2023年度税制改正大綱において、NISA制度の抜本的拡充・恒久化が盛り込まれました。国会審議を経て法案が成立すれば、2024年から新しいNISAがスタートします。現行NISAと新しいNISAでは、どのような違いがあるのでしょうか。本記事では、2024年から始まる新しいNISA制度の内容と注意点を解説します。

NISA拡充とは

NISA拡充・恒久化で何が変わる?2024年から始まる新しいNISA制度の内容と注意点を解説
(画像=tamayura39/stock.adobe.com)

NISAとは、個人投資家のための少額投資非課税制度です。株式や投資信託などから得られる利益には、通常約20%の税金がかかります。しかし、NISA口座で購入すれば非課税となり、税金がかからないので、課税口座(特定口座、一般口座)よりも有利に運用できます。

現在は「つみたてNISA」と「一般NISA」の2つがあり、いずれも投資可能期間や非課税保有期間に期限が設けられています。そのため、長期の資産形成で活用するには使い勝手が悪い面もありました。

貯蓄から投資への流れを加速し、家計の資産所得倍増につなげるため、政府は今回の税制改正でNISA制度の恒久化や非課税期間の無期限化などを決めました。非課税で投資できる金額も大幅に拡大される予定です。

なおNISA制度については、2020年度税制改正において「2階建ての制度」に移行することが決まっていましたが、こちらは事実上撤回となりました。

2024年から始まる新しいNISA制度の概要

現行NISAと新しいNISAの比較表をまとめました。

現行NISA新しいNISA(2024年1月~)
口座開設期間つみたて:2042年まで
一般:2023年まで
恒久化
非課税保有期間つみたて:20年間
一般:5年間
無期限化
年間投資枠つみたて:40万円
一般:120万円
つみたて投資枠:120万円
成長投資枠:240万円
非課税保有限度額つみたて:800万円
一般:600万円
※いずれも枠の再利用不可
1,800万円(うち成長投資枠は1,200万円まで)
※枠の再利用可
投資対象商品つみたて:長期の積立・分散投資に適した一定の投資信託
一般:上場株式、投資信託など
つみたて投資枠:長期の積立・分散投資に適した一定の投資信託(つみたてNISAと同様)
成長投資枠:上場株式、投資信託など(①監理・整理銘柄②信託期間20年未満、高レバレッジ型、毎月分配型の投資信託などは除外)

現行のつみたてNISAは「つみたて投資枠」、一般NISAは「成長投資枠」に変更されます。つみたてNISAと一般NISAは選択制ですが、新しいNISAではつみたて投資枠と成長投資枠の併用が可能です。

現行NISAと新しいNISAの違い

ここでは、現行NISAと新しいNISAの違いについて詳しく確認していきましょう。

口座開設期間

新しいNISAでは、口座開設期間は恒久化されます。つみたてNISAは2042年まで、一般NISAは2023年までの時限措置でしたが、期限が撤廃されました。制度恒久化により、2024年以降はいつNISAを始めても非課税保有限度額を使い切ることが可能です。

非課税保有期間

新しいNISAは、非課税保有期間が無期限化されるのも重要なポイントです。

現行制度の非課税保有期間はつみたてNISAが最長20年間、一般NISAが最長5年間で、非課税期間終了後は課税口座に移管するか、売却する必要がありました。

2024年以降は非課税保有期間に制限がなくなるため、期限を気にすることなく、非課税で運用を続けられます。現行制度に比べて、より長期の資産形成に適した制度になったといえるでしょう。

年間投資枠

年間投資枠は、つみたてNISAは3倍の120万円、一般NISA(成長投資枠)は2倍の240万円に拡大します。つみたてと一般の併用が可能になるため、年間の投資上限額は360万円です。現行制度に比べると、非課税で投資できる金額が大幅に増えることになります。

