特集「令和IPO企業トップに聞く 〜 経済激変時代における上場ストーリーと事業戦略」では、IPOで上場した各社のトップにインタビューを実施。コロナ禍を迎えた激動の時代に上場を果たした企業のこれまでの経緯と今後の戦略や課題について各社の取り組みを紹介する。

リニューアブル・ジャパン株式会社は、太陽光をはじめとした再生可能エネルギー事業で頭角を表している企業だ。本インタビューでは、代表取締役社長である眞邉勝仁氏にリニューアブル・ジャパン株式会社の企業概要や今後の事業展開などについて話をうかがった。

(取材・執筆・構成=山崎敦)

リニューアブル・ジャパン株式会社
(画像=リニューアブル・ジャパン株式会社)
眞邉 勝仁(まなべ かつひと)――リニューアブル・ジャパン株式会社代表取締役
1965年12月3日生まれ。1990年12月マサチューセッツ州立大学経営学部卒業後、1991年1月にリーマン・ブラザーズ証券株式会社、2005年3月にバークレイズ・キャピタル証券株式会社(現:バークレイズ証券株式会社)入社。その後、2008年8月に米国の運用会社ザイス・ジャパン株式会社の代表取締役に就任した。

2012 年1月、リニューアブル・ジャパン株式会社を設立、代表取締役社長就任し現在に至る。
一般社団法人再生可能エネルギー長期安定電源推進協会理事 副会長を兼務。
リニューアブル・ジャパン株式会社
2012年1月、東京都港区赤坂で法人設立。「持続可能なエネルギーを届け、生き生きと暮らせる未来を実現します」というビジョンを掲げ、太陽光発電や風力発電、水力発電などの再生可能エネルギー発電所の開発、発電、運営・管理(アセットマネジメント/O&M)を一気通貫して手がける再生可能エネルギー事業者。

2021年12月に本邦初のグリーンIPOとして東証マザーズ(現グロース)に上場。2022年9月に当社初の海外案件となるスペインの太陽光発電所を取得。日本のみならず海外でも事業を展開している。

目次

  1. 金融商品を扱ってきた経験から独自の再生可能エネルギー事業を展開
  2. 再生可能エネルギー事業で金融イノベーションを起こす
  3. 国内の再生可能エネルギー事業だけでなく、海外事業でさらなる成長を目指す

金融商品を扱ってきた経験から独自の再生可能エネルギー事業を展開

―― リニューアブル・ジャパン様のカンパニープロフィール、現在の事業内容についてお聞かせください。

リニューアブル・ジャパン代表取締役・眞邉勝仁氏(以下、社名・氏名略):まずは、私の自己紹介からさせていただきます。もともとは、約30年前(1991年)にリーマン・ブラザーズに入社し、14年間債券部で営業をやっていました。その後、日本における証券化ビジネスの初代ヘッドを務め、まだマーケットがないなか、手探りでルールを作っていった創成期を経験しています。その後、バークレイズ証券に移り、営業の責任者を担当しました。

2008年8月に米運用会社であるザイスグループに転職し、ザイス・ジャパンの代表取締役に就任しました。その直後に、日本でリーマン・ショックが起こり、そのころ話題になったのも証券化商品です。このように私のバックグラウンドというのは、「営業のマネジメント」と「不動産証券化」です。ただ証券化商品は、主に投資ファンドに移ってしまったので、日本の機関投資家の方から「証券化商品の専門性を使ったような投資対象はないか」と言われ、探していたところにあったのがインドなどの海外インフラでした。中でも、再生可能エネルギーは息の長いインフラビジネスで、これからも世界で拡大する商品だと確信したのです。

ここから海外の再生可能エネルギーに携わるようになったのですが、次に私の人生が変わったのが東日本大震災です。被災の翌日にアメリカにいる私のビジネスパートナーから電話があり、大きな浄水器を寄贈してくれることになりました。 これは、スマトラの大震災やルイジアナの水害などにも支援として使われ、太陽光がエネルギー源になり、川や海の水を浄化して飲み水にするものです。日本赤十字社に連絡したところ、浄水器は直接現地に持って行ってほしいと言われ、自ら車を運転し、被災地まで届けにいきました。

