「REITと不動産投資の違いを知りたい」「どちらが自分に合っているか知りたい」という方のために、さまざまなテーマでREITと不動産投資を比較していく。比較するテーマは、それぞれの特徴や投資方法、所得の種類、利回り、初期投資額の目安、流動性などで、ご一読いただければREITと不動産投資の違いが明確にわかるようになるはずだ。
比較1.REITと不動産投資の特徴
同じ「不動産」をテーマにした投資でもREITと不動産投資では根本が異なる。
REITとは?
REITとは「Real Estate Investment Trust」の略で、和訳すると「不動産投資信託」となる。投資家から集めた資金を元手に不動産投資法人が複数または大規模な不動産に投資を行い、得られた賃料収入や売却益を投資家に分配する仕組みだ。
<REITの仕組みのイメージ>
国内のREITは「J-REIT(ジェイ・リート)」と呼ばれ、2001年3月にJ-REIT市場が創設。同年9月10日に「日本ビルファンド投資法人<8951>」「ジャパンリアルエステイト投資法人<8952>」の2銘柄が東京証券取引所に上場した。2022年10月時点で上場銘柄数は61、市場全体の時価総額は約16兆4,658億円に成長した。REITの種類は、主に次の3つに大別される。
REITの種類 | 特徴 |
単一用途特化型 | 1つのテーマに特化したREIT |
複合型 | 2つのテーマの組み合わせたREIT |
総合型 | 3つ以上のテーマを組み合わせたREIT |
なおREITのテーマには、オフィスビルや商業施設、物流施設、宿泊施設、住宅などがあり、なかには関西圏や九州圏の不動産に特化したREITもある。
不動産投資とは?
不動産投資とは、個人投資家や法人が賃貸物件を購入・運用・売却し、賃料や売買益をもとに利益を得る仕組みだ。「大家業」「賃貸業」とも呼ばれ、古くから世界中で行われてきた投資方法である。代表的な賃貸物件の種類は、アパート、マンション(区分・一棟)、戸建てなどだ。それぞれに新築と中古の選択肢がある。
<不動産投資の仕組みのイメージ>
また立地は、国内であれば地方都市、政令指定都市、首都圏、東京23区などがあり、海外という選択肢もある。どの投資先を選ぶかで利回りや空室リスクなどが変わってくる。
比較2.REITと不動産投資の投資方法
REITは、購入すれば不動産のプロが運用してくれる。しかし不動産投資は、購入後に投資家が事業主となり主体的に運用していく点が大きな違いだ(ただし物件管理は管理会社へ委託可能)。ここでは、REITと不動産投資の投資方法の違いを詳しく見ていこう。
REITの投資方法
REITの売買方法は、上場株式と基本的に同じだ。証券口座を持っていれば新たな申請手続きを踏まなくても売買が始められ、指値・成行の注文はもとより信用取引も可能である。上場株式との大きな違いは取引する際の単元株数である。
例えば上場株式の場合、1単元100株単位で取引されることが多い。しかし2022年時点で上場しているREITは、すべて1口(株式と異なり1株ではなく1口と数える)単位で売買されている。1口あたりの投資口価格は銘柄によって異なるが、最も安い銘柄は5万円程度、最も高い銘柄が70万円程度だ(2022年12月9日終値時点)。
不動産投資の投資方法
不動産投資を始めるには、まず賃貸物件を購入しなければならない。物件探しの方法としては、不動産ポータルサイトの掲載物件をチェックするほかに不動産会社からの紹介などもある。購入費用は「全額現金」または「頭金(自己資金)+金融機関のローン」などで用意する方法が一般的だ。
比較3.REITと不動産投資の所得の種類
不動産の運用をもとに生まれた利益であっても、REITの分配金・売買益の所得と不動産投資の家賃収入・売却益の所得とで税法上の扱いは異なる。
REITの所得の種類
REITにおける分配金の所得の扱いは、上場株式の配当金と同じ「配当所得」となる。なお売却益は、「上場株式等の譲渡所得」として扱われる。これは、不動産を運用して得られた分配金であってもREITは税法上、上場株式の配当と同様とされているからである。
不動産投資の所得の種類
不動産投資で得る所得には「不動産所得」と「譲渡所得」がある。まず不動産所得だが、これは賃料や駐車場の契約料などで得られるものだ。ただし、総収入金額から必要経費(修繕費、関連税金、保険料など)を差し引いた金額が不動産所得となる。
一方、譲渡所得は土地や建物を売買することで得られるものだ。収入金額(買主から受け取る額)から購入時の取得費、売却時の譲渡費用、さらに特別控除額などを差し引いた金額が譲渡所得になる。税率は譲渡した年の1月1日時点で「所有期間が5年超か否か」で変わってくる。
これらを踏まえて、REITと不動産投資の所得の違いをまとめると以下のようになる。
投資方法 | 所得の区分 | 税率 |
REIT (不動産投資信託) |
配当所得(分配金) 譲渡所得(売買益) |
20.315% (所得税15.315%+住民税5%) |
不動産投資 | 不動産所得 | 給与所得など他所得と合算した総所得に基づき計算(累進課税) |
譲渡所得 | 所有期間5年超 課税金額×15% 所有期間5年以下 課税金額×30% |
比較4.REITと不動産投資の利回り