非課税保有限度額

非課税保有限度額はつみたてNISAが800万円、一般NISAが600万円ですが、新しいNISAでは1,800万円に拡大されます。1,800万円のうち、1,200万円は成長投資枠として利用可能です。例えば、成長投資枠で1,000万円を使えば、つみたて投資枠は800万円が上限となります。

新しいNISAの非課税保有限度額は、簿価残高方式で管理されます。保有中の商品を売却すれば、枠の再利用が可能です。例えば、1,800万円の非課税保有限度額を使い切っている状態で、簿価(取得価額)ベースで800万円分の金融商品を売却すれば、800万円分の枠が復活します。

投資対象商品

新しいNISAの投資対象商品は、つみたて投資枠はつみたてNISAと同様です。成長投資枠も一般NISAとほぼ同じですが、上場株式は監理・整理銘柄、投資信託は高レバレッジ型や毎月分配型などは対象外となります。

2024年以降の現行NISAの取り扱い

2024年以降に新しいNISA制度が始まると、つみたてNISAや一般NISAで保有している商品はどうなるのでしょうか。ここでは、2024年以降の現行NISAの取り扱いについて解説します。

2024年以降も非課税で保有できる

現行NISAは、新しいNISAの外枠で現行の非課税措置が適用されます。そのため、2023年末までにつみたてNISAや一般NISAで投資した商品は、2024年以降も非課税で保有可能です。

例えば、2023年につみたてNISAで投資すると2042年まで、一般NISAは2027年まで非課税で運用を続けられます。現行NISAでの投資分は、新しいNISAの非課税保有限度額には影響しません。

非課税期間終了後は2つの選択肢がある

現行NISAで保有している商品の非課税期間が終了した後は、「課税口座に移管する」「売却する」の2つの選択肢があります。

課税口座に移管する場合は、移管時の時価を取得価額として運用が継続されます。運用をやめる場合は、売却して現金化することが可能です。

新しいNISAへのロールオーバーは不可

ロールオーバーとは、NISAの非課税期間が終了した際に、保有中の商品を翌年の非課税投資枠に移管することです。現行の一般NISAは、ロールオーバーが可能な制度ですが、現行NISAから新しいNISAへのロールオーバーはできません。

NISA拡充に関する注意点

NISA拡充については、以下の点に注意が必要です。

法案成立後に正式決定となる

2023年度の税制改正大綱においてNISA拡充の方針が示されましたが、2023年1月時点では、まだ正式に決まったわけではありません。

今後は閣議決定された税制改正大綱に沿って国税の改正法案が作成され、国会に提出されます。国会審議を経て改正法案が成立すると正式決定となり、改正法に定められた日から施行となります。

未成年者は利用できない

新しいNISA制度は18歳以上が対象であるため、未成年者は利用できません。現行の「ジュニアNISA」は、2023年での廃止が決まっています。2024年以降はNISAが拡充されますが、未成年者の資産運用については今後の課題となります。

ちなみに、2023年までにジュニアNISAで投資した金融商品は、当初の非課税期間(5年間)が終了しても、18歳になるまで引き続き非課税で保有できます。また、2024年以降は年齢にかかわらず、保有商品の非課税での払い出しが可能です。

2023年にNISAを始めてもいい?

これからNISAを始める場合、「2024年からの新制度を待ったほうがいいのではないか」と思う人もいるでしょう。しかし、2023年につみたてNISAや一般NISAを始めても問題ありません。

現行NISAは新しいNISAの外枠で管理されるため、2023年に始めれば非課税で投資できる金額を増やせます。NISAに興味があるなら、2024年の新しいNISA制度を待つ必要はありません。今すぐ始めましょう。

まとめ

今回のNISA制度の抜本的拡充・恒久化により、NISAの利便性は大きく向上しました。口座開設期間や非課税保有期間の期限が撤廃され、非課税で投資できる金額も拡大されるなど、個人投資家にはメリットが多い制度です。

新しいNISAを有効活用できるように、今のうちに制度内容について理解を深めておきましょう。

(提供:Incomepress



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