震災は3月11日でしたが、届けられたのは4月中旬のことでした。車で移動する間に被災地の惨状を目の当たりにし、その光景を見ながら、震災復興のお手伝いをするにあたり自分にできることは何なのかとずっと考えていました。当時は、原発問題も話題になり「再生可能エネルギーをやるべきだ」という機運はあったものの、大きな発電所を作るには相当な費用が必要なので、結局お金がないと実行できないことはわかっていました。 そこで過去に携わっていた証券化の手法を用いて、金融界から資金を得ながら、再生可能エネルギー事業を広げることで復興のお手伝いができるのではないかと考えたのです。

こうして起業に至るわけですが、弊社のビジネスモデルを考えるにあたり、海外で成功しているデベロッパーを参考にしました。日本では、再生可能エネルギー一気通貫といってもほとんどが発電所を作るところまでです。しかし海外で成功しているデベロッパーは、そこに金融をつなぎ資金調達し、同時にお金の出口も作っています。 それを日本で実現したのが弊社です。小さな案件だとしても「プロジェクトファイナンスで資金調達する」というのが弊社の強みになっています。

▼リニューアブル・ジャパンのビジネスモデル

上場した理由

弊社のパートナーはもともと自治体が多く「自治体と立地協定を結び、その地域で発電所を開発する」というのが基本的な流れでした。ですが、会社が大きくなるにつれ、社内では約40MWの案件リストが積みあがるようになり、そのすべてを進めるのには資金調達の算段が必要でした。そのため上場という選択肢を選びました。 まず上場するための仕組みを作り始め、先にインフラファンド(日本再生可能エネルギーインフラ投資法人)を上場(※)させ、最終的に弊社は2021年12月にマザーズ市場(現:グロース市場)へと上場できたという形になります。 ※ スポンサーであるリニューアブル・ジャパンによるTOBが成立し、2022年8月に上場廃止となった

▼リニューアブル・ジャパン社の3つのステージ

弊社は第1~第3までの3つのステージで事業の多様化を図っています。 第1ステージの循環モデル(アセットマネジメントモデル)と第2ステージの自社保有モデルは完成し、現在は第3ステージである、海外事業やFIT制度に依存しないNon-FITビジネス、風力や水力などの他電源開発に挑戦しています。

再生可能エネルギー事業で金融イノベーションを起こす

―― 創業から上場に至るまでさまざまな変化があったかと思いますが、事業がどのように変遷してきたのかお聞かせください。また上場後に大きく変化した点について事業、金融の2つの観点でお聞かせください。

上場後の事業面での変化

2021年12月に上場しましたが、創業から約11年間ほぼ同じことをやっていますので、事業面での変化はありません。これまでに累計約13GWの案件をプライシングしてきましたが、プライシングを通じて培ってきたノウハウは他社と比較しても非常に強い部分です。最近は脱炭素の流れに乗って大手企業の参入が活発化していますが、これまでのノウハウを活かし、スピード感を持って事業を推進することができています。

上場後の金融面での変化

創業時から数多くの金融イノベーションを起こしてきましたが、上場後も変わらず、マーケットのリーダーとして金融イノベーションを起こしていきたいと考えています。 これまでに12件の再生可能エネルギープロジェクトボンド(※)を発行し、累計発行金額は1,105億円。国内における累計発行金額シェアはダントツの実績を誇ります。 弊社がこれまで起こしてきた金融のイノベーションは、何か特別な許可があるわけではありません。あくまでも私たちがきちんとした技術を持ち、地域や自治体、金融機関の方々に協力いただきながら一緒にやってきた結果であり、金融界におけるRJブランドを確立できたと思っています。 ※プロジェクトに必要な事業費のうち、負債部分を金融機関からの借り入れでなく、債券化して投資家から調達する金融手法。

―― 激動の時代に上場されたというお立場から、リニューアブル・ジャパン様の事業面という視点で日本経済が直面している課題と今後の日本経済の動向についてお考えをお聞かせください。

