社の事業は、少しわかりづらいかもしれませんが、資金調達さえうまくいけば、ほぼノーリスクのビジネスモデルだと自負しています。

どうか安心して投資していただければ幸いです。どうぞよろしくお願いいたします。