REITと不動産投資の利回りは、中身が異なるため、単純比較できない。ここでは、それぞれの利回りの目安について解説していく。
REITの利回りの目安
REITの予想分配金利回りは、市場全体の平均で見ると約3.79%(一般社団法人不動産証券化協会統計データより 2022年11月末日時点)だ。ただし利回りは、投資テーマの市場動向や銘柄によって異なり、2%台の銘柄もあれば9%台の銘柄もあるなどさまざまだ。ただし時期によってREITの分配金利回りは上下する点も忘れてはいけない。
不動産投資の利回りの目安
不動産投資の利回りの目安は、賃貸物件の種類などさまざまな条件によって大きく異なる。そのため目安として提示するのが難しい。近年は、新築物件の高騰に伴い中古物件の価格も上昇している影響で全体的に利回りが下がる傾向にある。なお、ここでいう利回りとは年間賃料収入を物件価格で割った「表面利回り」のことを指すため、注意が必要だ。
一般的に年間・購入時の諸経費を反映した「実質利回り」になると表面利回りよりも低下するため、比較するのであれば実質利回りと比べるのがよいだろう。なお実質利回りがどれくらいになるかは「物件管理を自主管理、委託のどちらで行っているか」「管理委託費をどれくらいに設定しているか」などで変わってくる。
【関連記事】不動産投資の利回りとは?表面利回りと実質利回りの違いや計算方法を徹底解説
比較5.REITと不動産投資の「初期投資の目安」
REITは数から数十万円から始められるが、不動産投資はまとまった資金が必要になる。
REITの初期投資額の目安
REITの初期投資額の目安は「REITの投資口価格×購入口数」だ。投資口価格とは、上場株式でいうところの株価にあたる。つまり投資口価格20万円のREITを1口買うなら初期投資額は「20万円+取引手数料」が必要だ。2022年時点における国内REITの投資口価格は数十万円の銘柄が中心と考えれば、「初期投資額の目安は数十万円から」といってよいだろう。
不動産投資の初期投資の目安
不動産投資の初期投資額は、まさにケースバイケースだ。例えば地方の築古マンションであれば100万円以下ということもあるだろうし、都心の一棟マンションであれば億円単位となる。
【関連記事】アパート経営の初期費用の相場はどれくらい?運営費用・自己資金・マンション経営との違いも解説
ただし上記の金額は、あくまでも物件価格のみである。実際の売買では、別途以下のような諸費用も必要になる点は押さえておきたい。
・印紙税
・登録免許税
・ローン手数料
・火災保険料、地震保険料 など
比較6.REITと不動産投資の「現金化のしやすさ」
端的にいえばREITは現金化しやすいが、不動産投資は現金化しにくい。なぜなら以下のような違いがあるからだ。
REITの流動性
証券取引所の取引時間である平日9時~11時30分、12時30分~15時の間であれば証券口座で売却するだけで著しく流動性が低下しない限りは通常、即現金化できる。また、PTS取引(私設取引所)であれば時間外でも取引自体は可能だ。
不動産投資の流動性
不動産投資は、REITに比べると現金化に手間と時間がかかる。大きな流れとしては、仲介会社と価格を決めて物件を売り出し、買い手との交渉・売買契約などを経てようやく現金化が可能だ。
【関連記事】不動産投資を始める前に知りたい売却の基本 売却タイミングとポイント
比較7.REITと不動産投資のメリット・デメリット
REITと不動産投資の一般的なメリットとデメリットを比較してみよう。同じ不動産をテーマにした投資方法でも特徴が違うことが改めて分かるだろう。
REITのメリット、デメリット
REITのメリット | ・数十万円など比較的少額から始められる ・証券口座があれば手軽に売買できる ・不動産投資に比べて流動性が高い ・物件管理の手間がいらない |
REITのデメリット | ・証券市場の影響を受けやすい ・投資法人の倒産や上場廃止リスクなどがある ・ローンが使えない(※) |
※信用取引では可能
不動産投資のメリット、デメリット
不動産投資のメリット | ・物件の種類が多い ・ローンで自己資金にレバレッジをかけられる ・入居者を確保できれば安定収入を得やすい ・相続税対策にも期待できる ・インフレに強い傾向がある |
不動産投資のデメリット | ・家賃下落、空室や家賃滞納のリスクがある ・地震などの災害リスクがある ・流動性が低い |
【関連記事】初心者が知っておきたい不動産投資のメリット・デメリットとは
REIT、不動産投資と相性がよいタイプはこんな人
最後に前出のREITと不動産投資のメリット・デメリットをもとにそれぞれと相性がよいタイプ例を挙げる。
REITと相性がよいタイプ | 不動産投資と相性がよいタイプ |
・手軽に投資を始めたい ・手間をかけたくない ・自己資金が限られている ・短期間で現金化する可能性がある |
・資産形成でレバレッジを有効活用したい ・長期的かつ安定的に運用していきたい ・相続税対策をしたい |
REITと不動産投資は、投資家の目的や属性などを踏まえて相性のよいほうを選ぶことが何よりも大切だ。この部分をしっかりと見極めたうえで始めないと「失敗した」と感じやすいので注意したい。
(提供:manabu不動産投資 )
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