眞邉:私は約3年前、REASP(リアスプ:一般社団法人再生可能エネルギー長期安定電源推進協会)という業界団体の初代代表理事をやっていました。 太陽光発電協会という団体がありますが、どちらかというとメーカー企業の団体です。一方、REASPは発電事業者の団体となります。REASPでは、日本で再生可能エネルギーを広げていくうえでのさまざまな問題を各委員会活動経由で、経済産業省や環境省の方と一緒に議論しています。その初代会長を私が務めさせていただいたというのは、非常にうれしく思います。 発電事業者だけでなく、銀行などの金融機関含め約90社が加盟していて、政策を決めるような審議会にも呼んでいただいています。

またREASPを発足した2020年1月の記者会見の際、記者の方に数値目標を聞かれ「2050年までに再生可能エネルギー比率を50%にしたい」と申し上げました。当時は、打ち上げ花火とからかわれることもありましたが、2020年12月のグリーン成長戦略で政府が再生可能エネルギー発電量比率を2050年に 50~60% (参考値)を目指すと発表し、国が目指す数値となりました。

REASP発足からの1年間で「RE100」「脱炭素」という言葉が一般化するなど環境がガラッと変わっていったのです。これまでは、国民負担となるFIT制度(固定価格買取制度)によって発電所が増えてきました。しかし今後は、国民負担が少ない、もしくはないNon-FIT(非FIT)で電源を増やしていかなければならない世の中になります。

2030年のエネルギー基本計画、または2050年のカーボンニュートラルの達成という目標下では、相当数の再生可能エネルギーを増やさなければいけません。これを一大産業にしない限り、日本の将来はないのではないかと私は考えています。

国内の再生可能エネルギー事業だけでなく、海外事業でさらなる成長を目指す

―― 上場からさらに成長していくため、今後の目標(売上、成長、事業展開など)、5年後、10年後にリニューアブル・ジャパン様が目指すべき姿についてお聞かせください。

眞邉:弊社の成長に関しては「稼ぐ力」を見ていただきたいです。要は、EBITDA(金利支払い前、税金支払い前、有形固定資産の減価償却費および無形固定資産の償却費控除前の利益)です。EBITDAの成長のドライバーは、「O&M」「高FIT」「海外」「風力」「Non-FIT」といった5つの柱があります。

▼リニューアブル・ジャパンのKPI

▼5つのストック収入図

目の前にさまざまな問題はありつつも2050年に向けてカーボンニュートラルが進めば、Non-FITマーケットが指数関数的に広がり、拡大してくるでしょう。 私は、REASPを通じて情報を取れる立場にいましたので、今のようなマーケットになることは2年前から予想できていました。そのため「弊社なりの準備を進めていた」という流れになりますので、一定のシェアを取っていきたいと考えています。

▼マーケット拡大予想図

▼2030年までの再エネ電源構成目標

―― 海外事業について

弊社は、スペインに約30MWの発電所を保有しています。特徴としては、日本人を現地に送るのではなく、現地の人を採用し、法人を立ち上げています。現地法人を通じたローカルネットワークと日本で培った知見やノウハウを活かしながら案件発掘、獲得に向けた取り組みを行っています。こういったケースは、他社ではあまりない事例かと思うので、弊社独自の活動で事業拡大していきたいです。

長期的な弊社の目標は、保有発電所の設備容量を「国内太陽光1GW+α」「国内風力1GW」「海外1GW」を達成することです。太陽光は、問題なく達成できると思いますが、風力と海外のどちらが先に達成するかとい言えば海外だと思っています。海外は、土地が広く日照量も多い傾向なので、非常に期待できます。

―― 激変の時代に新たに上場された企業は投資家・富裕層から注目されています。弊媒体読者へ、メッセージをお願いいたします。

眞邉:私は「弊社の成長=カーボンニュートラルの達成に一歩近づくことができる」と考えています。

弊社は、目標達成に向けて事業展開していきますので、株主の方をはじめとしたさまざまな方にサポートいただければ幸いです。ぜひ、よろしくお願いいたします。